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トロマの禍  作者: 駄犬
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汚染

 昨今、世間を騒がす事件事故の加害者が、一様に何者かの指示を受けたと供述する様は、彼からすれば疎んで然るべき主体性のなさを表しており、クラスメイトから揶揄をされた際は心の底から苛立ちを覚えていた。他人から唆されて犯罪等に手を出す薄弱な意思について、ニュース番組を担当するアナウンサーは、眉間にシワを寄せながら、有識者に意見を求める。


「……」


 居間のテレビはいつだって、夕食時のお供だ。箸が皿を突いて出た下卑た音や咀嚼音、動作に伴うあらゆる生活音、つまり口数の少なさに起因して跋扈する不快な音をテレビのスピーカーが掻き消すのを期待し、四方山に花を咲かせるようなものではない。


「また頓珍漢なことを言ってる」


 だからこそ、彼がニュースの内容に反応して声を上げると、息遣いすらも咎めるような鋭い眼差しを家族から浴びた。整然と足並みを揃えて食卓に築き上げられた秩序、戒律と呼んで差し支えない厳粛な指針を持つ家族の暗黙の了解を、彼が普段から不満に思っていた“供述”によって、いとも容易く破ってしまった。彼は言下に不味いと思い、「あ」と口に出したものの、手遅れな気付きであり、家族からの訝しげな視線に名状し難いバツの悪さを覚える。


「ほら、その、最近物騒な事件が多いよね」


 アナウンサーがつらつらと手元のカンペを読み上げて、事件の概要を視聴者に伝える様子を指差した。だが、家族はテレビ画面に一切の興味を示さず、彼が話し始めたことによる懐疑心が勁草の如く揺るぎない根を張った。にべもなく注がれる視線の束を前に、淡々と長広舌を見せようものなら、取り返しの付かない軋轢となって、傷口を広げることになりそうだ。血を分け合った家族という形態は、文化圏に於いて重要な役割を持ち、個人間に交わされる繋がりよりも遥かに拘束力があった。本来、異邦人に向けるべき白眼視を家族から受けたとなれば、酷い疎外感に苛まされて当然であった。


「ご馳走様」


 食事を拙速に終わらせて、キッチンに食器類を運んでいき、逃げるように自室へ駆け込んだ。今度の嘆息はどこまでも深く、鈍重な音を鳴らして床の上を転がりそうだ。不本意に浴びる耳目は彼をひとえに苦しめ、教室での粗末な扱いに甘んじるばかりか、よもや家族からも怪訝な顔付きを向けられれば、針の筵と呼んで差し支えない居た堪れなさを味わう。


 ベッドの上に身体を放り投げたものの、人間の生理にあたる眠気はまるで感じておらず、まんじりと天井を眺めた。立て続けに受けた懲罰的な扱いと、張り詰めた空気に晒されて、すっかり萎縮した脳を本来の形に戻そうと励む。

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