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聶史  作者: 鍋島五尺
第1章
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山寺の岩 第1話

 皆様いかがお過ごしでしょうか。ここ数日暑い日が続いておりますね。昼は日差しが強く、夜でも蒸し暑いのでなかなか寝付けずに困っていらっしゃる方も多いのではないかと思います。そんなときは家の中、両端の窓を開けてみてください。運が良ければ夜風が家全体をすうっと通り抜け、なんとも心地よい空気に入れ替えることができます。数十分開けておくだけで随分寝付きも変わってまいりますので、暑さに困っていらっしゃる方はぜひ一度お試しください。

 御存知の通り、本寺へ参拝にいらっしゃる為にはあの長い長い階段を登らねばなりません。長い石段のあるお寺といいますと山形県にございます宝珠山立石寺さんが有名ですが、それには及ばないといえど本寺の石段もかなりのもの。この暑さの中登るのはなかなかこたえます。本寺へいらっしゃる方は帽子とお飲み物をお忘れなく、熱中症にご注意していただければと思います。また、夏期限定で石段中腹に休憩所を設けております。今年は、突貫工事ではございますが、休憩所のベンチに屋根を取り付けいたしましたので、ぜひご利用ください。

 さて、時の流れというものはとても早いものです。一日一日を大切に歩もうと心がけてはおりますが、物事は思い通りにならないものです。最近まで春の花が咲いていたと思っていたのに、いつの間にかすっかり裏の山は緑一色になってしまいました。先日、寝室の窓にカナブンが張り付いていました。まだ少し早いような気もしますが、季節を感じます。目まぐるしく時は過ぎてしまいますが、これも諸行無常。その時をしっかりと生きていきたいものです。


 つい先日、とあるお檀家様からひとつご質問をいただきました。その内容は、寺の裏手にある谷、そして奥山から聞こえてくる『音』についてでございます。ご存じの方はあまりいらっしゃらないかと存じますが、本寺の最も奥に位置します本坊、その中でも一番奥の山際にあります部屋、この部屋はもっぱら私の書斎のような使い方をしておりますが、この部屋からは奥山の様子がよくわかります。谷に吹く風の音、木々の葉の緑、土の匂い。そしてその中に、「ガーン、ガーン」というような、岩と岩がぶつかるような音がございます。そちらの部屋でなくとも実は併設の墓地、その最も山際まで向かいますと、かすかではありますがその音を耳にすることができます。きっとこちらをお聞きになって、疑問を持たれたのでしょう。

 先に正体を明かしてしまいますと、これは谷での自然現象が原因で起こっている音だと言われております。そうはいいましても誰かがあの深い谷底まで確かめに行ったわけではございませんので推測の域を出ませんが、おそらく谷に強い風が吹くことで山から岩や朽木が崩れ落ち、それが谷底や岩々にぶつかることで起こっているのだ、というのが私が先代から聞いた話でございます。『幽霊の正体見たり枯れ尾花』ではございませんが、不可思議なものの正体とは案外つまらないものでございます。

 ですがそれを面白がることは人の知恵。ああではないかこうではないかと考える楽しさというものがございます。くだらないと言ってしまえばそれまでですが、実はこの音にも実はとある言い伝えがございまして、長い話になりますし、あくまで伝説、真実味に欠ける与太話ですのであまり真に受けず、エンターテイメントとしてお読みいただき、皆様のお楽しみになれば幸いです。

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