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「ウォータースイング!!」


カイはクイーンの体から素早く飛び出ると、両手を重ね合わせ、大きな水の嵐をサメに向けて投げばした。それはサメの頭部を消し去るほどの威力を放った。サメはなすすべなく、海の中で崩れ落ちた。


「よいしょ!」


カイは左手にアイシェリカ、右手にサメの亡骸を持つと、クイーンの体の中に踵を返して、戻ってくる。


「えい!!」


カイはサメを片手で軽々と放り投げると、アイシェリカを地面に降ろした。アイシェリカは気絶しているようで、目を覚さない。あまりにも間抜けすぎた彼女に呆れが止まらないままライは放られたサメに急いで近寄った。


「し、死ぬかと思った!!」


「うわ?!」


ライがサメの亡骸に近づいた途端、口の周りを血だらけにしたナットがサメの腹から飛び出してくる。また、前のように食い破って出てきたのだろう。なんだか生臭いし、それでよく腹を下さないと思う。


「る、ルカちゃん。助けてくれてもいいのに……」


「あいにく私は水の中が苦手でしてね。犠牲者が二人になるよりは、一人のままの方がいいでしょう?」


「そ、そうなのかな?」


 ナットは最初こそは批判したものの、口が他者なルカに上手く丸め込まれている。ライは話を逸らそうと、ナットとルカの会話に口を挟んだ。


「お前、不死じゃないのか? サメに食べられたって平気だろ?」


「んー、そうだけど。流石にサメの腹の中でずっと出れないのはやだな」


ナットは立ち上がると血だらけになっている上の服を脱いだ。あまりにも生臭いので、早く風呂に入らせたいぐらいだ。しかし残念なことにここに風呂はない。よってライたちが匂いに耐えるしかないというわけだ。


「んー、なぜだろう。ここ数分の記憶が抜け落ちている?」


「一生、抜け落ちてた方が幸せだと思うぜ」


やっと目を覚ましたアイシェリカは頭を押さえ、先程の人騒動を覚えたいないらしい。あんな間抜けな醜態、思い出しても人生にいいことなんてないだろう。忘れていた方が賢明だ。


「これ、食べれるのかな?」


「どうやって食べるんだよ? ここには加熱するための火なんてないぞ」


ライの指摘に考え込む顔をしたカイはパタパタと立ち上がったアイシェリカに近寄って話しかけた。


「ねえ、火を起こせるものって持ってる?」


「ああ、あるぞ。くれてやろう」


 アイシェリカはポケットから火の宝玉を取り出すと、カイの両手に渡した。なんだか微笑ましい姉弟のような風景だ。


「わぁーい! ありがとう!」


「あの二人、結構仲いいですね」


アイシェリカとカイはなぜだか、普通にコミュニケーションがとれてしまっている。やはり好きなものが同じだと気が合うのだろうか。仲良くなった過程を知らないルカは疑問の表情を浮かべた。それに関してはライも全くの同意見だ。


カイはアイシェリカから火の宝玉を貰ってくると嬉しそうにそれをサメの亡骸に向けた。火の宝玉には使い手の対象としたものを使い手の思う火加減で燃やせる力がある。王族はよく料理にそれを使用しているというのは結構、有名な話だ。


「対象を燃やせ!!」


カイの一言に魔法石が砕けると同時に、サメの体が燃え始める。そんなに強くない火はサメの体を香ばしい匂いがする肉へと変えてくれる。匂いはうまそうだが、食べれるのかどうかは疑問だ。  


「いただきーー。あ、これ食べてもいい?」


「いいぞ。ただし、俺たちの分はきちんと残しておけよ」


カイは昨日のライの忠告をきちんと気に留めていたのか、食べる前にライの許可をきちんと取った。サメに毒があるという話はあまり聞いたことがない。色も水色だし、そこまで毒々しい色をしていないので恐らく、大丈夫だろう。


「よし、食べるぞ!」


「ヒレの部分が私は好みだな」


「なんで、お前まで当たり前のように食事に参加してんだ?」


ヒレを持っていたナイフで綺麗に切り取り、口にし出したアイシェリカに対し、ライは強い疑念を浮かべる。アイシェリカは切り慣れているのか上手に捌いていく。どうやら料理の才能はあったらしい。


「なぜ、あの人は私たちの中に自然に溶け込んでいるんですか?」


「俺も知らん」


隣にいたルカは首を傾げ、アイシェリカに対して疑念を抱いているが、それはライも同じである。


「僕はもう食べたからいいかな」


ナットは食べ始める二人をみながら、口元を脱いだ服で拭った。その服をどうするつもりかは知らないが、やけに魚くさいのでもう二度と着ないでほしい。


「ルカは食べないのか?」


「サメには少し抵抗が……」


「そうだよな。その感性が普通だよな。待ってろ、俺が食べやすい部位を持ってきてやるよ」


ルカは後退りをし、サメを食べるのに意欲的ではなかった。ライもそれに関してはルカに完全に同意で、むしろ拒否反応を起こさずに食べれる三人がおかしいのだ。さっきまで自分たちを襲おうとしてた生き物を平然と口にできるその適応能力は非常に好ましいものとはいえるが……。


「カイ、ちょっと貰うぞ」


ライはすっかり肉質が柔らくなったサメの肉を手で引き剥がすと、ルカにそれを手渡した。柔らかく、肉質もいい。ライもよく魚を捌いて食べていたので美味しい部位がなんとなくわかるのだ。


「……」


ルカは少々、嫌がっていたが仕方なく肉を口にした。この辺には食べ物もそんなにない。食べれるうちに食べておいた方が、色々と苦労しないだろう。


「どうだ、うまいか?」


「まあ、食べれなくはないです」


 口に入れたルカは微妙な顔をしている。元々、魚は好みではない上での発言なので魚が好きなライからしたらあまり当てにならない評価だろう。試しにライもちぎって口にしてみるが、そこそこ美味しい。


「でも、なんか変な味だな。食べたことないっていうか……」


「お腹すいた〜〜」


「食べてるじゃないか? 我慢しろ」


「足りないよ〜〜」


 カイはバタバタと足を動かし、お腹が空いていることをアピールする。現在も食べているというのに全く腹が満たされないらしい。最早、病気を疑うレベルでカイは食べるし、腹の減りも早い。自分で食料を入手させているからあまり困ったことはないが、普通なら食費が莫大な金額になるだろう。


「てっ、もうなくなってるじゃないか」


「目的の場所まで辿り着く距離を計算しましたけど、ざっと一週間はかかりそうです。一旦、どこかで食料を入手した方がいいのかもしれません」


「流石ルカだな。計算が早い。この辺で寄れそうな島ってあるか?」


「ここから東に行った場所に小さな小島があります。人が住んでいない無人島だと、地図には記載されていました。ただ、なにが起きるのかわかりませんけど」


「いや、そこに寄ろう。それにアイシェリカもどこかで降ろしておきたい」


「素直に降りてくれるとは限らないと思いますけどね」


ルカはライから耳打ちされると、問題の多さにため息をついた。いつも心労をかけてしまって申し訳ないとは常々、思っている。


「よし、目的の島へと出発だ!!」


「なんで、お前が当然のように俺たちを取り仕切ってるんだよ?!」


ライとルカの会話にいきなり割って入ってきたアイシェリカの発言を聞いて、ライは叫び声を上げた。



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