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プリンセス加入

「おい、カイ! どこまでいくんだよ」


「海の方! 気配を感じるんだ!」


「気配って……」


森の中を迷わず突き進んでいくカイをライはできる限り見失わないように追いかけた。森の中は結構広く、深夜ということあって薄暗い。少しでも道を間違えれば迷ってしまうだろう。ライは飛べるから心配はないが、方向音痴のカイは迷いかねない。


どれだけ走っただろうか。ようやく海に辿り着くとカイは海の前で急停止をした。目を瞑り、何かを探しているようにもみえる。


「……。いた!!」


「カイ?!」


カイはそう叫ぶと、海の中にいきなり飛び込んだ。ライは慌てて海の近くに駆け寄る。カイが海の中でも呼吸ができるのは知っているが、やはり奇想天外な行動をされると不安になってしまう。海を長く見つめていてもカイが上がってくる気配がないので、もしやと思いライは声を荒げた。


「カイ!! 何してんーー」


「キキキューー!!」


「な、なんだ。この鳴き声……」


ライは突然、海の中からした謎の声に驚愕する。魚の鳴き声だとしたらあまりにも大きすぎる。それにどちらかというと可愛らしい小動物のような鳴き声だ。


 表面に影を表した声の主をみて、ライは大きく後ろへ跳びずさった。もしかしたらカイはこの声の主にやられたのかもしれない。可愛い声だか油断しない方がいいと思い、ライは戦闘態勢に入った。


「キキューー!!」


「いって!!」


海の表面に現れた謎の生物は海から飛び出してくるなり、ライに力強く飛びついた。あまりの衝撃にライはうしろへと謎の生物と一緒に倒れ込んでしまう。あまりに速くて目に捉えることができなかった。ライは目が人一倍、いいというのになんだか悔しい。


「キキュ〜〜?」


「な、なんなんだ。この生き物は……スライム?」


ライは自分に乗り掛かっている青い生物をしげしげと確認する。大きさはだいだいライが両腕でやっと抱きしめられるぐらいで、見た目はスライムのように愛らしい。こちらを襲ってくる気配もないのでとりあえず体を触ってみる。


「感触はまんまスライムだな」


プニプニと弾力があって、それでいて変形もできる。しかし普通のスライムと明らかに違うところは、あまりにも大きすぎる。それにスライムは海の中に生息することはできない。淡水の生き物だ。


 普通、スライムの大きさは子供の両手に収まるぐらいだ。ライは小さい頃、スライムが好きでペットショップで母親に買ってもらったことがあるので、スライムのことに関してはかなり詳しい。


「あいつも、途中でいなくなっちまったもんな」


ライはぷよぷよとした感触を手で楽しみながら、昔飼っていたスライムのことをフッと思い出した。村を焼き討ちされたときに、はぐれてしまったのが最後だが、あの炎の勢いを考えると、もう生きてはいないだろう。なんせ、スライムは世界最弱のモンスターだ。


「なんだよ? 慰めてくれてんのか?」


「キュ!」


「ありがとな」


感傷に浸っているライにスライムのような生き物はすりすりと体を押し付けてくる。やけに慣れっこい。もしかしたら人に飼われているスライムなのかもしれない。ライがスライムのような生き物と戯れていると、カイがそれに割って入ってくる。


「あー! 兄ちゃん、プリンセスともう仲良くなってる!」


「カイ。どこにいってたんだよ?」


 ひょっこっと海の中から顔を出したカイはやきもちを焼くように頬を膨らました。


「プリンセスを呼びにいってたんだよ! 知り合いを呼んでくるって言ったじゃん!」


「もしかしてこの子、えっとプリンセスだっけ? が知り合い?」


「他に誰がいるのさ。ほら、おいで!」


カイが海の中で両手を広げると、プリンセスは嬉々としてカイに飛びついた。カイは飛びつかれ慣れているのか、水中にいるせいなのか、ライのように倒れることはない。


 やはり海の中にいるというのにプリンセスは溶ける気配がない。不思議だ。やはりスライムではないのだろうか……。


 それと同時にその見た目に合わない名前も気になる。姫という意味合いをもつプリンセスという名前はあいらしいスライムの見た目に合わない気がする。


 恐らく、カイが名付けたのだろうがなぜそんな名前と見た目が一致しない名前にしたのかが気になる。カイはプリンセスを体から引き離すと、本題に入った。


「プリンセス、海の都はどこか教えて! えっとアクアなんとかってところ!」


「アクアマリンな」


あいからわずと言っていいほど、名前を覚えないカイをライはさりげなくフォローする。


(まあ、海の都が複数個あるとは思えないけどな)


一応、複数存在した場合、どこの海の都なのかという話になってしまう。主語はつけておいた方がいいだろう。プリンセスはカイとライの質問に残念そうに声を下げた。


「キキュ……」


「知らないっぽいな」


「え、兄ちゃん! プリンセスの言っていることがわかるの!!」


「いや、わかるっていうか。落ち込んでるぽかったから、そう思っただけなんだけど」


「すごいや、兄ちゃん!」


カイはライの話に全く聞く耳を持たずいきなり海の中に潜った。どこから取ってきたのか、口に赤い魚を咥えている。それをカイは素早く咀嚼すると、骨ごとごくりと飲み込んだ。ライはそんなカイを片手で海から引き上げると、地面に放り投げた。


「何すんだよ。兄ちゃん!」

 

 カイは地面を激しく転がると、投げ飛ばしたライを睨みつけた。


「お前、まだ懲りてないのか? もう決めたぞ。なにかを食べるときはこれから必ず俺かルカの許可を取るんだ!」


「……平気だよ。あれには毒がないってあらかじめわかってるもん。……でも、わかったよ。次からは未知の食べ物をみたら兄ちゃんか姉ちゃんに聞いてから食べるよ」


「今日は理解が早いな」


「兄ちゃん、目が怖いんだもん!」


ライはカイに指摘され、自身の目を水面でしっかりと確認してみた。たしかに心配と怒りのあまり目がキツくなりすぎていたかもしれない。けどいつも通りだと言われれば、いつも通りな気もする。


「アクアマリン。どこにあるんだろ? やっぱり地道に潜って探す? それとも他の二つの方にする?」


「いや、陸は騎士が多くいて厄介だ。それに空は単純に俺が三人を乗せてずっと飛ぶのは無理がある。カイのシャボン玉があるから、海の方が都合がいい」


 能力をずっと使うのはあまり苦ではないが、ライは極端なほど重いものが持てない。恐らく筋力がないのだろうが、つけようとしてもこれがなかなかつかない。自分よりか細身のルカやカイの方が力があるぐらいだ。


「四人だよ」


「え?」


「プリンセスも一緒に行くから。四人!」


 カイは地面に飛び出してきたプリンセスを抱きしめると、衝撃発言をする。大体、プリンセスとはいつから交流があったのかも謎だ。


「じゃあ、もっと無理だ! あとその子を連れていくのは初耳だぞ!」


「風でフワーって空まで飛ばせないの?」


「手加減ができなくて、引き裂いちまうよ! 軽くトラウマになるぞ!」


 ちぎれたスライム?の雨なんかを間近で見たらスライム好きの自分は軽く気を失ってしまいそうだ。そしてそれを自分がやったとなると、罪悪感で苛まされること間違いなしだ。


「あ、この子はちぎれてもつぶれても大丈夫だよ。経験済み」


「可哀想だろ?! と、とりあえず明日になったら細かいことを考えよう。ほら、フーラのところ戻るぞ」


「待って、待って! 置いてかないで!」


カイは捨てられた子犬のような叫ぶと、プリンセスを抱き抱えたまま跡を追ってくる。ライはそんなカイを振り返ることもせず、あることを考えていた。


(海か……。ルカのやつ大丈夫かな?)






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