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神の子としての役割

「俺たちが、神の生まれ変わり……? つくならもっとマシな嘘をついてくれ」


 フーラから語られた発言にライは半信半疑で眉を寄せた。そんなライとは対照的にカイは驚いて腰を抜かしている。ルカはいつも通り、無反応でなにを考えているのかはよくわからない。


「ぼ、僕たち神様だったんだ!」


「いや、なんで信じるんだよ」


 話をスッと受け入れてしまうカイの様子を見て思わず突っ込みが出てしまう。カイは昔から嘘を信じやすい性格だったが、こんな見え見えの嘘を信じるとは思わなかった。


「なんて名前の神様ですか?」


「え、もしかして真面目に捉えてないのって俺だけ?」


疑り深いライとは違い、ルカもカイも話を鵜呑みにしているような感じだ。現実主義なルカでさえ、話の内容が気になっているようである。こうなるとまるでライが根拠のない話を信じないめんどくさい人間みたいだ。


「空を司る神、空神。陸を司る神、陸神。そして海を司る海神さ」


「聞いたことがない名前です」


「海神! なんだかかっこいや!」


カイは青い目を爛々と輝かせ、名前の響きに喜んでいる。フーラが嘘をつくとは思えない。カイを助けてくれたし、料理だって奢ってもらえて、色々とよくしてもらった。だからこそ疑うなんて真似はしたくはなかった。それにライだって自分の能力がなんのためにあるのか知りたかった。

 

「俺たちの能力の根源はそれか?」


「そうだね。神の生まれ変わりとして得た力さ。それは君たちを助け、導く糧となる」


「俺たちを導く? なんだかよくわからないな」


 フーラの言い方はなんだか抽象的で理解しにくい。言っていることはなんとなくわかるのだが、話しの核心がよく掴めない。


「君たちが歩む人生、それは生まれ変わる前から決められてるんだよ。その力はその道に進むためにある」


「難しいや。世界を滅ぼすための力?」


座り込みながらフーラの話に黙って耳を傾けていたカイは不思議そうに首を傾げた。フーラはカイの質問にフルフルと首を振り、答えを示してはくれなかった。


「それには答えられない。でも、ひとつだけ言えることは君たちは世界を救う希望となるということさ」


「滅ぼすための力が希望?」

  

 矛盾したことを言っているとライは思う。滅ぼすことがなぜ、希望となるのかがライにはよくわからなかった。カイと同様、話に首を突っ込む気配がないルカはなにかを考えているようで、下を向いて押し黙っている。


「破壊と創成は表裏一体なんだ。何かを救うためには何かを壊さなくちゃいけない」


「結局、お前が何を言いたいのかよくわからないや」


「わからなくていいよ。でも、僕にはひとつだけ君たちに助言できることがある」


「?」


「君たちは楽園を探しているのだろ? 僕はその場所を知っていると言ったらどうかな?」


「「「!!!」」」


思いがけないフーラの発言に三人は揃って驚く。母が死ぬ間際に言った言葉だ。楽園ではどんな人間も受け入れられ、決して差別されることもなくみんなが平穏に暮らせるという場所と、母はよくその前からもおとぎ話で語っていた。

  

 幼少期はそれを単なる子供騙しのお話だと思っていたが、自分たちは本当にそんな場所があればいいという半信半疑な気持ちで楽園を探して旅をしていた。


 そのことをなぜ、フーラが知っているのかは気になるが、今重要なことはそんなことではない。


「教えてくれ! 楽園という場所が本当にあるんだとしたら、それがどこにあるのかを!」


「そこにたどり着くには条件があるんだよ」


「条件?」


「まず目指すべき場所は空高くにある空の王国クラウド。陸の中にある陸の王国グランド。そして最後に海の王国アクアマリン。回る順番は好きな順番でいいよ」


「今、言ったところ全部回ったら、楽園に行けるの?!」


 カイは床から両足だけで立ち上がり、目をキラキラと輝かせた。そういえば、カイは小さい頃よく水の都の絵を描いていた。海の中に王国があるなんて、本当だったとしたらカイは喜んでそのまま死んでしまうかも知れない。


「補償するよ」


「じゃあ、僕海の王国のアクアなんとかに行きたい! 楽しそー!」


 カイは腕を天井に突き上げ、はしゃぎだす。いつも思ってはいるが、やはり同い年とは思えないほどの子供ぽさだ。未子で甘やかされたのが原因だろうかと、カイの教育方針を少しだけ後悔する。


「ちょ、ちょっと待てよ。行くって言ったってそんな国、聞いたこともないぞ」


「言ったでしょ? 空と陸と海にあるんだから、人間に知られているわけもない」


「海、いっぱい潜ったらいけるの?」


 カイは頭をおさえ、精一杯考えた末にその結論をだす。しかし現実がそんなに簡単なわけがないと、ライは思った。


「そんな大雑把な行き方なわけなーー」


「うん、そういう考えでいいと思うよ」


「単純だな! 本当にあるんだよな?」


「嘘をつく理由がないよ。まあ、僕は具体的な場所は知らないから。頑張って潜って探してね」


 フーラは頷き、自身が具体的な場所を知らないことを明かす。あることは知っているが、ある場所は知らないというなんとも頼りないガイドである。


 なんだかうまく話を誘導されてしまっている気もするが、今までの目的地がわからない旅よりかは現実味があるのかもしれない。


「けど、闇雲に海を潜っても意味ないだろ。世界中にどれだけ海があると思ってるんだよ」


「僕の知り合いに聞いてみる! 教えてくるかも!」


「知り合いってだれだよ? って今は深夜だぞ。危ないだろ!」


一人で扉を開けて、小屋から出て行ってしまうカイをライは慌てて追いかけた。また迷子になられたり、攫われたりしたら大変だ。敵はどこに隠れているのかわからないのだ。大胆に行動されては困る。


* * *


「君は行かなくていいのかい?」


「退屈ですし、めんどくさいので」


フーラの話の中、全く口を開かなかったルカは壁に背中を預けると、そのまま座り込んだ。二人の行動にはついていけない。いつだってルカの予想を裏切るような言動ばかりしている。


「君が一番、僕の話に驚かなかったね。もしかしてもう気づいてた?」


「こんな能力、人間が持てるわけがあるりません。私は兄さまやカイとは違って色々と考えているんですよ」


 ルカは顔をそっぽ向けると、話す意思がないことを示した。話すことは好きではない。ルカは自身の手のひらをみると、あまりに人間としか思えない見た目に疑問を持ったことを思い出した。


 幼少期、地面を操れるこの力はとてもではないが、人間の能力だとは思えなかった。世界を滅ぼすと言われているのも納得がいく。こんな能力、誰だっておぞましいと思うだろう。それに自分は……。


「ライは知っているみたいだったけど、カイの方は何も知らないみたいだね。君が……」


「黙りなさい。それ以上、喋ったらもう二度と口がきけなくなりますよ」


「怖いな」


ルカは地面から突き出した岩の塊をフーラの喉元に当てると、フーラを強く脅す。もしカイが外にいて今の話の続きを聞いたらどう思うのか内心ひどく恐れながら……。


「カイはきっと私のことを姉とは思わなくなるでしょうね……」

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