破滅の宣告
さきほどまで晴れやかだった空は一瞬で真っ黒に変わる。まだ昼間だというのに手探りで進まなければならないほどの暗闇だ。経済の営みの真っ最中だった国民達も不安がって家の中に閉じこもっていた。
そのうち数時間もしないうちに空が割れ、大雨が降り始めた。それから間も無くして大地は大地震のように揺れ始めた。そして最後に海が激しく荒れ始めた。
誰かどう見ても異質な異常現象だった。国はこの状況への対策を聞くため、代々政治に助言を出すことを許されている一人の占い師を呼んだ。今まで一度として占いを外したことがない占い師の登場に国民は喜びの声を上げた。
その後、城の会議室では玉座に腰をかけた多種多様な国の王が占い師の言葉に耳を傾けた。その中でも一番、強い権力を持っているクリスタル国の王は占い師に問いかける。
「今回の天変地異、よほどのことであろう。一体何が原因なのか教えてみせよ」
「……」
一人の王のさきを促す発言に国々の王達は息を呑んだ。当然である。占い師が発する言葉によって世界の運命が予言されるのだ。占い師はしわくちゃな手で手に持っていた透明な水晶をじっと見つめる。
王達にはその水晶に何が映っているのかは確認できない。しかし、占い師には"何か"がみえているのだ。この占い師はかつて厄災を次々と予言により薙ぎ払ってきた。今回も例に漏れずそうであろう。占い師は長いこと、水晶を見つめていたが、やがてカッと目を見開いた。"何か"が見えたのだ。
「生まれる……。破滅の三子だ」
占い師から語られる事件の真相。破滅という物騒な言葉を聞き、多くの王達は狼狽え始める。それは冷静なクリスタル国の王であっても例外ではない。
「破滅の三子? それがこの厄災を引き起こしている者の正体か?!」
「そうじゃ。今はほんの赤子であるが、やがて世界を滅ぼすほどの厄災を引き起こすじゃろう」
「……。皆の者に命ずる! 今宵、生まれた世界中の赤子を調べろ! その中に破滅の三子がいるはずだ! 見つけたら即殺せ! やがて、そ奴らによって世界は滅ぼされるだろう!!」
世界一とされるクリスタル王国の国王"バルファン"の言葉はその日、世界中に響き渡った。これがのちに語られることとなった"破滅の宣告"である。