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小6友愛days  作者: 玉城毬
5/8

⑤秋の学校祭

 秋の真ん中、6年生最終章の二学期が始まった。

 まずは恒例の、席替え。

 先生が貼り出した新しい席替え表を確認してから、机を動かす。

「じゃあな、恵!」

「じゃあね」

 わたるんと天野くんは別れを告げ合って、新しい席に移動していく。

 半年間ありがとう天野くん、と心の中でそっとさよならしてから、私も机を動かした。

「あ、福本さん隣?

 よろしくね」

「うん、よろしく。

 速水さん」

 運動女子の彼女が、私の隣になった。

「福本さん、同じ班?」

 振り向くと、速水さんの後ろが天野くんで、私の席からは斜め後ろ。

 でも、四人一組の班が一緒で、またなにかと一緒になりそうだった。

「また席近いね、同じ班よろしくお願いします」

「こちらこそ」

 挨拶もできたし、運命というか、もう森健先生に大感謝!

 天野くんとの縁を感じて、私の気分は上昇しっぱなしだった。

「おはようございまーーす。

 席替えの方は、大丈夫ですか?

 卒業まで六ヶ月、元気に安全で過ごしていきましょう」

 教壇に立った先生が、みんなの姿を見ながら話し出した。

「じゃあ次は、男女一名ずつ委員長を決めます。

 やりたい人は、挙手して下さい」

 緊張の時間。

 私の視界に、女子の挙手が入ってきた。

 速水さんだ。

「速水さん、ありがとう。

 他に、いますかーー?」

「はいっっ!」

 元気よく立候補したのは、わたるんだった。

「山西さん、ありがとう。

 では他の人、いませんか?」

 先生はたっぷりと時間をとって、最終確認をした。

「それでは、二学期の委員長は、速水さんと山西さんにお願いします。

 みなさんも協力して、クラス運営を一緒に進めて下さい」

 二人に拍手をしながら、残された学校生活の時間がひしひしと感じられた。


 新学期の午後、クラス活動では、来月の学校祭に向けた話し合いが早速行われた。

 うちの学校は学年によってやることが決まっていて、1年合唱、2年合奏、3年ダンス、4年劇、5・6年は室内催し。

 午前中は1~4年までの発表を体育館で観て、昼食休憩の後、午後は5・6年と一部の教員や保護者による室内催しや校内遊戯を楽しむ。

 6年生は去年に引き続き、室内催しだ。

「6年1組は、担任によるくじ引きの結果、カードゲームに決まりました。

 では、どんなカードゲームにするかや、当番の順番など、学級委員を中心に話し合って下さい」

 森健先生は速水さんとわたるんに教壇を譲り、机に座って監督を務める。

「では、どんなカードゲームがいいか、意見を出して下さい」

 速水さんが進行、わたるんが書記の役のようだった。

 トランプ、ウノ、花札、タロット占い、かるた、百人一首、等々……、次々に意見が出て黒板はいっぱいになった。

「意見の方は、これくらいでいいでしょうか?

 次は、実際にどのカードゲームがいいか、班の人と話し合って意見を出して下さい。

「人気アニメのカードバトルはちょっと、マニアックかな……」

「百人一首も、場所と時間が大変そう」

「タロット占いおもしろそうだけど、やり方が難しいかな」

 各班話し合って精査した結果、トランプのジジ抜き、ハーフ神経衰弱、占い、そして公式ウノの四つになった。

「カードゲームの種類が決まったようだね。

 じゃあ次に、当番の時間を決めます。

 7班のうち、四人いる6班で13~16時の30分毎の当番をやってもらいます。

 くじで決めるので、代表の人引きに来て下さい。

 三人の班は、前日の教室の準備を先生として下さい」

 森健先生はそう言いながら、手早く当番を決めるくじを作った。

「くじ引き、誰が行く?」

「天野、頼むよ」

「俺でいいの?

 じゃあ、行ってくる」

 速水さんが前に出て三人の私達の班は、天野くんが引きに行ってくれた。

 代表の六人がジャンケンをして、勝った順にくじを引いていき、当番の時間が決まった。

「15時30分から16時、一番最後の時間になった、なんかごめん」

「全然いいって、教室でそのまま片づけできるし」

 すまなそうに言う天野くんに、江川えがわくんはそう声をかけ、私もうんうんと頷いた。

 午後の室内催しは16時までで、その後軽く片づけをしてから下校になる。

「はい、じゃあ今日はここまで。

 来週のクラス活動では、各班担当者を決めて、カードゲームのルールの確認や実践を行っていきます」


 そして、学校祭準備のクラス活動二回目。

 各班で誰がどのゲームを担当するのかを決めた。

 私の班は、江川くんがジジ抜き、速水さんがハーフ神経衰弱、私が占い、天野くんが公式ウノになった。

 各班の担当者毎に集まって、ルールの確認をして、実践していく。

 三人の前日準備班も、好きなゲームのところに行って一緒にやるよう、森健先生は指示した。

「わ、麻香も莉伊那も、占い?

 SYD揃った!」

「さすがね、息がぴったり」

「いや、うちの班はジャンケンで決めたから、偶然」

「う・ん・め・い!」

 早速、わちゃわちゃしてる。

「じゃあ、やり方を説明しまーーす」

 他の子に言われて、慌てて注目した。

 今回の占いで使うのは、ハートとスペードと片方のジョーカーで、27枚。

 よく切って、上段と下段に13枚ずつ伏せておいていって、最後の1枚を手元に残す。

 上段をハートの1から13、下段をスペードの1から13に見立てて、手元のカードを正位置に戻して、ジョーカーが出るまでどんどん表向きに置き換えていく。

 表カードが多いほどよく、裏カードが多いと効果が薄い、という占い方。 

「じゃあ早速、一人一人占ってみよう!」

 占いの担当は全員女子で六人、占うことはそれぞれが心の中で思いをこめて、順番にやっていった。

「私は13枚!

 半分でまずまずってところね」

 莉伊那は満足気に言った。

「えーー、私、5枚だって……。

 少な~~い」

 麻香は残念そうだ。

「私、20枚。

 嬉しい!」

 想像以上の好結果に、私はテンションが高くなった。

 天野くんと卒業までいい感じに過ごせること、願ったから。

「いいね、これ簡単だしおもしろい!

 低学年の子にも、教えながらできるよ」

「でもさ、手持ちがジョーカーだったら、がっかりしちゃうね」

「やり直しても、いい結果じゃないかもしれないしね。

 それなら、4枚以下の子には、四つ葉のクローバーカードをあげるっていうのはどう?」

「幸運の象徴だね。

 けど、四つ葉のクローバーそんなに見つからなくない?」

「手描きでいいじゃない。

 手作りのお守りってことで」

 占い担当の女の子達は、盛り上がっていた。

 一通りの方向性が決まって、各自班に戻る。

「占い、盛り上がってたね。

 ハーフ神経衰弱も、さくさくできてよかったよ」

 同じ班の速水さんが言った。

「いいよなぁ、ジジ抜き、どれが最後に残るかわかんないから、かなりドキドキする」

 江川くんがそう言うと、

「いや、公式ウノが一番難しいし、長い!

 今までやってきたのが、簡単に盛り上げるためのローカルルール過ぎて、既に別のゲームだよ……」

 天野くんはげんなりとしながら言って、選んだことを後悔しているような感じだった。

「え、一回やってみたーーい!」

 速水さんが興味を示した。

「なら、明日の昼休み、この班の四人でやろうぜ?」

 江川くんも提案し、天野くんを励ます。

「みんな、ありがとう。

 けどルール確認してたら遊ぶ時間なくなるから、各自宿題で頼むよ?」

 うっ……、という空気になったけど、残りの三人も覚悟を決めた。

「みんなでやれば、きっと楽しいよ」

 私は根拠のない自信で励ましたけど、難しいゲームも友達みんなとやったらきっと少しは楽しめるんじゃないかなって期待した。

 ーーなんて甘くないのがわかったのは、実践してから。

 ルールを確認しながらの時間ギリギリ終了、修正が多くて、ゲームを楽しんだ感覚は低かった。

 やる人少なそうで仕事が楽かも、とフォローになってないことを言いながら、班四人による公式ウノ会は終了した。

 ここでのルール説明は割愛するので、気になった人は調べて下さい。


 そして、学校祭当日。

 午前中のステージ発表を観覧、自分も4年生までは緊張しながら舞台に立ってたなぁ、なんて思い出してた。

 お昼を終えて午後の部の室内催し、当番の時間以外は他のクラスを回って、一通り楽しむ。

 いよいよ残り30分前、私は最後の時間の当番をしに教室に行った。

 お客さんも少なくなってきて、仕事的には楽だった。

 そのなかでも閑古鳥な公式ウノに、わたるんと和田くんがやってきて三人でやっていた。

「大体見てきたから、最後恵と遊ぼうと思って。

 ルールわかんないから、教えて?」

「もちろん。

 和田は?」

「僕は予習してきた。

 天野と二人なら、初心者のわたるんもカバーできるよ」

 真剣に、遊んでる。

 16時、ちょうどウノ組も決着がついて、片付けに入ろうとした時だった。

「福本さん、占い、まだ間に合う?」

「え、天野くんがやるの?」

「実はやってみたかったんだ。

 お願いします」

 私がやり方を指南しながら、天野くんはカードを表に返していった。

「17枚!

 けっこういいね」

「そうだね。

 ところで、何を占ったの?」

「残りの小学校生活が楽しく過ごせるように、かな。

 ありがとね!」

 天野くんはそう言って、ウノの片づけに戻って行った。

 なんかかわいい、妙に親近感を覚えた。

 秋も深まり、クラスの仲も深まった、楽しい学校祭だった。


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