5. まだ恋だと知らない(ルーファス)
最初見たときは本当にこの少女と領地を守れるか心の底から心配になった。
「ルっ、ルファス、はぁはぁっ、ルーファス様っ、遅れてしまい申し訳ありません!!」
初日から遅れてくるとは…度胸があるな…
そう思い、少女の顔を見た。
綺麗、だ…
正直、声が出ないくらい驚いた。たしかに昔から美少女と言われているというのは聞いていたが、想像以上だった。
綺麗な金髪が風になびき、ターコイズブルーの目が輝いている。
「えーっと、君がヴィント公爵令嬢かな?顔を上げて」
「はっ、はい!ごめんなs……」
慌てて顔をあげた彼女は俺の顔を見て、言動を停止した。
時が止まったかと思った。
「だ、大丈夫かな?」
「だ、大丈夫です。(大丈夫じゃない)なんか…もう…美しすぎt……」
彼女が顔を真っ赤に高揚したようにしゃべっていたら、次は急に顔を青白くした。
面白い令嬢だな、会ったことのない種類だ。
「あ、あの〜、これは、そのぉ〜」
「あはは、可愛いね、ヴィント公爵令嬢は」
軽い気持ちで言ったお世辞だった。
しかし彼女は又もや顔を真っ赤にさせて言った。
「あ…ありがとうございます。」
本当に嬉しそうな顔だった。何故か罪悪感があって後味が悪い。
「?どういたしまして?」
いつもどうりの女の子への接し方。
とりあえず、笑顔で答える、優しくする、褒める。
そうすれば自分が恨まれることもないし、一人一人態度を変えるのは面倒だ。
その時ーー
「婚約破棄でも受け止めますっっ」
彼女の声が部屋中に響きまわる。
自分自身、一瞬顔が真顔になった。
何を言っているんだ。この結婚はヴィント家にはメリットしかない。
なのに…なぜ婚約破棄を…?
「ヴィント公爵令嬢は私と婚約破棄したいのかな?」
彼女を見ると笑顔のまんまかたまっている。
「みんな、一回2人にしてくれる?」
そそくさとメイドや侍女が出て行く。
一人の侍女が祈りながら部屋を出て行った。彼女の侍女だな。
彼女が面白いのは彼女の父の血筋だと思っていたが、周りの環境にも影響されてそうだ。
さて、明らかに何かを隠している、この少女。いったい何をもってさっきの発言をしたのだろうか、
「で、なんか隠してるでしょ?」
「さ・・・さあ?なんのことでしょう??」
「何、隠してるの?」
「な、何をって…?」
「俺に言えないことなの?」
短い沈黙、、、やはり何かある
「やっぱ、俺に言えないことなんだぁ、怪しいなぁ」
「!?え、いや違います!」
「じゃ、教えて」
少し強めの口調で言うと、彼女は折れたらしく、隠していたことを話し出した。
まぁ、その内容は信じられないものだったのだが。
16歳の時にある女子生徒が特待生として学園にはいってくる。
その女子生徒と俺が恋仲となり、ヴィント公爵令嬢を卒業パーティーで婚約破棄する、と
おかしい…俺とその子ではクラスは絶対に被らない。あまりに身分差がありすぎるからだ。
そのことを指摘するとヴィント公爵令嬢は苦笑した。
「というか、さっきも言ったけど君は俺と婚約破棄したいわけ?」
「いえいえ、とんでもございません!私はルーファス様一筋ですから、こうやって話せた思い出だけでご飯1000ばいいけますわ!」
「お、おう」
ルーファス様一筋って俺は今日君と初めて会ったんだよ
ご飯1000杯…御令嬢の言葉遣いなのか…
ツッコミが大渋滞する
「それに…たとえ婚約破棄されても、私はルーファス様が幸せならそれで…」
彼女が心ここに在らずな感じでつぶやいた。
そして、決心したように顔つきが変わる。
「幸せです!!」
「ーーッ」
彼女が笑う。
カーネーションが咲いたみたいだ…
そして、なぜこの少女は俺の幸せをこんなに望んでくれるのだろうか
俺は人の幸せよりも自分の幸せを優先するクズだ。どの人物にも同じ顔をする自分がそれを何より象徴している。
この時から私は彼女に心を奪われた。
紅茶のカップに顔を赤くした自分がうつった。
慌てて顔を手で隠し、別れの言葉を言い、早歩きで部屋を出る。
少し離れた廊下でしやがみこむ。
(俺は…一体この数十分でどうしてしまったのだろうか…)
頭をくしゃくしゃかき回した。
(あ、二人きりになったとき…俺口調をいつものにしないで話した…?)
二人きりの時の口調がほんとうの俺の口調だ。
たまに間違えてあの口調で令嬢と話すと、不快な顔をされたり、だいたい幻覚とかだと思われたりする。
彼女は、、、驚いては、いたが…決して不快な顔をしていなかった。
もしかしたら、彼女なら本当の自分を尊重してくれるのではないだろうか?
密かに、結婚への期待が膨らむ。
だが、この時、ルーファスはまだこれが恋だと知らないのであるーー
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