3.はじめての舞踏会
「ねえ、エミリー」
お願いポーズ&目うるうるさせてエミリーをみつめる。
それを見たエミリーは長いため息をついた。
「なんでしょうか??」
「ふふ、私にお化粧して?」
「・・・明日は吹雪ですかね〜?」
「こらっ!窓を見るな!」
⚪︎ °.⚪︎°.
ー数時間前ー
私は考えた。このままでは18歳まで婚約者を続けられないんじゃないかと思う。(いろんな意味で)
だから、言葉遣いとかドジなところをフォローするくらい"容姿"を磨けばいいをじゃないかっておもったのだ。
今の私じゃ、ルーファス様の恥になりかねない。ゲームの中でのミリーちゃんの作法は完璧だったけど、今の私は作法も凡人だからなぁ。
あ、でも安心してください!ヒロインがいる時は引き立て役になりますんで!!
⚪︎ °.⚪︎°.
「お…お嬢さまが化粧??あの…おてんばが…?」
あー…たしかに、私の幼少期はおてんばだった。パジャマで庭を朝から駆け回るような…
これは私の記憶が蘇ったからではない。前からだ。
ミリーちゃんのそんな裏設定、前世では聞いてなかったけど、そういうところがみれるのが転生の特権だろう。
「わ…わかりました!私がお嬢様を女の子らしくします!」
「あれあれ?エミリーさん?私は元々『女の子』だったわよね?」
「あー、私ちょっとやることあるので!!」
エミリーは勢いよく部屋を飛び出していった。
さぁてっ、頑張るぞ!!!
⚪︎ °.⚪︎°.
綺麗な薄紫のドレスに身を包んだ可愛いらしい少女が目の前にある鏡に映っている。
慣れない化粧は素の整った顔をさらに美しく引き立たせている。
我ながら8歳とは思えない。
ちなみに化粧をした姿をルーファス様に見せるのは初めて。今までのお茶会はいつもどうりに過ごしてきた。ルーファス様の反応がほんの少し楽しみで、でも怖い…
「……エ、エミリー…変じゃないわよね?」
「はいっ」
今日ははじめての舞踏会だ。
日々、ファッションやダンスを極めてきた。絶対にルーファス様の足を引っ張らないわっ
…その前に足をダンスで踏むかm…。
いやいや、ミリー!自信をもって!あれだけ頑張ったもの!!
⚪︎ °.⚪︎°.
コンコン
「ミルドレッド?入るよ」
最近ルーファス様は私のことを"ミルドレッド"と呼んでくださる。
高揚する気持ちを抑えるのがいつも大変だ
「ルーファス様、お待たせして申し訳ありません。」
「いや、大丈夫d……え?………」
• • • •え?
これもしかして、失敗したかな?厚化粧だったかな?
思わず俯いてしまう。
急にルーファス様に落胆される恐怖が全身をおそう。
「す、すまない…あまりにも綺麗だっか…ら…」
綺麗という言葉に驚き、ルーファス様の顔を見る。
顔がとても赤かくなっていた。熱なのかしら?とエミリーに目で問いかけるとエミリーは首を横にふった。
「と、というか、なんで今日に限って…そんな格好…」
「えっと、、、ダメでしたか??」
「いや!!だめじゃ…ない…んだけど…なんというか…」
「はい?」
「とにかく!あんまり人の気を引く行動は控えて!」
「わかりました。先程は綺麗と言っていただき大変嬉しく思います!」
よくわからないけれど取り敢えず、ルーファス様的にはストライクゾーン内にはわたしはギリギリ入ったらしい…
でも、人によっては君はどうだろう……?って言うのを遠回しに教えてくださったんだわ!きっと!
それでも、ルーファス様から綺麗って言っともらったのはすごくうれしかった。ミリーに生まれてよかったって心から思たわ!
「ーーーッ」
「えー、イチャ…ではなく、お話しはそこまでにして、準備が整いましたので…」
「わかった。」
ゆっくりと赤いカーペットを通っていく。ルーファス様が私の歩幅に合わせて歩いてくれる。こういう気遣いができるところも好きなんだよなぁ
「おっ、ルーファス!その子が婚約者?可愛いね〜」
ひやぁぁぁぁぁっ!攻略者の一人!実物、イッケメン!クローズド・ジェイク。ルーファス様とは幼馴染。ジェイク様はこの後どんな魔物でも倒す最強の騎士となる。私にとって3番目の推しでした!
「えっと、ヴィント・アルファ・ミルドレッドで・・・」
「すまないが、僕たちは今から殿下に挨拶に行くんだ。また今度な!」
「えっ、おいおいっ!」
ルーファス様に連れられ早足でその場から離れる。
果たしてジェイク様と仲が悪いのだろうか?いや、違う。ゲーム内ではかなり親しい仲だった。
喧嘩でもしたのだろうか??
「ルーファス様、よろしいのですか?ジェイク様のこと?」
「?ミルドレッド、君、どうしてジェイクを知ってたの?初対面だよね?」
あ・・・・
「は、はい!な、なんとなく、ジェイクっていう雰囲気だったので…あはは」
「うん。確信した。何か隠してるね?また。」
「へ?なんのことですか?」
「目が斜め上にいってるよ?ミルドレッド」
うっ………やっばぁぁいっ
ヒロインとルーファス様ルートについては軽く話したけど、、、その他のルートについて話してなかったんだった!もちろん、私が死刑の道に進み予定だということもいってないし…
「まぁ、後でゆっっっっく〜り話そうね??」
「は…はひぃ…」
「君が例のヴィント公爵令嬢かね?」
「でっ、殿下!お久しぶりです。」
「ルーファス、久しぶりだな。」
「ヴィント・アルファ・ミルドレッドです。お目にかかれて、光栄です。」
「君の父とは長い付き合いでね、いつも娘の話ばかりしててね」
「ご…ご迷惑をおかけしてます」
「殿下、私たちはこれで」
「あ、あぁ」
本当に最低限の挨拶じゃない!やっぱり熱があって調子が悪いんじゃ?
「ルーファス様?大丈夫ですか?」
「うん、平気だよ。あ、曲が始まるよ、行こう」
「えっはいぃぃ!?」
スケジュールのテンポが早いっっ
「・・・ごめん。流石に身勝手すぎた。」
「え?」
「振り回してごめん。ダンスは俺に任して」
そう耳もとで囁かれ、あっという間に私の顔は真っ赤になった。
前世は彼氏いない26歳の女。免疫などない。
ダンスは驚くほどスムーズに進む。
失敗しそうになってもカバーしてくれる。
しかし、やはり顔は赤いまんまだ…息が荒くなっている気がする…
ダンスが終わった瞬間、私はルーファス様をベランダに半無理やり連れて行った。
「何するんだ!?ダンスは完璧だったろ?」
私は手のひらでルーファス様の額を遠慮なく触った。
・・・熱い。
「ルーファス様、どうして熱があることを言わなかったんですか?!」
「熱なんてな……い…」
「嘘言わないでくださいっ!」
「熱があったって君には関係ないだろっ!!!!」
ルーファス様の怒鳴り声がその場に響く。
ゲームでも茶会でも聞いたことのない姿。
「ごめんなさい…」
力になりたかった。あなたに断罪される未来があろうとも…
今はゲームをやっているわけじゃない。婚約者として生きているから。頼って欲しかった…
自然と目尻が熱くなり涙が溢れ落ちる。
ルーファス様が戻ろうとしたとき、体がふらついた
なんとか私が背中を支えて、すぐにエミリー達に声をかけた。
ルーファス様はすぐに自宅へ向かった。
私は馬車の中で無念さや悲しみに浸るばかりで何も出来なかった。
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