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六百四十五年

作者: 後藤章倫

中大兄皇子はムカついていた。

「なんだっつーんだ?あの腐れ父子がぁー、だらぁ」


天皇家と度々衝突を繰り返す蘇我蝦夷・入鹿父子に対して、天皇中心の律令国家建設を推し進めている中大兄皇子はかなりムカついていた。

ムカつき過ぎて、孝徳天皇の皇后である妹の間人に、

「俺さ、メッサメサあの蘇我父子ムカつくんだけど殺ってもいいかな?」

と愚痴をこぼすと、

「そんなに思い詰めなくていいじゃない。あんな馬鹿父子の事は放っておきましょ、そんな事よりお兄ちゃん、もっとこっちにきて」

そう言って兄の中大兄皇子を抱き寄せた。中大兄皇子も、

「そだね、くだらない事をお前に話してごめんよ、うんうんよしよし」

そう言いながら妹の間人を抱きしめた。そう、二人は愛し合っていた。

妹系というか、そういうアレではなくて、ガチに妹を愛していた。

間人も孝徳天皇という夫が居ながらも兄の中大兄皇子とベッタリだった。


なんかそういう時に人は舞い上がるもので、間人もインスタに匂わせな感じの画像をアップしていた。

インスタは拡散され蘇我入鹿もそれを目にすると、

「おっ間人ちゃんのインスタ拡散されてるなぁ~、アレ?この後ろに写ってる烏帽子は中大兄皇子のじゃね?アレ?間人ちゃんやっちまってね?」

入鹿はなんとなくその事をツイッターで呟いた。すると面白おかしくリツイートが始まりアレよアレよと順調にバズった結果二万五千リツイートと七万いいねを得た。


中大兄皇子はもう我慢を超えていた。ヤバかった。ヤバりんこパークだった。いやそれは最上級のヤバさ、ヤバりんこパーク農園にまで達していた。

「入鹿の阿呆んだらがぁ、間人まで巻き込みやがってよぉ、ぶっ殺したるわい」


中大兄皇子は皇極天皇に異議申立てをし宮中に蘇我入鹿を呼び出した。入鹿はヘラヘラしながら

「何か用っすか?」

みたいに軽くやってきた。するとようやく目の前の怒り心頭の中大兄皇子に気付いた。入鹿はそこでやっと、

「ちょっとヤバいかも?」

と思った。 けど遅かった。

中大兄皇子は皇極天皇の前でガッツリと蘇我入鹿を刺殺した。皇極天皇は秘かに、

「こいつヤベーな」

と思った。


入鹿が殺されてアタフタしている人物がいた。蘇我蝦夷である。蝦夷は息子が殺された事よりも自分の身を案じていた。

蝦夷という人はちょっと変わり者だったが、頭はきれた。聖徳太子というこれまた変わり者がいて、でも聖徳太子は有名人だったから結構ちやほやされていた。その聖徳太子に上手いことアレして、ちゃっかりと一緒に〖天皇記〗〖国記〗なんかを編纂したりもしていた。


蝦夷は、もう訳がわからなくなっていた。ひたすら、

「ヤバりんこ、ヤバりんこ」

と唱えていて、パーク農園どころじゃないと思い、

「これはマジでヤバりんこパークインフェルノやんけ」

と悟りをひらいた。が、許容量は完全にオーバーし目が白黒になりながらセックス・ピストルズのゴッドセイヴザクイーンをアカペラで熱唱するなどしていた。突然、

「ロンドンは燃えている」

と叫び、〖天皇記〗や〖国記〗等の幾多の珍品に火を放った。

屋敷の外へ飛び出した蝦夷は原宿で屯していたバングラデシュ人から大麻樹脂(通称チョコ)を大量に買い入れ再び屋敷へ帰り、引きこもった。

ひたすらチョコをやっていると天井からジャニスとヘンドリックスが降りてきてムーヴオーバーを演り始めた。次の曲のイントロをヘンドリックスがキメると二人はまたゆっくりと上昇し始め蝦夷に手を伸ばした。

蝦夷はジャニスの手をしっかりと握り一緒に天に昇って行った。ヘンドリックスが演奏した曲はパープルヘイズだった。蝦夷の死顔は安らかだった。


三代に渡って朝廷を牛耳っていた蘇我氏は滅亡した。

そして大化改新が始まった。



ちょっと待て、面白くない人物がポツンといた。

孝徳天皇である。

「あり?俺ってば嫁に逃げられてなくなくなくね?」

しかも、その皇后間人は事もあろうに実兄の中大兄皇子と一緒になってしまった。

孝徳天皇は、

「金木つけわが駒は引き出せずわが飼ふ駒を人見つらむか」

と恨みの歌を詠んだ。


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