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高校生の朝は忙しい

 異性と交際すると、毎日の下校を共にしなくてはいけない。そこに個人差はあるが、大抵のカップルは自然とそうなる。

 だが、そうして嫌と言うほど帰り道をご一緒する癖して、登校を共にしないのは何故だろう? 雄介は頭を悩ませた。

 雄介の経験では、毎日一緒に帰ろうとは言われても毎朝一緒に学校に行こうと言われる事はほとんど無い。それは、朝時間を合わせるのは大変だとか気分が乗らないとか、それ相応の理由は人それぞれにあるのかも知れないが、それならば、躍起になって一緒に帰る必要も無いのでは。雄介は自分なりの考えを立てた。

(時間を合わせるのを億劫に感じるのは、別にそこまでして恋人と一緒にいなくても良いと思っているから)

 好きな音楽を左右のイヤホンから流しながら、雄介は一人学校に向かって自転車を漕いでいた。春佳と付き合う事になってからとりあえずは毎日一緒に帰っているが、まだ一度も一緒に学校に行こうとは言われていない。春佳もまた、雄介が今までに付き合った異性の例に漏れなかったのだ。

 学校へと続く通学路の半ば、少し大きな交差点。赤信号の下で雄介がふと横を向くと、そこには春佳がいた。

「あ。偶然」

 と言ったのは雄介で、イヤホンからの音楽に遮られて春佳の声は聞こえない。雄介はイヤホンは外さず、その音量を0にした。

「偶然だね! せっかくだし一緒に学校行こーよ」

(……まあ、このシチュエーションならそう言うだろう)

 二人で学校へと向かう途中、春佳はいつもと同じ様に笑ったり、喋ったりしていた。

(別に、朝は機嫌が悪いとかじゃなさそうだな)

 毎日一緒に帰るのに一緒に学校に行こうと言い出さないのには、絶対に何か理由がある。雄介は頭の中で話を整理しながら、一人あれこれと考えていた。


 翌朝、またも同じ交差点で二人は出会った。

 またか、と雄介は思ったが、二人がそれぞれの自宅から学校へ真っ直ぐ向かおうとすると必ずこの交差点を通る。その上ここは交通量が多く信号で待たされる時間も長いので、赤信号で止められると二人が出会う可能性はそこまで低くない。そういった理由から特別視する事もなく、二人はまた学校へと向かった。

 しかし、その翌日も翌々日も、二人はまた同じ交差点で肩を並べる。当然、二人の間でそういった約束が交わされていた訳ではなく、偶然が四日連続で続いたのだ。

(これは、いくらなんでもおかしい気が……)

 雄介はそうも思ったが、とは言え別にあり得ない話でもない。毎朝、学校に着く時間が八時だったり八時半だったりと変わる事はなく、大体その時間は決まっている。それは意図的な話ではなく、習慣というものから来る現象だが、とにかく毎朝ほぼ同じ時間に同じ場所を通過する以上、あり得なくはないのだ。

 雄介は、そう考える事で自分自身を納得させた。当然そこに多少の疑念は残るが、そもそも偶然でなければ何なんだという話。それよりも、今この天才の目はどうして朝一緒に学校に行こうとは言わないのか、そのはっきりとした答えを解明する事に向いていた。

 しかし、そのまた翌日も、二人はいつもの交差点で合流した。いや、『本来なら合流していた』と言うべきか。

 信号機は赤い光を点し、春佳の目の前を無数の車が駆け抜けてゆく。

 いくらなんでもこれはおかしいとハッキリ確信した雄介は、交差点に春佳の姿を確認した時点で自転車を漕ぐのを止めた。試しに、少し離れた所から様子を窺う事にしたのだ。

 ――赤い光が青に変わっても、春佳はその場を動かなかった。

 雄介は、一瞬で全てを理解した。

「春佳」

 雄介は春佳の元に近寄り、声を掛けた。

「あっ、雄――」

 春佳の言葉を遮る様に、雄介は言葉を連ねた。

「俺、別に朝弱いとか無いから。迷惑でも何でもないし、そんなの気にしなくていいよ」

 春佳は、雄介と一緒に登校したかった。でも、もし朝は面倒だと言われたら? それとも逆に、雄介に気を遣わせてしまったら? 悪い考えばかりが先に立つ。

 一日目は、あくまで偶然だった。二日目は、少し雄介を待ってみる事にした。三日目からは、十五分待ってから学校に行こうと決めていた。自分が少しだけ早く家を出て少しだけ待っていれば、一緒に登校できる。雄介に迷惑は掛からない。

「来週からは、ちゃんと一緒に学校行こうよ」

 雄介は全て理解した上で、そう言った。

 春佳は少し驚いた様な表情をしていたが、やがてそれは綻んだ。

「うん!」

 いつも以上の満面の笑みが、やけに綺麗だった。

本当は、毎日更新するとか意気込んでいたんですが、

それは流石に無理だったので、最低でも三日に一度にします。

こういう時、予め書き溜めてから順次公開するようにしたり、プロットを作ってから書き始めていたら便利なんだろうなあと思う。

ズボラなので出来ません。

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