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魔獣来襲

 ここからしばらく移動していくと、徐々に地形が変わっていくという。

 平地から起伏の豊んだ複雑な地形に変化していき、植物の数も減って行くということだ。

 「この先、敵の隠れやすい地形が増えていきます。周囲の警戒を怠らないようにしましょう」

 「敵というと先日のやつらのことですか?」

 「はい、あの集団が再び襲ってくる可能性は非常に高いでしょう。しかし、脅威はそれだけではありません。この辺りにも数多くの魔獣は生息していますからね」

 「何か目的があって襲ってくるのでしょうか?」

 「後者に関しては食料目当て。勿論食料とは我々のことです。そして前者はおそらく、我々の所有する転送装置が目当てでしょうね」         

 「転送装置ですか!このキャラバン隊で運べるような大きさなのですか?」

 「ええ、さほど大きくはありません」

 「そうなんですか。それにしてもやつら、よくこのキャラバン隊がそんなものを持ってると分かりましたね」

 「我々がこの地域に転移してきた所を目撃したのでしょう。或いは予め、監視者を配置して待ち構えていた可能性もありますね」

転移する位置には、予め座標を特定する為のアンカーを打ち込む必要がある。それらを設置した建造物は、どこか特徴的で目立つそうだ。

 そういった建造物に奴等は見張りを付けていたのではないか、と言う事だ。

なぜそうまでして転送装置を必要としているのだろうか?

 「奴等を先導している神人は恐らく堕落人です。我々から転送装置を奪い、天上世界へ戻ろうとしているのでしょう」

 堕落人とは何らかの理由で天上世界から地下世界へ落とされた神人の事らしい。

 犯罪者や思想犯、統治者への反逆……様々な理由で落とされるそうだ。

 地下世界から地上世界へは来れるらしいが天上世界へは行くことが出来ない。

 地上世界から天上世界へは行けない事はないのだが検問所があり、堕落人では通れない。

 そこで転送装置に目を付けたのでは無いか、と言うことだ。

 この世界に出回っている転送装置は、ほぼ統一規格で作成されており、特定の位置座標(アンカーの設置場所)さえ把握していれば、どんな転送装置でも目的地に転送可能だそうだ。

 「村ごと転送する様な規格外のものもありますが、我々の村のオリジナルです」

 と付け加えられた。

 「我々の転送装置を使用して堕落人が天上世界に戻った事が判れば、我々の村は神人に目を付けられてしまいます。転送装置を奴等に奪われる訳にはいかないのです。もともと我々の村は神人からは心良く思われていないのですけどね」

 神様も神人は強力な術を使うと言っていたし、確かに目を付けられたら厄介だな。

 粛清!

 とか言いながらいかずちとか落としてきそうだ。

 堕落人がどれ位いるか尋ねると、あと三人ではないかということだ。

 俺が落っこちて二人潰したらしい。

 堕落人は三人しか居ないが地上人を引き連れているようだ。

 その数約三十。

 決して少ない数ではない。

 と、斥候隊から合図があった。

 どうやら魔獣が近づいて来ているらしい。

 しかもかなり厄介な魔獣らしくキャラバン隊は大騒ぎだ。

 「私が先頭にたちます!みんなは蜘蛛の陰に隠れて!」

 機械蜘蛛を円形に囲み中心に待機していく。

 と、木々の間から、ゆったりとした足取りで、巨大な魔獣が現れた。

 狐だ。

 体長5メートルは在ろうかと言う巨大な狐が現れた。

 まるで重さを感じさせない、軽やか足取りで近づいてくると、静かに腰を降ろした。

 青みがかった白銀の毛並みと、地肌の黒色のコントラストがとても美しい狐だ。

 空を仰ぎスンスンと鼻を鳴らし、辺りをゆっくりと見渡す。

 此方を見据えると、口の端を醜く歪めて……にぃ

 と、嗤った。

 青白い炎が奴の周りに浮かび上がる。

 「あの炎に触れてはいけません!あの炎は生命を吸い取ります!」

 叫ぶネイトさんを余所に、炎がキャラバン隊に襲い掛かる。

 一人が炎に包まれる。

 燃える事は無く、しかし、中の人が徐々に萎んでいく。

 それを見たネイトさんが、怒りも顕わに駆け出していく。

 「おのれ!これ以上やらせません!」

 駆けるネイトさんが、黒い体毛に包まれていく。

 体もどんどん大きくなっていく。

 いつしか四つん這いに成った、ネイトさんの姿は黒豹のそれだった。

 ネイトさんは勢いもそのまま狐に飛び掛る。

 鋭い牙で襲い掛かるも、まるで効いた様子はない。

 依然口元に嗤いを張り付かせたまま、その場を動こうともしない。

 炎がネイトさんに襲い掛かる。

 ネイトさんは炎を避けるので精一杯になってきた。

 くそっ!おれは何もする事が出来ないのか!

 なんとか!なんとかしなくては!

 “コウ”を集めるんだ!

 と、こちらに一瞬、狐が気を取られた。

 その瞬間をネイトさんは見逃さない。

 一瞬ネイトさんの体が輝いたかと思うと、

 《ズドォォォン!!!》

 と、轟音と共に狐に雷が落ちた。

 狐は真っ黒こげで、ピクリとも動かなくなった。

 「ざあ、びんな、いまのぶちににげばすよ!」

 ネイトさんがふら付きながら戻ってくる。

 駆け寄りながら体を支える。

 「ネイトさん凄いです!奴はもう倒したのでは?」

 「やずばまだいぎでいばす。ばやぐにげないど」

 獣の状態で上手く喋れないネイトさんが必死に訴えかける。

 ネイトさんを機械蜘蛛に運び込み、その場を後にする。

 ネイトさんの体が、少しづつ人型に変化していく。

 って、ネイトさん裸なんじゃないすか!

 と、手で顔を覆いつつ、指の隙間から覗いていると、ネイトさんはいつもの服を身に着けていた。

 な、なぜ?

 不思議そうにしていると、これは体毛を変化させた物だと説明してもらった。

 ええ~!服にしか見えない!

 たしかに他のみんなとは違う、変わった服だとは思ったけど!

 しかし、考えようによっては、今まさにネイトさんは裸な訳で……

 「レイにいちゃんのへんたい!」

 フランに怒られました。

 しかしこんなところあいつに見られたら、それこそとんでもない事に……

 あれ?あいつって誰だっけ?

 「本当にレイさんはすけべなんですね」

 あ、ネイトさんまで……

 ん、でも嫌そうな顔じゃない。

 「ネイトさん、大丈夫ですか?」

 「あまり大丈夫ではありませんね。少し生命力を奪われてしまいました。それよりレイさん」

 ああ~、ネイトさんにも貶されるのか~

 「さっき、レイさんから神気を感じました。あの調子でがんばってくださいね」

 えっ、本当か?

 あの時はどうしたっけ?

 なんか変わった事はなかったか。

 !!

 そうだ!確か目の前に、薄っすらとだが靄のような物が見えた……気がする。

 あれがもう一度見えれば、なんとかなるのではないか?

 意識を目に集中していく。

 「そんなにじっと見られるとさすがに照れますね……」

 しまった!ネイトさんの方見てた!

 「レイにいちゃんのどへんたい!」

 フランちゃん違うんだ……と、見えた!

 「ネイトさん、これって……」

 「そうです。それが“コウ”です」

 一度認識するとあまり意識しなくとも見ることが出来た。

 見る、と言うかなんとなくだが感じる事が出来る。

 そして“コウ”に意識を集中すると今度はこちらに集まってきた。

 集まると言うか体内に吸い込まれるような感覚がある。

 と、お腹の下の方が熱くなって、熱いとは違うか?

 なんだこれ……

 「解ると早いですね。あなたが今感じてるそれこそが神気です。この薄くなった“コウ”を感じ取れるとはたいしたものですよ」

 ただのすけべでは無いようですね。と、付け加えられた……

 なんか、良い雰囲気だな。

 ネイトさんも満更でもなさそうだし……

 「ところで、この集まった神気はどうやって使うんですか?」

 へ?って顔をされた。


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