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若さとは

 犠牲になった方達の弔いを行ない移動の準備を進めていく。

 色々と知りたい事があるのだが、何から訊いたものやら……

 彼らキャラバン隊の主な乗り物は“機械蜘蛛”という名前そのままの蜘蛛の形をした機械仕掛けの乗り物だ。

 彼らの文明は地球よりも相当進んでいるようで、おれなんかが見てもどんな原理で動いているのかさっぱり解らない。

 足に当る物が左右に五本づつ計十本取り着けられており、それを器用に動かしながらわしゃわしゃと移動して行く。

 頭部の辺りに運転席が在り、胴体の位置が荷台となっている。

 そして護衛の人達が乗っている一人用のバイクみたいな乗り物“機械馬”。

 タイヤのような物が一つしか無い、一輪車みたいな乗り物だ。

 そこに二つ折れのサスペンションが付いており、その上に馬の鞍のようなシートが。

 前面には風防が付いている。

 これがとにかくかっこよくて、自分でも運転してみたくなった。

 なんとかお願いして乗せて貰らったが、操作が難しくてまったく乗りこなせなかった……

 結局、機械蜘蛛の荷台に揺られることになるのだった。

 この辺りは平原のようなところで、あたり一面若草色に覆われている。

 風が草花を揺らしながら渡っていく。

 こんな景色、日本どころか地球に居たんじゃ見れなかったな。

 犠牲になった人達のことが無かったら、素直にこの世界を満喫できたのに……

「あの、レイさんはどのようにして神気を扱えるようになったのですか?」

 隣にやってきたフロイに訊ねられた。

 う~ん、神様は神人の魂うんぬん言っていたけど、そのまま答えたものかどうか。

 そもそも神気とやらは使っていないし……

 おれが困り顔で考え込んでいると、副隊長がやってきてフロイを諭してくれた。

 「人には語れないことの一つや二つあるものですよ。ましてや神気に関することなど特にね」

 すいません、知らないだけです。

 副隊長と目が合い軽く会釈する。

 短い黒髪を後ろで結んだ、とても美しい女性だ。

 名はネイト。

 戦士というよりは学者といった趣の物静かな印象がする。

 ふと疑問に感じたのだが、彼女の髪色や服装だけ他の皆と違う。

 フロイは青みがかった銀髪。

 妹のフランも銀髪。

 他のみんなも茶色がかった明るい髪色をしている。

 服装もみんな一緒という訳ではないが、全体的に茶系の民族衣装の様な服を着ているのに対して、ネイトさんは黒一色、首元に黄色、金だろうか?のネックレスをしている。

 そんなおれの視線に気づいたのかフランが話しかけてきた。

 「ネイトお姉ちゃんは神獣なんだよ!」

 ええ~!全然人間にしか見え無いんですけど!

 そもそも神獣ってなんだろう?

 ジロジロと彼女を舐めまわすように見つめてしまった。

 いかん!彼女はとても居心地が悪そうだ。

 そう思い視線を逸らそうとした時、彼女の乗り物に自分の姿が映っているのに気づいた。

 えっ?おれなんか若返っているんですけど!!

 さらに食い入るように身を乗り出すおれに、フランから冷ややかな言葉が掛けられる。

 「レイにいちゃんのエッチィ~」

 傍から見たら女性の太腿を凝視している様に見えるし、普通そうなるよね。

 「ネ、ネイトさん、すみません!」

 「い、いえ、大丈夫です……それよりも、もうそろそろ夜になります。この辺りで夜営の準備をしましょう」


 空に闇が訪れる。

 太陽も無いのに不思議な光景だ。

 夜営の準備をおれも手伝うことにした。

 しかし、初めて見る道具ばかりでまともに扱える訳も無く、みんなから笑われてしまった。

 「ぷっ、レイにいちゃん不器用だなぁ~」

 フロイはおれの奇妙な動きが可笑しくてしょうがないらしい。

 「フロイ。大人をからかうものじゃありませんよ」

 と、ネイトさん。

 ネイトさんは続ける。

 「我々の文化はこの地域でもかなり特殊なものですし、レイさんが扱えなくても仕方が無いことなのですよ」

 新婚旅行で一度しか海外に行った事の無いおれにとって、ほぼ初めて接触する異文化な訳で、それが別の世界となると尚更訳が解らない。

 そういえば全員が身に着けている黄色い包帯の様な物も何か意味があるのだろうか?

 訊ねてみると、これは符呪布といって、まじないの籠った布だという事だ。

 いわゆるマジックアイテムというやつか。

 黄色は村の守護者のカラーだそうだ。

 効果として電撃の耐性が上がるという事だが、ネイトさん達の住む村はカミナリがよく落ちるのだろうか?

 符呪布は込めるまじないによって様々な効果がありとても便利な物だが、入手が困難な為、みんなで少量を分け合っているそうだ。

 「今日はお疲れのようですし、先に休まれたらいかがですか?顔色悪いですよ?」

 そして、テントのようなものを用意して貰いそこで休むことになった。

 しかしそのまま休む訳にはいかない。

 なんとか神様と交信して現状を少しでも把握しなくては!

 「むう~、神様、神様応答してください」

 手を合わせ心の中で必死に交信を試みる。

 「神様~神様~聞こえますか~~」

 疲れていたせいかそのまま眠ってしまいました……

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