激突の大地
鋭い衝撃が身体中を駆け巡る。
薄ぼんやりと視界が戻ってくると、目の前に腕っぽい物が転がっている。
体中を激痛が走る。
目の前に転がる腕には、見覚えのある火傷の痕がある。
……ありゃおれの腕だ……
んっ?
他にも沢山人(肉片)が転がっているような?
いかん、意識が朦朧としてきた。
これは死んでしまうかもしれない。
どこからか声がする。
「ごめんなさい!あなたに浮遊能力が無いことを考えていませんでした。本来ならばあなたを送り届けて終いなのですが、私の失敗です。特別にあなたの肉体を再生しましょう」
遥か上空に神様が浮かんでいる。
あんな所から声が届くなんて、テレパシーってヤツか?
あたりがだんだん暗くなっていく……
神様!は、早くしないと死んでしまいます!
グジュグジュと蠢きながらおれの肉体が再生されていく。
それを遠巻きに見つめている人達がいる。
肉片が散らばる中から立ち上がると、一人の男が警戒心も露わに近づいて来た。
そしてマントのような羽織るものを渡しつつ、
「あ、あなたは神人ですか?」
と、尋ねてきた。
手渡されたマントのようなものを受け取りつつ自分を見ると、なんと全裸でした!
どうやら服までは付いてこなかったようだ。
いそいそとマントを羽織りつつ辺りを見回すと、みんなクスクス笑ってるではないか。
元気なときは三倍だからね!
それはそうと何と答えたものか。
「半分、そうみたいです」
男、というかまだ少年だろうか?彼はその答えに少し安心したようだ。
「そうですか。危ないところをありがとうございました。」
へっ?
何が何だかさっぱり分かりません。
話せる範囲ではあるが、自己紹介などをお互いにしあった。
彼の名はフロイと言うらしい。
五十人程で構成されるキャラバン隊の隊長の息子だそうだ。
年の頃、十二、三歳位だろうか?見た目よりも随分としっかりしている。
地質調査のような事をしながら旅をしている、ということだったが全てを語れない理由があるのかどうも歯切れが悪い。
調査中に現地の人間と遭遇した際、問答無用で襲ってきたらしい。
相手はとても強く、あわや全滅の憂き目に会っているところ、おれが空から降ってきて幹部っぽい人達をミンチにしたということだ。
統制を失った彼らはちりじりに逃げていったそうだ。
彼らを先導していたのも神人だったようで、異常な肉体再生を見せたおれの事も神人だと思い警戒したのだという。
「ところで隊長は今はどちらに?」
辺りにそれらしい人物がいない事に疑問を感じ訊ねた。
するとフロイは涙を浮かべながら答えた。
「父は先程の奴等から僕達を逃がす為に……」
えっ……
「辛いことを聞いてしまった。すまない」
「いえ、大丈夫です。あのままあなたが身を挺して助けてくれなければ、我々は全滅していました。本当にありがとうございました」
うん。
ただ落ちただけ。
自分の事はそもそもこの世界の事など何も判らない状態で説明しようもなく、遠い土地から異変を調べるべくこの地へ赴いた、とだけ伝えた。
彼らは何か訳ありな雰囲気を感じ取り、それ以上聞かれることはなかった。
「あの、レイさんはこれからどうするつもりですか?」
うーん、そうだな。
調査団ということなら色々知識が豊富そうだし、得られる情報も多そうだ。
できれば彼らと行動を共にしたいのだが……
「もし宜しければ、我々とご一緒しませんか?」
えっ?キミ、エスパー?
「よろこんで。こんごともよろしく」