表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/51

最高についてない日


 まだジリジリと蒸し暑い夏の日。

 僅かに日陰になっている公園のベンチに私は寝そべっていた。

 疲れてしまったのだ、人生に。

 繰り返す日曜日に。



 そして、突然歌い出す。

「日曜日に市場に出かけ~、糸と麻を買ってきた。月曜日にお風呂を焚いて、火曜日にお風呂に入り~、水曜日に友達が来て~、木曜日に送って行った~。金曜日は糸まきもせず、土曜日はおしゃべりばかり~。友達よこれが一週間の仕事です~」

 

 まだ月曜日だというのに、私の心は完全に折れてしまっていた。



 それもこれも冷蔵庫の中に明日せっかく食べようと思っていたシュークリームがなくなっていたからだ。その時、私は完全に日曜だということを失念していたのだ。いつもそうだ。一週間がリセットされる。だが、冷蔵庫の中身までリセットすることないと思う。

「はぁ」

お隣のベンチに座っている男の人の溜息だ。顔色は暗い。私と同じように人生に疲れてしまったのではないかとこっこり覗きみる。

あ、ヤバイ。

目が合ってしまった。ヤバイ人ではないといいが……。

かくゆう私もヤバイ人なのだが。

「お、おはようございます」

「お、おはよう」

「ど、どうされたんですか?溜息なんて」

 聞いてしまった。

 ああ、変な人だと思われてしまう。

 ああ、でも溜息なんて吐くくらいなんだから幸せではないはず。

 私はこの世界の不幸せを共有したいと思っていた。

 ジッと男性は私の顔を見る。

「髪の色がちょっこと愛しのエリーによくにているな。いいだろう。聞かせてやろう、俺とエリーのドキドキ出会い編から悲劇引き裂かれる恋人達のメモリーをな」

「えっ??????」

 失恋だったのか。

そして始まるこの男の三時間にもおよぶ壮大な失恋ストーリー。

好奇心に負けて聞くんじゃなかった。



そして、時は過ぎ太陽はもう真上だ。

「ありがとう。おかげですきっきりして、元気でたぜ」

 三時間も喋りまくればすっきりもしますわね。

「かわりにメロンパンやる。俺の朝ごはんでよかったら」

「あ、ありがとうごさいます」

「悩みがあるんだったら、今度は俺が聞いてやるからな」

「あなたは??」

「俺の名はリョウタ。リョウたんと呼んでくれ!」

 と、言われても。

「じゃあ、リョウたんさん。明日の朝ごはんがもう思いつかなくて、それくらいの悩みです」

「そうか。じゃあ、サンドイッチにしよう。その、君??えっと?」

「リカコです」

「リカちゃんもそうしなよ。野菜をたくさん挟むと旨いぞ」

 おっ、それはいいかもしれない。



 


 月曜日はメロンパン。

 火曜日はサンドイッチ。



 ついていない日だったが、いいこともあった。


 

 水曜日こそ探偵にしよう。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ