最高についてない日
まだジリジリと蒸し暑い夏の日。
僅かに日陰になっている公園のベンチに私は寝そべっていた。
疲れてしまったのだ、人生に。
繰り返す日曜日に。
そして、突然歌い出す。
「日曜日に市場に出かけ~、糸と麻を買ってきた。月曜日にお風呂を焚いて、火曜日にお風呂に入り~、水曜日に友達が来て~、木曜日に送って行った~。金曜日は糸まきもせず、土曜日はおしゃべりばかり~。友達よこれが一週間の仕事です~」
まだ月曜日だというのに、私の心は完全に折れてしまっていた。
それもこれも冷蔵庫の中に明日せっかく食べようと思っていたシュークリームがなくなっていたからだ。その時、私は完全に日曜だということを失念していたのだ。いつもそうだ。一週間がリセットされる。だが、冷蔵庫の中身までリセットすることないと思う。
「はぁ」
お隣のベンチに座っている男の人の溜息だ。顔色は暗い。私と同じように人生に疲れてしまったのではないかとこっこり覗きみる。
あ、ヤバイ。
目が合ってしまった。ヤバイ人ではないといいが……。
かくゆう私もヤバイ人なのだが。
「お、おはようございます」
「お、おはよう」
「ど、どうされたんですか?溜息なんて」
聞いてしまった。
ああ、変な人だと思われてしまう。
ああ、でも溜息なんて吐くくらいなんだから幸せではないはず。
私はこの世界の不幸せを共有したいと思っていた。
ジッと男性は私の顔を見る。
「髪の色がちょっこと愛しのエリーによくにているな。いいだろう。聞かせてやろう、俺とエリーのドキドキ出会い編から悲劇引き裂かれる恋人達のメモリーをな」
「えっ??????」
失恋だったのか。
そして始まるこの男の三時間にもおよぶ壮大な失恋ストーリー。
好奇心に負けて聞くんじゃなかった。
そして、時は過ぎ太陽はもう真上だ。
「ありがとう。おかげですきっきりして、元気でたぜ」
三時間も喋りまくればすっきりもしますわね。
「かわりにメロンパンやる。俺の朝ごはんでよかったら」
「あ、ありがとうごさいます」
「悩みがあるんだったら、今度は俺が聞いてやるからな」
「あなたは??」
「俺の名はリョウタ。リョウたんと呼んでくれ!」
と、言われても。
「じゃあ、リョウたんさん。明日の朝ごはんがもう思いつかなくて、それくらいの悩みです」
「そうか。じゃあ、サンドイッチにしよう。その、君??えっと?」
「リカコです」
「リカちゃんもそうしなよ。野菜をたくさん挟むと旨いぞ」
おっ、それはいいかもしれない。
月曜日はメロンパン。
火曜日はサンドイッチ。
ついていない日だったが、いいこともあった。
水曜日こそ探偵にしよう。