273972年と220日
いつから月曜日から日曜日まで繰り返しているか知っているだろうか。
はじめての繰り返したその日から私は数え始めた。
呆けたように彼女達は私を見た。
「馬鹿いうんじゃないわよ!あんた人間でしょ」
「ええ、そうよ。人間よ。あなた達みたいな生粋の魔女ではないわ。でも私は悪夢の日曜日を乗り越えた。その時に私は生れたの。因果律というものかしら?」
「そんなわけない!!人間は魔女にはなれない」
青い目の魔女は私を睨む。
「そうね」
魔女になったというよりは、私の中に魔女としての自分が目覚めたような感覚で、人間としての高丘リカコもいるんだ。なんか難しいな。
くるりと私は満月の魔女を見た。
「私がどのくらい繰り返したと思う?」
風に髪が揺れる。
「えっ?えっと」
少し慌てて考えて様子だった。
「私は繰り返してるのを知っていた。でも私はその時間に囚われていなかったので、正確にはわからない。だいたい八十年くらいかしら?」
そうそう、だからもうおばあちゃんだ。
「ざんねんでした」
私は笑った。
「なによ、ちょっとくらい長生きしたってどうだってのよ。私はあんたより」
その言葉を私は遮る。
「273972年と220日」
まだ若い青い目の魔女を睨みつける。
「私はそれだけ生きた」
もはや人間ではなく化け物だった。
器はあれど心のない人間。
でも、小さなきっかけで出会い、悩み、会話して人と繋がった。
小さな奇跡が積み重なった。
私は人の心を取り戻した。
「いますぐこの町から出て行きなさい」
「あなたに私は殺せない。二度とこの町と満月の魔女に関わるな」
ウックッと悔しそうにしながら青い目の魔女は立ち上がり、よたよたと逃げるようにその場を後にした。
「ふぅ」
驚いた表情で満月の魔女は私を見てる。
「リカコあなた……」
「ごめんなさい。とても長い間苦してたのね」
私は魔女の手を取った。
「いいの。もういいの。有難う。もう顔を上げて」
「私は一夜限りの魔女だから、みんなには内緒ね。この町の魔女はあなたよ。もう遅いから帰りましょう」
手を引っ張って、彼女を立たせる。
そう、もう全部終わったのだ。
「明日、月曜日に十三夜月で会いましょう」