二人の魔女
暗闇がずっと広がっていく、あるのは細い星の光だけ。
風と木々が微かに歌い私はその場所に立っていた。
そして青い目の魔女がゆっくり私に近づいてくる。
「ゲームは私の勝ちよ。高丘リカコは生き延びた」
「生き延びた?生かされたの間違いじゃない?」
クックと魔女は笑う。
「それくらいいいでしょ。運も実力のうちよ」
「運ねぇ、あなた達が守ったんでしょ?知ってるわよ、あなたが護符を使ったこともね」
「それでも日曜は乗り切った。もう見逃して」
魔女の青い目は笑っていない。
「ねぇ、まだ日曜日は終わってないの」
白い手がスルスルと私の首に伸びてきた。
「まだ、そうね、零時をまわっていないわ。そうだ、面白いことを思いついた。これから、そのリカコって子を殺しにいけばいいんだわ。ゲームは私の勝ちね。ねぇ、そうでしょ?満月の魔女さん」
冷たい青い目を鋭く向けてくる。
「この性悪魔女」
グッと首筋を掴まれ高く宙に吊るされる。
「馬鹿いえよ、魔女ってもんはそういうもんだろ」
苦しくて、短い足をジタバタさせる。
「かっ、はっ、離して」
力任せに地面にたたきつけられる。
そして、すごい力で頭を足で踏みつけられる。
「い、痛い」
楽しそうに魔女はグリグリと力を加えてくる。
そのまま、私の前髪を引っ掴んできた。
「これが、満月の魔女?ちょっと弱すぎじゃない?魔力も弱けりゃ、力も弱い。これはもう、引退した方がいいわよ?古い魔女は時代遅れ。この町は私が貰ってあげる」
「う、嘘つき。あなた最初から約束守る気なんてなかったのね。この町の魔女の座が欲しかっただけじゃない。あなたも魔女の端くれなら約束を守りなさい」
「あ~、あ~、これだから古参の魔女は大嫌い。歴史や習わし、規律を重んじる。これからは新しい魔女達の時代よ。お前なんか灰になって消えちまいな」
私にはこの魔女を止めるすべはない。
「わかった、わかったわ。そうすればいい。魔女の座はあなたのものよ。でもリカコは助けてあげて。それくらいいいでしょう?」
「い、や、よ。だって私は人間の絶望に歪む顔が大好きだもの」
私は体が熱くなった。
悔しくて。悔しくて。レイカちゃんの悲しむ顔が浮かんだから。
「うっ」
「ああ、その顔。その悔しそうな表情も大好物」
冷たい魔女の声だけがあたりに響きわたる。
「ねぇ、ちょっと」
突然、その場にはにつかわしくない声が聞こえた。
聞き覚えのある声だった。
「その汚い足をどけてくれない?」
歪んだ視界でその人物をとらえる。
「なんで此処に、あなたが?」
そこには澄ました顔をして、高丘リカコが立っていた。
「聞こえなかったかな?その足をどけろって言ったんだけど」




