ミッションインポッシブル
月曜日。
ランチも終わり、ゆっくりとした時間が流れ出した午後。アキラはメニユーの看板を下げるべく表に出る。いつもを同じなんの変哲もない日常だ。
「今日もお客さんはぼちぼちだったな。一体どうやってなりたっているんだこの店は」
そう、いつもとかわらない日常。
スルッといきなり人の手が伸びてきて口を塞がれる。
「うっ」
は?何?
「黙って。騒がない」
俺は後ろを向いたままコクコクと頷く。
えっ?何?強盗?この店お金ないんだけど?
「そのまま、店の看板を閉店にしてゆっくり歩いて」
言われた通りにして、俺は引きずられるように店の中に入っていく。
「ふぃ~。ごめんなさい。それと、はじめまして月曜日の当麻アキラくん」
その女性は深々と頭を下げて謝った。柔らかい髪の優しそうな女性だった。突きつけられた、当初ナイフだと思っていたものは、ただの千歳飴だっただった。
「あの?なぜ千歳飴を?」
「ああ、これ?鶴は千年、亀は万年という長寿の象徴でたいへんめでたい縁起物なのよ。アキラくんもどうぞ。長生きできるわよ」
俺は何故か千歳飴を渡される。
「いや、そうではなくて」
「わかってるわよ。商店街の駄菓子屋にダイブしたときに弁償したのよ」
「なぜ、ダイブを?」
よく見ればこの女性、ところどころに傷があり、頭からは軽く血が滲んでいた。
「血が出てますよ」
「ああ、さっき野犬の群れと戦ったときかな?実は私命を狙われていてね」
「えっ?」
日本はいつからそんな危険な国に?
「だから、助けて欲しいの。この十三夜月のオーナに仕事を依頼するわ」
「あっ、うちは。まぁ、裏で探偵家業もやってますが裏でスナイパーとかやってるわけではないので、警察に」
見る見る女性の顔が暗くなる。
「いや、マジでマジで助けて下さい。探偵の方でいいから。スナイパーには私がなるから。こんなの、ほんとに一人では無理ゲーだから。店の皿洗いでもなんでもするから。お金もローン組むから。見捨てないで。これ月曜日で死んでしまうから!日曜日とか生きてないから!!」
まさに必死だった。
「わ、わかりました。店長に相談してみますよ」
悪い人ではなさそうだし。
「それにはおよばない」
女性の顔がみるみる明るくなる。
「涙をお拭き子猫ちゃん。ファションリーダーとは仮の姿。この、ご町内のランボーことイケメンメガネとは私のこと。その依頼受けるよ、リカコさん」
「め、メガネ様!!!!!」
いつもの日常が怪事件に巻き込まれた瞬間だった。
そして、お前はいつランボーになったんだ?