この町の小さな魔女
条件クリアは日曜日に高丘リカコが死なないとこ。
みんながよいと思える結末なんて結局はない。
私はレイコの友達になった。
だからレイコが悲しいと私も悲しい。
できることなら高丘リカコを生かしてあげたい。
でも、それは出来ない。
なぜなら私はこの町の満月の魔女。
願いはもう叶えた。使える魔法はもうない。
唯一の方法で魔法を入れていた小瓶を壊して時間を再び流れさせた。
魔法の残り香に頼ったギリギリグレーな方法。
終わらない物語を結末に向けて動かすの。
それがたとえ惨劇を招いたとしても、これ以上の好機はもうない。
風はただ静かにこだまする。
「あなたはこの町の魔女じゃない。口を出さないで」
私の声だけが耳に聞こえる。
木々の音と鴉の声が反響する。
他の魔女達がこの繰り返しの町を面白がって寄って来たのだ。
「出て行って!」
ザワザワと草木が揺れ、だんだん静寂を取り戻す。
「時間は正常に戻す。この町の魔女は私一人、あなた達の縄張りじゃない」
すると一人の魔女がケタケタ笑いながら突然現れた。
風格のある容姿だった。
「あんたがこの町の魔女ね。どうゆうわけでこの町の時間を繰り返していたわけよ?」
「いろいろと事情があるのよ。でももう元通りよ。帰って」
「ちんちくりんが偉そうに。ん~っ、その生きながらえて人間の女はちゃんと元通り死んだのかしら?これから?」
「関係ないでしょ。彼女は死のうと生きようよと。それは時の運よ」
「あら?あなたその人間が死ななければいいなんて思ってるの?馬鹿じゃないの?この町の魔女はずいぶん甘いこと。そんな甘ちゃんな魔女にはこの町は勿体ないわ。私が貰ってあげようか?」
「この町の魔女は私だ」
私の本当の姿は威厳の欠片もない。今はただ、レイコの姿で出来る限りの虚勢を張る。
「ねぇ、今の時代二人、三人いるところもいれば。統治者の入れ替えもわるのよ知らないの?」
冷たい青い目が私を突き刺す。
「いいじゃない。ここは小さな町よ、それくらい私が貰ったって」
カッとなって私は怒鳴る。
「でも私は欲張りだからこの町も欲しいなぁ。あなたならわかるでしょ?どっちが強いか?嫌なら力ずくでもらうけど?」
「よしてよ」
私は非力な声で唸った。
なぜなら私は満月の魔女。
お菓子と紅茶が大好きな、女の子の願いごとを叶えるのが大好きな。
小さな弱い魔女だから。