硝子の心
ずぶ濡れの姿でアキラは帰ってきた。
「おつかれッス。その様子だと日記は返しちゃったか?」
「正解」
タオルを放り投げながらリョウたんは苦笑いする。
「まぁ、よかったんじゃないか」
「どこがだよ」
俺は髪を拭きながら項垂れる。
「だって、もう少し悩めるじゃん」
「もう土曜日だけどな」
「まだ一日あるって。リカちゃんに内緒で俺達だけで頑張ってみるか」
「だって、もう時間が……」
その時、店の扉がバーンと効果音でもつきそうな勢いで開いた。
「まだ一日あるわよ諦めないで」
そこにはすごい剣幕で立っているリカコさんがいた。
そしてずぶ濡れのまま店に入って来た。
「ど、どうしたのリカちゃん?帰ったんじゃ?」
「というか、もう諦めたんじゃなかったんですか?」
アキラは思わず聞いてしまった。
「諦めたわよ。諦めるほかないじゃない?でもね!ほら、もう死ねよって言われて、はいそうですかって誰が納得すると思うの!!!!!あんの、悪魔め!!!!!!じゃなかった魔女め、許さん!!!!!!絶対に生き延びてやる!!!!!!」
「リカちゃんやる気がもどったな」
「えっ、ああ」
と、いうかよかったのかこれ?
「これじゃあ、メガネ様とハッピーライフを迎えることなく死んでしまうじゃない。あなたたち今日のことを忘れないうちにメモを書いて!!!!貼って!!!!!!レタスのメモの横にでも貼るがいいわ!!!!!!!!!!」
「いいんですか?」
「いい、なりふりかまってられないの!!!!!」
リカコさんは吠えた。
「満月の魔女め。硝子のハートをもてあそんで許さないわ。防弾硝子だけど」
「この迷宮入りの事件解決するわ!!!!」
ビシッとポーズを決めてリカコさんが宣言する。
このポージングなんかインテリメガネに似てるな。
「よっ、リカちゃんかっこいい」
「俺もこの事件が終わったらデイジーと結婚するぜ!!!!」
え、デイジーって誰?????
その時、扉がバーンと開いた。
「その事件、この名探偵がスタイリッシュに決めるぜ!!!!」
出た。インテリメガネ。
というか何を決めるんだ。
「メガネ様!!」
「リーダー!!」
なんだこのテンション。
「みんなで夕日に向かって走ろうぜ!!!!!」
雨だぞ。
なんか久々に殴りたいこの笑顔。