探偵あらわる
金曜日、俺はいつものエプロンを脱ぎ捨て、あんぱんと牛乳を持って聞き込み調査をしていた。
探偵、当麻アキラの爆誕である。
張り込みること数時間。
どうやらこの町には学校の七不思議があるということだ。つまり定着しているのだ。もはや、土地柄の独特の伝承のようだった。
もちろん俺も子供の頃から知っている。ただ大人になれば、気にも留めないのでこんなことにならなければ、思い出しもしない。俺も部分的には忘れてしまっているが、この七番目「満月の魔女」だけは覚えている。午前中に同級生、知人、親、その他諸々調べたが七不思議の答えはバラバラ。
だが、この満月の魔女のことは口を揃えて覚えていると言う。不思議である。
勿論、俺もその一人なんだが……。
この魔女はうまく呼び出せば、三つの願いごとを叶えてくれるという。
その代わりに、一つの願いを要求してくる。たとえ最後に魂をよこせと言われても、一つの願いを残していれば、退けることができるだろう。強欲な人間でない限りは助かるということだ。子供の心に面白そうと思って、子供時代にあれこれ調べたり、試したがうまくいかなかった。運なのか、運命なのか?あいにくと、幼い俺の前に魔女が現れることはなく、小学生だった俺も大人になり今の今ので忘れてしまっていたのだ。
調べた結果。
「図書館、甘いもの、本、満月の夜。池に映る場所、対象は少女」がキーワードらしい。
どうやら噂、占いの類は男よりも女の方が得意分野らしいな。
「対象は少女って……」
じゃあ、俺には逆立ちしたって無理だったろうが!!!
かつての少女達の中には何十年かに一度くらいは願いがなかった者がいたのだろう。でなければ、こうも脈々と語り継がれるわけがない。
小学校の女の子にも聞いてみたいのだが、このご時世である。事案になっら目も当てられない。
「しかたがない、小学校の頃の恩師を訪ねてみるか」
学校に向けて、足早にアキラは歩き出す。
恩師に無理を言って、臨時の図書委員となり図書館を調べさせてもらった。勿論この後に、図書館の掃除をする約束でだ。
まだまばらに子供達がいるが、もうすぐ閉館という時間なので多めに見てもらったのだ。俺は昔の優等生だった自分に感謝している。
子供達のひそひそ話が聞こえるた。
俺はカウンターで身を潜めて作業をする。
「魔女の噂聞いた~?」
「聞いたよ~」
「あれって、三年四組の女の子が呼び出したんだって」
「え~、嘘~?」
「だって、あの子のうち急にお金持ちになって家族が仲良くなったじゃない?それによ、急に同世代の男の子にモテるようになったじゃない?そんなの急におかしいわよ!!!!」
「たまたまじゃないの?」
「あのモテ方異常よ。魔法にでもかかったみたい」
「じゃあ、魔女呼び出せたのかな。私もチャレンジしたのに~。い~な」
「それじゃ、本当かどうか今度聞いてみよう。えっと、四組の誰って?」
「三島さんよ。名前は、ほら、なんとかレイナ?レイカ?そうだわ、レイカ!!!」
キャイキャイ話ながら小学生は去っていく。
三島レイカ???
なんかどこかで聞いたことのある名前だなと俺はぼんやり思った。