それは変という名の
金曜日、私は学校そばのいつもの階段でお姉ちゃんを待っていた。
お姉ちゃんが来るかこないかはわからなかった。
私は、私の日記を月曜に見てすべてを理解する。しかし、私と魔女だけが知っている秘密だ。だから、お姉ちゃんの行動は常にランダムである。
そう、お姉ちゃんの中ではすでに、私と一週間を過ごした日々が何度かあったのかもしれない。だからこそ、お姉ちゃんがこの日この時間にこの私に会いに来ることはわからなかった。
日記に僅かながら努力を積み重ね情報を書き込んだ。何かの助けになればと思って。それでも、私は日曜の夜にはまた忘れてしまい、日記を見て月曜の朝に絶望する。
いつか満月の魔女が私の日記を取り上げてしまえば、月曜の朝に絶望することすら忘れてしまうだろう。
魔女が教えてくれたのは、口を滑らせたからだ。気まぐれで、日記を捨ててしまうことだってありえる。だからこそ魔女の気が変わらないうちになんとかしなければいけない。
レイカは、深い溜息をついていた。
突然、頭の上から陽気な声がする。
「ノンノンノンノン。レイカちゃん、幸せが逃げちゃうよ」
「えっ?」
そこには明るいお姉ちゃんの姿があった。何故かテンションがMAXで。
「あ、あのお姉ちゃん?それより、探偵さんには会えた?信じてもらえそう?」
「そうね、もう少しかも。でもね、レイカちゃん。もういいの?」
「えっ?もういいって?」
レイカは内心焦った。
彼女の心が壊れてしまったと思ったから。
「私ね、もう諦めるわ」
「だってこんなことをやってもきりがない。永遠に繰り返される。無駄なのよ。小さなことに一喜一憂して、でも最後は結局同じ最後だからね。そんなことは、もう何十も繰り返したの。ここからは、出られない。出られないなら、私はこの運命を受け入れる。このグルグル回る輪の中にいるの」
お姉ちゃんは真剣な様子だった。
「そう、きっと私がこの繰り返しの世界にいるのは、恋をするためだったのよ!!!」
「はっ?」
よく聞こえなかった。
「えっ?お姉ちゃん何て?」
「そう、すべてメガネ様のため。すべては愛しいメガネ様に会う盛大な前振りだったのよ!!!」
「お姉ちゃん???」
「と、言うことだからごめんね。せっかく協力してくれたのに。私、愛に生きるわ」
「ま、まって、それだとたとえ好きな人と結ばれても先に進むこともできずに、また月曜の朝に戻ってしまうわ。そうでしょ?お姉ちゃん?????」
「そうよ。でもそれは、恋を知る前までの私。今ならわかる。時なんてもう止まってしまえばいい。メガネ様と愛のメモリーを永遠に重ねるのよ。そう、これこそが愛の力!!!!!!!!!」
「えっ、えっ?駄目だよ。それは、変だよ」
レイカは思った。
ついにお姉ちゃんが壊れてしまったと。
「ノンノンノンノン!!!レイカちゃん、愛だよ。それを人は愛と呼ぶのよ!!!!!」
「変だよ、お姉ちゃん……」
小さくそう呟き、レイカは落胆する。
早く、早く、なんとかしなければ!!!!!!
レイカは心に固く誓った。
お姉ちゃんが変になるまえに。