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リカコの場合


 

 月曜日。

 ハムエッグを食べた。

 とろんとろりんとした半熟の卵の上にブラックペッパーを散らす。

 すごい、美味しそう。

 トーストは薄切りが好き。こんがり焼き目をつけてカリッと頂く。

 ホットコーヒーも淹れてだ。



 火曜日は、ゆで卵。

 シンプルにコーヒーとグレープフルーツをつけおしゃれにしてみる。

 しまった。塩がない。

 でも大丈夫。私はマヨネーズも好きだから。



 水曜日は、フレンチトースト。

 賞味期限が今日までの食パンを牛乳と卵と砂糖を入れた液にしみこませる。

 バターのかわりにマーガリンを滑らせたフライパンの上で焼く。

 いい匂い。

 あとは、ハチミツがあれば最高なのに。


 

 木曜日は、なんてこった金欠病。

 しかしあわてることなかれ。私にはシリアルがある。牛乳をかけよう。

 冷蔵庫の奥にウィンナーが三本入った袋を発見。ボイルしよう。


 

 金曜は、おにぎりにしよう。

 かつおぶしに醤油を垂らして具にしょう。卵焼きとお味噌汁もつけよう。

 おっと、豪華じゃないか。



 土曜日は、コンビニのパンとカフェオレ。

 もちろんカフェオレは作りましたよ。

 私だってコンビニですませたくなる日もある。



 日曜日は、ホットケーキ。

 決めていたの。今日はホットケーキ。

 昨日はスーパでハチミツとお高いバターも買いました。

 カフェで食べると何時間も待って、ドリンクとセットにするといい値段のやつ。

 あ、それはパンケーキか。






 私は一週間分の仕事を終え、フローリングに転がった。

 何にもない天井を見つめる。

「今度こそ頼むぞ」

 もはや何回目かわからない呟きだった。



 なんだかんだで夜になり、気がついたら朝だった。

 カーテンを開け。朝のありがたい日差しを部屋の中にいれる。

 顔を洗い、その足で祈るようにテレビをつける。


 顔なじみのニュースキャスターがニュースを読み上げている。

「皆さんおはようございます。八月一日月曜日です。それでは……」

 

 最後まで聞くまでもない。

 私はテレビのチャンネルを消した。

 いっそのこと、このアパート。いや、地球ごと消してしまいたいくらいだ。


 そうなのだ。

 ご存知かもしれないが。私、高丘リカコはこの一週間を繰り返しているのだ。けして、私が無職なので同じような毎日を繰り返しているのではない。正直に言うと最初は気づかなった。無職だから曜日感覚がなかったのだ。しかし、さすがの私もついに気が付いた。

 

 あれ、夏が終わらないぞと。


 いつまでたっても繰り返す一週間。

 終わらない夏。

 特にこの世界の危機を救うために過去に戻ったとかではない。意味不明に繰り返す平凡すぎる日常。

 いままさに、私の心にはいろんなものが渦巻いていた。

 さすがに何かしなければいけないと。

 警察か。いや、不審者として私が捕まってしまうかもしれない。

 やめよう。

「あっ、そうだ探偵がいいわ」

 私の頭の中には唐突に二時間ドラマの探偵が浮かんだ。



 



 


 月曜日。


 カロリーメイトチョコ味を詰め込んだ鞄を斜めにひっかけて、靴を履き、足早に玄関の扉を開ける。

 今日は探偵にしよう。



 その日、私は人知れず最初の一歩を踏み出したのだった。








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