喫茶十三夜月にて
火曜の朝は厚切りトースト。バターをたっぷりのせて、コーヒーも用意した。
パラパラッとシュガーをかけるとさらに美味しい。
日課である朝食を満喫してリカコは荷物をまとめた。
本日は出かける予定があるのだ。
玄関を開けて肌に触れる空気は、暖かいというより暑かった。
夏だしな。
「冬はいつになったら来るのやら」
この繰り返しの日々に終わりはくるのだろうか?そんなことを思いながら、玄関の鍵を閉め私は思う。
学校近くの階段で私はケンケンパをしながら、とある人物を待っていた。
昨日お友達になったレイカちゃんの事である。ほんとはもっと早くに声をかけるべきだったのだが、無職ゆえ事案になることを心配して関わることをしてこなかった。少し話しただけだが、レイカちゃんは頭が良い。ふわっとした天使のような容姿をしながら、とてもテキパキした印象だった。そのレイカちゃんからの伝言で、学校の昼休みに来てほしいと言われたのだ。
時間になるとレイカちゃんは現れメモを一枚私に渡した。
「まだ調べてる途中なんだけど、今日はピアノのレッスンがあるからいつもの場所にはいけないの」
昨日はピアノのお教室さぼっちゃったとペロッっと舌を出す。
「もう目星はついてるから安心してね。じゃあ、またねお姉ちゃん」
そう言ってレイカちゃんは学校に戻っていった。
白い一枚のメモだけが私の手に残っていた。
いつもは火曜日もレイカちゃんとお菓子を食べていた。どうやら今週は、レイカちゃんに話掛けたことにより大幅に世界線が変わってしまったようだった。
メモを広げてみる。そこにはある店の名前と住所が書かれていた。
「喫茶十三夜月」
そこにはそう書かれていた。
「近所じゃない……。灯台下暗しとはこのことかもしれない」
レイカちゃんも今日はもうここには来ない。
なら、このヒントを頼りに行ってみよう。
お腹もそろそろ空いてきた。
レイカちゃんの書いてくれたメモには可愛いお月さまと猫ちゃんの絵が書いてあって、ちょっとだけ元気が出た。