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後日談Ⅲ

 

「本当に、変わった子でした」


 ぽつりと落とされた言葉にアレクも苦笑を返すばかり。とんでもない行動をおこす平民上がりの問題児かと思えば、王族や貴族の子息ばかりでなく才能ある平民までたらしこむ悪女。全く違う顔が矛盾なく存在した少女はもはや表舞台に戻ってくることは無いだろう。


「元王子にはスフィーア領で生涯幽閉されていただくとして、他の方々はどうなさったのですか?」


「あれ? 聞いてない?」


 紅茶を飲みながら足を組む。ルイズが出て行き、完全にリラックスしているのがよく分かる。空になったカップを見たセミョーンがポットを取ろうとしたときにはすでにミーシェが注いでいた。ふっとかすかに歪む口元が優越感を醸し出す。そんな従者たちの攻防を気にすることなく主たちはゆったりと不穏な会話を続けていく。


「とりあえず、元義弟はスフィーア家との縁を完全に絶った上で平民として暮らしていくことになりました。義母は渋ったようですが、父が説得しました。その他の方々は学園を退学されたあとのことは公には存じておりません」


「公には、ね。まぁいいや。宰相家のジェフ・ホーランドは隣国オクターの大学・・に留学したよ」


「オクターの大学といえば近隣でも最高の学術大学ではないですか。入学基準も厳しく、授業難易度も高く、卒業できるのは入学者の半分にも満たないといわれていますよね。よく入学が許可されましたね」


 驚いてはいるが、実はルドヴィカ、この大学の特待生である。であるからこそ、ナナイの学園で受けている授業水準との違いを実感できる。ジェフには入学試験も突破できないだろう。


「一応ギリギリ何とかかろうじて結構危なかったけど運よく試験は合格してるからね。不正じゃないよ。でも講義についていくのは大変だろうね。論述を求められる問題は彼は苦手だから」


 記憶にあるジェフの人となりと報告書が物語る。


「大学を卒業しなければ帰国出来ないと申し渡してあるから留学という名の国外退去といえるかもしれない。本人はすぐに戻る気満々だったからたぶん大学ではなく高等科と勘違いしてたんだろうね。高等科ならわが国からの卒業生もいるし授業水準も学園とさして変わらない。援助も最低限かつ期間限定だ。期間内に卒業できずに退学になったりなんかしたら…。 しかしながら卒業して帰国できたらさぞや優秀な人材になるだろうね」


 なる程とルドヴィカも紅茶を口に含む。温くなったそれが心地よく喉を潤していく。


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