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「呪われたものも混じっているからだ」


 その言葉が発せられるとルイズは左腕をぴんっと延ばしその腕に嵌められているブレスレットが自身より少しでも遠くなるように、またそれを見ないように顔をルドヴィカの腕に摺り寄せた。

 色々・・察したらしいルドヴィカはルイズの腕からブレスレットを外した。ルイズに心配されながらそれをじっと見つめおもむろに自分の腕に嵌めてみる。


「ルドヴィカ様!」


 驚くルイズと周囲の気配に動じることなく嵌め心地を確認し、手首を返して眺め、そして外してハンカチに包んでアレクに差し出す。


「呪いは切れていますね。ですが念のため触れないようにしたほうがよろしいかと思われます」


 ブレスレットはそのままセミョーンが受け取った。


「!? セミョーン! いつの間に?」


「アレク様の側近ですから」


 アンリの指摘に無表情で答え後ろに控えるセミョーン。


「あの呪いの核は桃色の宝石だった。それが壊れたことで効力をなくしたんだろう。あれは強制的に魂離れ・・・・・・・を起こす呪いがかかったものだった。だからそれをつけたルイズ嬢は魂離れを起こし、壊れたことで戻ったのだろう。


 さて、アンリ。お前に問おう。ルイズ嬢をいじめたのは、誰だ?」


「それは、ルドヴィカで…」


「国宝を持ち出し呪いにかけたのは、誰だ?」


「それは…それ、は! リチャードが家族のものは使っても問題ないって言うしデビットが女の子はアクセサリーもらうと喜ぶって言うしジェフが母から嫁に受け継がれる指輪があるって言うしクリスが王国の宝物は素晴らしいものでしょうねって言うから! だから! 皆の意見を取り入れただけだ! 私は! 私は悪くない!! 皆が悪いのだ!!!」




 しんっ




 場が静まり返る。あまりにも子どもじみた言い訳を並べ立てる第2王子に誰も何も言えなくなる。

 興奮したアンリのぜいぜいという呼吸音がやけに響く。


「ルイズなら分かってくれるよね?」


 すがるように向けられた視線を避けるようにルドヴィカの腕に顔を押し付ける。絶対に顔を上げることなど出来ない。

 いつものようににっこり笑ってくれることを期待していたアンリはいつまでたっても固まったままのルイズに憤慨する。


「ルイズ! 私が呼んでいるのになぜ返事をしないのだ! 私が呼んでいるのだぞ! この、私が!! ナナイ王国第2王子たるこのアンリ・ナインの呼び掛けを無視するとは何たる不敬! この場で叩き切ってくれようか!!!」


 びくっと肩を揺らすルイズを隠すようにルドヴィカが抱き寄せる。ますます憤慨し鬼の形相でルドヴィカを睨み付けるアンリ。


 アレクは目を伏せ小さく息を吐き出す。次に目を開けたときにはしっかりとアンリを見据え王太子としての威厳を讃えて言い放つ。


「アンリ・ナイン。国宝詐取により現時点を持って王族たる身分を剥奪する。それに伴い公爵令嬢ルドヴィカ・スフィーアとの婚約は王族側の非として辞退申し上げる。補償に関しては後日スフィーア公爵と話し合いの機会を頂きたい。その他の沙汰は追って伝える。連れて行け」


 その一言で、アレクの護衛たちがアンリを両側から囲み、腕を掴んで連行する。


「あ、兄上! なぜですか! 私は何も悪くない!! 悪いのはあいつらです!! そうだ! ルドヴィカが全て悪いのだ! お前たち早くルドヴィカを捕まえろ!」


 抵抗し、叫びながらアンリは連れて行かれた。アンリの友人兼側近兼取り巻きである生徒会メンバーもまた同様に連行される。共謀がないか、余罪がないか追求するためだろう。呪いはかけられていないにしろ、宝物庫にないものが何点か存在する。もちろんルイズも連れて行かれる。貢ぎ先なのだ。アンリ以外の面々はおとなしく従う。反抗する気力もないのかもしれない。


「ルイズ嬢は先に魔法省へ。長らく魂離れを起こしていたんだ。心身に異常が無いか確認するほうが重要だからね」


 騒ぎの大元がいなくなり、会場は白けた雰囲気になってしまった。

 それを察したアレクはルドヴィカとセミョーンに視線だけで指示を出す。


「我が弟により皆に不快な思いをさせてすまなかった。だが今宵はパーティ。せっかくルドヴィカ・スフィーア嬢が準備してくれたこの素晴らしきパーティを楽しもうではないか!」


 セミョーンが持ってきたグラスを受け取り高らかに掲げて宣言すると同時に中身をあおる。

 それと同時に楽団が音楽を奏で、料理が運ばれてくる。一瞬ざわついた会場も、パーティであることを思い出したように和やかな空気が作り出される。余興が始まり、それに夢中になることで、アンリの起こした一連の騒ぎを一時的に忘れさせることに成功する。

 だが王家の醜聞としてすぐに話が広まることだろう。それを思うと頭が痛い。アレクは眉間を揉みほぐす。


「すまないルドヴィカ。もう私は戻らなくてはならない」


 裏方への指示を出し終わり戻ってきたルドヴィカにアレクは告げる。


「こちらはお任せを」


 優雅な礼は変わることなく、余計な口出しもせずルドヴィカは全ての差配をやりきった。



本編終了。

次回より後日談です。

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