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<途中で痛み止めが切れたらまた転がりまわるのかな?>


 そんな二人を見送りながら今回も計画の失敗を痛感していた。


<階段から落ちても命の危機は感じないのかぁ。でもリチャードが受け止めてくれたから大丈夫だったのかもしれないなぁ>


 今回の作戦は階段から落ちること。主に女子生徒の間で流行っているおまじないを利用したものだった。


『旧校舎の2階から3階に続く西階段に、1箇所だけ違う色の階段があり、そこから飛び降りると恋が叶う』


 というものだ。

 そこでふらついて落ちそうになった令嬢を偶然居合わせた令息が助けたことからお付き合いが始まったという嘘か本当か分からない話が、おまじないの発端だ。階段から飛び降りることが度胸試しになっているのだ。

 西階段の2階の踊り場から3階に向かう下から4段目がその箇所に当たる。

 普段から急いで階段を2~3段飛ばしに上ったり下ったりしている自分にとって、4段目から飛び降りることは難しいことではない。それを知っているルドヴィカも同じ事を思ったようだ。

 そこで、東側の階段の上から5段目の階段も同じように変色していることを利用し、東と西を入れ替えて伝えたのだ。

 これなら「思い違いをしていた」「西だよ聞き間違えたの?」となるだろう。

 実際にルイズ(肉体)が実行するかどうかは分からなかったが、ルイズの身体能力なら簡単だろうと親友ココからの「ルイズもやってみなよ」という一言でやることにしたようだ。(ルドヴィカが直接ルイズに話したわけではなく、女子たちでおしゃべりしている中で話の流れを誘導した。話術すごい)


 もちろんルイズ(肉体)の安全面や魂が戻ったかどうかを確認するために隠れて様子をうかがっていたし、万が一に備えてリチャードに使用した簡易の痛み止めなどではなく、本格的な治癒魔法を使用できるカードも用意していた。


「今回も、ダメでしたか」


 ふうっと浅いため息を吐いて、ルドヴィカは帰路に着いた。








 後日、校医に確認したところによると、リチャードはルドヴィカの見立てどおり軽い捻挫だったようだ。腫れも無くすぐに痛みも引くだろうと特に処置も処方も無く帰されたらしい。


<リチャード。大事無くてよかった。よかったよ。けど…うん。なんっていうか…ねぇ…>


 いかにかっこよく剣を振れるかを追求し、些細な痛みで目に涙を浮かべて転がりまわる姿を知ってしまい、なんとなく評価が下がってしまう。

 他の人に関してもそうだ。


 アンリはカッコイイ王子様だと思っていた。

 ジェフは頭脳明晰なクールな人だと思っていた。

 デビットはフェミニストなイケメンだと思っていた。

 クリスは才能あふれるかわいい男の子だと思っていた。


 一緒にいたときに気がつかなかったのが不思議なくらい残念な姿を見てしまう。いや些細な違和感はあったが、気のせいだと思っていた。見ないふりをしていた。その方が自分も周りもスムーズな関係を築くことが出来たから。

 でも本当の姿を、今まで見ないふりをしてきた隠れた一面を見た今なら、違う関係を築くことが出来るはずだ。

 ルドヴィカに対してもそうだ。アンリの婚約者である彼女のことを表面上でしか知らなかった。いつも不意にどこかに行ってしまうのを、気分で過ごしているものと思っていた。周りに生徒たちが集まるのも、権力を笠に着て作った取り巻きたちだと思っていた。生徒会の仕事に口を出すのは、自分の都合のよいように進めるためだと思っていた。


 全部違っていた。


 全部全部違っていた。


 知ろうとしなかったのだ。知りたくなかったのかもしれない。自分にとって都合のいいことだけ見て、それ以外を見ようとしていなかったのだ。

 こうしてルドヴィカの視点から自分を見ると、いかにふざけていたかがわかる。ダメだったかがわかる。

 分かったところで今のままではどうにもならない。どうにかして身体に戻って、そして変わらなければ。変えなければ。




 でも。



      でも…。



 魂が 長く

     離れて いたから   だろうか。


         最 近、



   時  々 、



         意 

             識    が …

















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