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 傀儡魔術を使用した犯人を捜すことが第一だが、ルイズの魂を取り戻すことも考えていかなければならない、と言い出したのはルドヴィカだ。もともとルイズの身を案じ、その方法を知るためにカニーレに話を持ち出したのだ。犯人が早くつかまれば良いとルドヴィカ自身も含めた魔術師リストを渡しても遅々として進まない。


「ルイズさんの魂を取り戻すために出来ることをしようと思うのです」


<ルドヴィカ様…!>


「んー。まぁそうなんだが…」


 少し目をそらして言いにくそうにしている。小さく息を吐いて視線をルドヴィカに戻す。


「本人に言うのもなんだが婚約者と仲良くしている女のためにそこまでする必要があるのか?」


 純粋な疑問という形で提示される事実。カニーレの問いは心をえぐる。


<そう…ですよね。ルドヴィカ様は私のこと嫌いですよね…>


「確かに婚約者ですが家同士で決められたこと。多少の親愛はありますが恋愛はありません。親愛なるアンリ様が大事になさっているルイズさんを大事にしようと思うのは変ですか?」


 純粋な疑問という形で提示される真実。ルドヴィカにとって当然であるとその澄んだ瞳は語る。


<ルドヴィカ様…!>


 感動のあまり涙が出る。実際に流れることの無い涙で視界がにじむようだ。


「まぁお前がいいならいいんだがな…」


 逆に驚いているカニーレをよそにルドヴィカは言葉を続ける。


「例えるなら弟の恋人という感覚でしょうか。義弟デビットも好いているようですのであながち間違いでもないでしょう」


 そんなことより魂を取り戻す方法をと話を戻す。


「前にも伝えたが魂を取り戻すためには魂を捕らえている器の破壊か生命の危機に陥ったときだ。犯人が見つからない以上器も見つからない。生命の危機もどの程度の危機で戻るのかは分かっていない。ナイフを突きつけられる程度で戻るのか、実際刺されるのか、大量出血しないと戻らないのか、それをしたところで戻らない可能性だってある」


<い、痛いのはイヤデス…>


 刺されて戻ってもそのまま死んでしまいそうだ。


「ですがやってみる価値はあるということですよね?」


<嫌! ルドヴィカ様刺さないで!!>


「何もしないよりはまだマシ、という程度ではあるがな。ナイフを突きつけて生命の危機を感じてもらうくらいのことならやってみて損はない……… いや、あるな」


<そうですよ! うっかりしたら死んじゃいますよ!!>


 何かありますか? と首をかしげるルドヴィカ。


「お前の評判が落ちるだろう」


「評判?」


 何のことか分からないと反対側に首を傾ける。


「公爵令嬢が子爵令嬢にナイフを突きつけるなんてそこにどんな理由があろうとも醜聞以外の何物でもないだろう」


「ああそんなこと」


<そんなことって…>


「私は常に国のため、家のため、未来のために動いています。私の評価など些細なことです」


 そうだ。ルドヴィカ・スフィーアとはこういう人物だ。そうでなければ自分の時間を削って領民のために働き、生徒会の仕事を押し付けられても文句一つ言わず、魔法を教えた生徒が出来るようになれば我が事のように一緒に喜び、その人の本来の能力を引き出す手伝いをしただけだと謙虚に過ごしている。

 女神様か! と思うような、慈愛の精神にあふれている。


 だがカニーレはそうは思わなかったようだ。


「なおさらローを放っておいても国にも家にも影響はないだろう。もしかしたら明日にでも犯人が見つかり魂が戻るかもしれないのだし」


<先生ひどい!>


 呆れた物言いのカニーレに憤る。出来るなら殴りかかりたいが身体が自由にならないので想像の中でぽかぽかたこ殴りにした。


「国のためとは、この国で生きるすべての人のためです。それにクラスメートが最悪死んでしまうかもしれない状況で何もしないわけにはいきません」


 すがすがしいまでの笑顔でルドヴィカが言い切る。


「それに、評判を落とすような状況に陥るようなことになるなどありえません」


 全く同じ笑顔なのになぜか背景が黒く見える。先ほどまではキラキラと輝いていて、なんなら羽も舞っていたはずだ。


 そんなルドヴィカにカニーレも笑顔を向ける。


「さすがはスフィーア公爵令嬢だな。ではよろしく頼む。だがくれぐれも無茶な方法は取ってくれるなよ」


 そう言うとカニーレは去っていった。


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