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ひとりぼっちとゆかいななかま  作者: 陽幸姫~ひこうき~
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どうしてそうなる①

母の友人達は変人です。しかし、生きる術のない私は友人達の手をとりました。

友人は、女性恐怖症の中年男やスキンヘッドのマッチョなオネエ、年齢不詳の金髪老人、唯一真面目な黒人青年等。

変な方たちに囲まれて、私の新しい人生が始まっちょ。あ、私までおかしくなってきたぁ~。


窓から薄陽が差し込む薄暗い部屋。ここが唯一の私の居場所だった。

唇を噛締めてぐっとこらえる。ひとつ、ため息をついて部屋を出る。

ふと、ドアノブを握った手を止めて顔をあげる。

いま微かに母の匂いがした。

振り返って部屋を見渡してから、気のせいかと苦笑いする。

もう匂いの主はいない。

体調が悪いと病院に行った時にはもう手遅れで、

あっけなく母は逝ってしまった。私を残して。

家賃を払えない者を置いてくれるほど世間は甘くない。

身の回りの物をカバンに詰め込んでドアを開ける。






「ここマリーの家だよね?君は・・マリーの・・息子?」


部屋を出たところで数人の男にいきなり囲まれる。

マリーは母の名前だし、確かに私はボーイッシュではある。

ショートカットでTシャツにハーフデニム、

だからよく男の子に間違われる。

だがしかし、

息子では断じてない。性別は女である。

息子ではないが、こんなタイミングで面倒事は嫌なので

下を向いたまま黙って通り過ぎようとした。


「おい、おい、ボーズに言ってるんだぞ」


マッチョな男に腕を掴まれた。私は驚いて


「離せよ!マリーなんて知らねえよ」


咄嗟に掴まれた腕を振りほどいて男達に怒鳴る。


「でもここはマリーの家だろう?」


そう言いながら、中年の男が部屋の中を覗き込む。


「だったら何だよ」


がらんどうの部屋を見られたくなくて

後ろ手にドアを閉める。人と話すのは苦手だ。

その場から逃げるべく虚勢をはる。

男たちを押しのけようとすると後ろから初老の男が出てきた。


「少年。驚かして悪かったのう。突然の訪問を許してほしい」


そう言ってセンスよくまとめられた小さな花束を差し出す。


「みんなマリーの友人なんじゃ。訃報を聞いてきた。 

 せめて花くらい手向けさせてはくれまいかのう」


深い皺が幾筋も刻まれた人の良さそうな面差しに私は面食らった。


動揺を悟られたくなくて俯いたまま黙って首を横に振る。

私の不貞腐れた態度が気に入らなかったのか一緒にいた黒人の男が


「何だよ!お前身内なんだろ!マリーの為に来たのに追い返すのかよ!」


初老の男から花束をもぎ取ってこちらに押しつける。

私は咄嗟にそれを払いのけてしまった。

花束は幾枚かの花びらを散らしながら床に落ちた。

それはスローモーションのように映る。


「おい、人の好意に対してその態度はなんだ!」


マッチョな男は私の態度に怒りを露わにしながら手首を掴む。

怒って当然だろう。弔問に来た先でこの仕打ちでは誰でも怒る。

でもどうしても花を受け取る様な気持ちにはなれなかった。今は。

驚きと同時に色んな感情が混ざり合って、また声を荒げる。


「離せよ馬鹿野郎!他人に何がわかるってんだ!花なんか・・」


私は首を激しく振り、掴まれた手首を思い切り振り払った。

自分自身が悔しくて行き場のない怒りに涙がにじむ。

他人の善意を素直に受け入れられない。今は。



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