『男だけの手続き』を「仕込みオチ(伏線回収)」でプラス「神」
20XX年。わが国日本の総理大臣である大平幸次郎(仮)が信じられない法律の施行を宣言してしまった。大平はその真面目な性格、行動、マニフェストを誠実に実行しており、汚職や女性問題の噂も全くなかった。いや真面目だからこその決断、英断だったのかもしれない。それだけに、日本全国の有権者達は彼の宣言に対して驚きを隠しきれなかった。
その名も『メンズデー法』。
まず"レディースデ-"や"女性感謝デー"といった女性を優遇したイベント等を禁止すること。これは実際、国会には既に上がっていた国民からの要望であった。2000年以降女性の権利は日ごとに増していき、今の日本の男性達は一定以上の権利はあるものの、後から追加されていく女性優遇の制度のせいで居場所を失いつつあったのである。
男性達は喚起した。元々レディースデーや女性感謝デーというのは企業戦略の一種だが、そのせいで全国の男性達はある種企業から見放されていたのだ。軽んじられていたのだ。男性は消費しない、女性は消費する。その構図のためか、自宅ではなく家の外でまでも居場所がなくなっていた。
世の男性達の中では"奇抜な法律だけどこれはいい気味だ。お前らは今まで優遇されすぎていたんだ。ちょっと位俺達の気持ちを感じてみろ"というような風潮が高まっていき、ついに大平の宣言から2年後、『メンズデー法』が可決されたのである。
可決されてからの動きは最初は大したことはなかった。元々そういう社会の流れになっていた分、企業達は新たな企画や戦略で顧客を逃がさないように動き始めていたし、家庭内は元々治外法権。男性達は少し外を歩きやすくなった程度だ。それでも法案の名前を使った"メンズデー"や"男性感謝デー"といったイベントも少なからずあったことから男性達はちょっとだけ天狗になりながら、街中を闊歩していたのである。
だが、その動きは施行1年から急激に加速していった。まずは女性専用車両の禁止。本来女性を守るための、企業の戦略とは全く関係ない部分でまでもこの法案が適用されるようになってしまったのである。女性専用車両はなくなり、代わりに男性専用車両が出来た。その時までは、まだ良かったのかもしれない。
翌年、痴漢合法化。何故痴漢冤罪が無くならないのか。それは女性が自分の身をまず守ることを忘れ、何の準備もせずに車両に乗り込むのがいけないのだ。痴漢されたくないのであればそういった格好をするべきだし、交通機関を使わなければ良いだけである。といった、何を考えて発言してるかわからない政治家の意見も今の日本では普通に受け入れられてしまう。ネットの情報と同じ。テレビの情報と同じだ。嫌なら見るな。嫌なら乗るな。そんな一方的な意見のせいで女性専用車両はなくなり、痴漢は合法化された。
そこからはさらに苛烈を極めた。強姦の合法化。女性への暴力合法化。セクシャルハラスメントの合法化。これらは全て先ほどの"嫌なら見るな"理論から派生していったものだ。もう世の女性達は安心して外を出歩くことは出来なくなった。その影響で男性の家庭内での立場が上がり、もう既に、女性は男性の奴隷と化していった。
そんな時、世の中の女性達の間で新たな流れが見えてきた。俗に言う"レディーメン"の誕生である。男性のみ優遇されたことの社会では既に女性として街中を歩くことすら難しい。そう、女性達は男装をしたのだ。自分を男性と偽ることによって社会からの恩恵を受けることにしたのである。もう、女性の権利がないなど反論する時期はとっくのとうに過ぎ去っていた。もう女性には自らと他人を欺くことでしか、自立して生きることが出来なくなっていたのだ。
レディーメンの動きは性転換までは行かないが次第に過激な方向にも動いてしまっていた。身体のラインから女性と気付かれないよう、胸の大きい女性は乳房を手術により切除した。強姦の被害を受けても妊娠しないよう、去勢目的で子宮を取り除いた。次第にホルモンバランスも変化していき、見た目では男性にしか見えない女性が社会にあふれ出ていったのだ。少数が自らの意思でそうするならまだ良い。だがこれはこの男性社会に強制的に行わされたようなものだ。通常の道から外れたそれは、神への冒涜に他ならない。
政府はレディーメンの対応に追われた。そこで世の男性達にはある義務が課せられた。男だけの手続きであるそれは女性には受けられない。いや、性転換まで行った女性はそれをクリアできるのだが、そこまで行った女性は既に女性とは呼ばないだろう。
世の男性は5年に一度、役所に赴き自分の局部を露出させ、それを撮影。更にそれを役所に提出。メンズカードといわれるカードを受け取り、それを5年ごとに更新しなければならない。運転免許証のような制度だ。
そこからある種の対抗策はあったものの、次第に歴史の舞台からレディーメンは消えていった。そして、ついに今日、出生率の低下、快楽殺人の増加等を理由に日本から女性は居なくなってしまったのだ。もうこの島国で、純粋な日本人が生まれることはないのかもしれない。
因みに、施行を宣言した時の総理大臣である大平幸次郎(仮)は今は服役している。この法律立案の責任を取らされたのか?いや、違う。男性しかいない公共交通機関の、男性しかいない男性車両で、痴漢の容疑で現行犯逮捕されたのである。