表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽の化シン  作者: 直弥
第一章「太陽の化身」
4/30

その1

 吸血鬼、人狼、夢魔、生ける屍(リビング・デッド)食屍鬼(グール)など。夜の世界を基本生活圏とする種族は多い。彼らは総称して『夜留(よる)』と呼ばれるが、その定義は曖昧で、太陽に灼かれて死ぬようなものもいれば、フクロウやハムスターよろしく単純に夜行性というだけのものもいる。とは言え純粋な意味での夜行性なだけの生物は『夜留』に含まれない。『夜留』唯一の絶対的な共通定義は太陽を恐れること。彼らにとっての太陽は死そのものなのだ。生物が共通して死を忌避するのと同じ理屈で、彼らは太陽を恐れる。純血種のヴァンパイアなどでも、根の部分では太陽が弱点なのだ。例外はない。ないはずだ。ならば……自己の能力によって太陽を真の意味で克服してしまっているカチューシャは、果たして『夜留』と呼べる存在なのだろうか。

 ――それにしても、よく寝るなあ……。

 気持良さそうな顔で眠るカチューシャを見て、陽介はなんとなく和んでいた。

 ――でもいい加減、寝過ぎだろ……。

 とっくに太陽は昇り始め、もうすぐ昇り切ろうとしていたが、カチューシャはまだ目を覚まさない。『真っ白な紙(ベラヤ・ブマーガ)』という能力を持ち、一ヶ月間幸人のところで過ごしていた彼女は、既に生活リズムが昼行性へシフトしているはずであるのだが、彼これ十一時間は眠ったまま。

 ――とりあえず、二人分用意するか。

 起きるかどうかも分からないカチューシャの分も含め、陽介は昼食の炒飯作りにとりかかった。ヴァンパイアであるカチューシャに本来食事は必要ない。ただ、まだ人間だった頃の癖が僅かにでも残っているのならば、空腹感は錯覚として残されているはずである。それを知っているからこそ、陽介はカチューシャの分も含めた二人分の食事を作っていた。

 フライパンに放り込んだ飯がパラパラとしてきた頃、ようやくカチューシャが目を覚ました。大きな欠伸とともに。

「ふわあぁふ。あぁ、おはようございます」

「おはよう。と言っても、もうすぐ昼の十二時だけど。昼ご飯、食うか?」

「いただきます」

「もうすぐ出来るよ。好き嫌いとかはないか? 今作ってるのは炒飯だけど、大丈夫?」

「食べたことはないですけど、大好物です」

「食わず好きとは珍しいな……。まあ、いいや。カチューシャ、食器棚から皿を二枚取ってくれるか?」

「了解しました」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ