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太陽の化シン  作者: 直弥
第五章「花火」
28/30

その0

 災難や不幸は突如として訪れる。前触れもなく。伏線もなく。避けようもなく。故に、責任もなく。留守中に妻子を殺されたり。未知の流行り病で両親を失ったり。父が海の藻屑となって消えたり。吸血鬼に攫われたり……。これらは間違いなく災難であり、不幸に分類される出来事である。妻子を殺された男にも、避けようのない病気に伝染した夫婦にも、天災に見舞われた男にも、吸血鬼に攫われた、若しくは殺された子どもやシスターたちにも、責任や落ち度はない。しかし、自ら災難を呼びこんでしまったり、飛びこんでしまうこともある。必要のない戦いに挑み、親友を傷つけられたり。余計な好奇心に駆られたがために、太陽に殺されたり。立ち入り禁止の林に侵入し、吸血鬼に殺されたりするのがそれである。


 ◇



 十一年前、一九九九年の八月十三日、林の中。

 一人の男と一人の男の子が、一つの女の子の死体を前にして突っ立っている。死体の横には灰が積もっていた。その灰こそが、女の子を殺害した張本人だったもの。今や口を聞くことも出来ない、吸血鬼の残滓である。

「この子には本当に悪いことをした。僕が来るのがもう少し早ければ……」

「うっ……うああっ……」

 男は唇を強く噛みしめている。

 男の子はただ泣いている。

「……正確な意味での蘇生――子どもの君にも分かりやすく言うと、生き返らせることは、不可能だ。ただ、死んだばかりの彼女なら、死体のまま動けるようにすることは出来るかもしれない。そのための道具なら持っている。但しこれは、この世に二つとあるかどうか分からない代物だ。そう容易く使うことは出来ないんだ」

 その幸人の言葉を、陽介はどれだけ理解出来ていたのだろうか。ただ『この人に頼めば、また由孝に会えるのかもしれない。また由孝と話すことが出来るのかもしれない』ということだけは理解出来ていた。

 だから。

「おねがいします! それ、由孝に使ってください! 僕、なんでもしますから……!!」

 陽介はその時、初めて人に土下座をして頼んだ。男は少しの間、思案するような振りをしてから提案した。

「じゃあ、こうしよう。君が僕の組織で働いてくれるというのなら、この『万能第五要素』を彼女に使ってもいい。今回の君たちのような被害に遭っている人は、今この瞬間にも世界中にいるんだ。そういった人たちを助けるのが、僕たちの組織『ナインズ』だよ」

 その提案を、陽介は何の迷いもなく受け入れた。


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