その6
「今夜は結局、出掛けないんですか?」
「ああ。由孝と話し合った結果な。今夜は様子を窺うことにしたんだ」
カチューシャたちと由孝の後、最後に陽介が風呂に入り、カチューシャと彼は今、パジャマ姿で布団の上に正座して、向かい合っていた。
『寝る時は一応、一つの部屋に固まっといた方がいいだろ』
という由孝の提案で、十六畳のこの部屋に、四人分の蒲団が敷かれている。由孝、陽介、カチューシャ、ターニャという順で、横並びに寝ることになっているが、今ここにいるのは陽介とカチューシャだけである。
「ターニャと由孝は本当に寝なくても大丈夫なんでしょうか?」
「ターニャさんは基本的に夜行性なわけだし、朝方になったら自分から勝手に布団へ入ってくるんじゃないか? そうでなくとも、昼間はずっと寝ていたんだし、今はまだ寝る気にならないだろ。由孝も由孝で夜型だし」
「そうなんですか」
「ま、気にせず寝ようってことだよ。折角久しぶりに眠れるんだし」
「……? 久しぶり?」
「あ、いや、こっちの話。気にしないでくれ」
「じゃあ、気にしません」
「ん、そうか」――この子、こんなに聞き分け良かったっけか? もしかして、俺が怪我したこと、まだ気にしてるのか?「とにかく、今日はもう寝ようか」
「はい。お休みなさい」
「お休み」
部屋の灯りを消して、陽介たちはそれ以降口を開かなかった。