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「コウ、ちゃんと幸せにしてあげてよー!」
披露宴にてモイちゃんが俺に笑う。式はとっくに終わった。
「ユイきゅん泣かせたら僕が貰う」
アツくんが眼鏡を押し上げながら冷淡に言い放つ。
「アツ!?それは駄目!!」
モイちゃんがアツくんの腕を振りながら涙目になる。
「アツくんも、モイちゃんも元気そうだね。良かったぁ。」
安堵する呑気なユイ。先程の二人の会話は完璧な無視だ。 俺も口を開く。
「っつーかさぁ、モイちゃん、さっきアツくんのこと今…」
「アツ?」
「うん。何か呼び方変わったな」
「ふふふー」
意味深な笑い方に疑問を抱く。
「あ?」
「私とあっくん、3ヶ月後に結婚します!!」
「え?」
「は?」
「あーあ…バレた」
ユイは目を見開いて
「な、なんで!?付き合ってたの!?」
と問う。 それにアツくんは頷いた。
「正直、二人が結婚するって半年前聞いてさ。焦った。っで、まあ…なんか合ったのがモイちゃんだったんだよ」
「良かったねー、安心した」
「ああ。」
ユイは嬉しそうだが俺は──。
けど俺は、ユイと夫婦だ。少しだけの後悔を胸に秘め、幸せを握ったまま二人で歩んでいくのだ。
それから少しして、モイちゃんとアツくんの式があった。なんだかんだで大事な親友だから、嬉しかった。他に感想はない。
その後、夫婦にそれぞれの命が宿った。
モイちゃんたちには女の子。 俺らには男の子。
二歳まではいつも一緒に遊んでいたが、アツくんの転勤で女の子とモイちゃんは遠い街へ行った。
けれど運命とは綺麗なもので、女の子と男の子はやがて再会し家族になった。
それはどういう意味があるのか…俺にもわからないけど、俺らはきっと、ずっと同じ場所にいたんだろう。
遠い街も何もない、四人がただ楽しく過ごしたあの時間に─────。