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光る道を捉まえて  作者: 相上園
17/17

12 ◇


     ◇


 今日は数年に一度の流星群を見ることができる日だということで、前々から山根さんと相坂さんと一緒に見ようと計画していた。晩御飯の後、学校の校門前に集合の予定。

 「暗いから気を付けてね」おばさんは心配そうに私に言った。

 「うん! 分かってる」

 そんな心配無用とばかりに大きな声で返事をして家を出た。大急ぎで集合場所に向かう。

 学校の校門前にはもう二人が待っていた。

 「あ、来た!」私を見つけた相原さんが手を振る。

 「こっちこっち!」

 私はさらにスピードを上げて二人の前まで走る。

 「ごめん! 遅かった?」

 努めて申し訳なさそうにしながら聞くと、山根さんが笑顔で首を振る。

 「ううん、そんなことないよ。じゃあ行こうか」

 「うん!」

 「よし行こう!」

 三人、肩を並べて早歩き。校門を後にする。

 学校があるところよりもさらに丘を登っていくと、そこには広い公園がある。遊具もほとんど置いてない、だだっ広いだけの公園。その代わり、ここは空にとても近いところにある。手を伸ばせば星を触れるくらいに。

 公園には他にもたくさん人がいた。家族だったり、友達同士だったり、一人だったり、恋人だったり。中には学校で見かける人たちもいる。みんなも見に来ているんだ。

 「あっ!」

 その時、突然隣で山根さんが空を指さし声を上げた。つられて空を見上げる。

 「わあっ!」

 「すごっ!」

 私と相原さんが同時に声をあげた。

 「きれい……」

 今度は三人が同時に言った。私たち以外にも所々から歓声が上がっている。

 まるで星たちが泳いでいるみたい――。

 空には光の道ができていた。

 来る者、去る者、それぞれが煌めいて、瞬いて、輝いて――真っ黒な海を泳いで行く。多くの仲間たちと共に。

 次々と、光っては消えて、光っては消えて。何本もの光の道を作っている。それは遠くて、儚くて、美しくて、それで、それで……。

 そんな光景に、私は――とても辛くなった。痛いくらい苦しかった。それがどうしてかは分からないけれど。その苦痛は確かにここにあった。まるで、後悔のように、どうにもできない鈍い痛みが私の中の一番底の方で静かに波打っていた。

 無意識のうちに涙があふれてきて、しゃくり上げていた。それでも二人に聞こえないようにと、奥歯に力を入れて堪えた。でも、あふれたものが頬を伝った。でも、涙を拭うことを忘れてしまうくらい、そんな気持ちが消え去るくらい、その光景に私は目を奪われていた。二人も、同じように空を見上げていた。

 それは、時間にするとほんの数分くらい、思い出すと瞬く間であったような気がする。それくらい短い間の、あっけない出来事だった。

 「……終わっちゃったね」

 「綺麗だったね」

 「でも、あっという間だったね」

 それから少しの間、流星群に何をお願いしたのか、という話で盛り上がった。でも家路に着く頃にはとっくに流星群の話は終わり、明日の放課後どこに遊びに行こうか、という話で盛り上がっていた。

 空には、何も残ってはいない。

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