ギブアンドテイク中
ギブアンドテイク、上中下になりました。
『今日は色々とモノがなくなる日』
西谷太佳はそう言ったが、“なくなった”どころではない。
下校しようと、準備をしていたら、スクール鞄につけていたキーホルダーがなくなっていたり、
教科書はあるのに、ノートがなくなっていたり、
体育の授業があったはずなのに、机の横にかけていたはずの体操服がなくなっていたり・・・
もちろん、これは勘違いじゃない。
視線のことは、勘違いだったとしても、モノがなくなったことを、どうやって勘違いする?
なので、終礼後、ちゃんと先生に話をした。
すると、これは立派な“紛失事件だ”と言ってくれた。
「先生も、西谷の持ち物が盗まれてないか、注意して見ておく」
とも、言ってくれた。
太佳は少し安心した。
だが、その安心は、下校するまでになくなった。
DEAR西谷太佳くん
下駄箱を開くと、真っ白い封筒に、そう書かれた手紙が置いてあった。
「なんだ・・・これ?」
封筒を開け、中の手紙を読むことにした太佳。
この手紙の内容からして、この手紙を書いたのは、太佳の紛失したモノを持っている人間だ。
「・・・17時、体育倉庫裏に来てくれたら、あなたのモノを返します・・・?」
太佳は迷わず手紙を鞄に押し込み、体育倉庫の裏へと行った。
先生と会話をしていて、時間が過ぎていて、時間は17時前。
体育倉庫は下駄箱に近い。太佳は走った。
「・・・ハァ・・ハァッ・・・・」
膝に手をつき、呼吸を整える。
「・・・・・・。」
体育倉庫の裏には、まだ、誰もいなかった。
「・・・・・」
急いで損した。なんて太佳は思わなかった。
奇妙なことが起こったのだ。
それが解明できる。そう思えば、待てない時間でもなかった。
17時になるまでにはあと10分強ある。
「俺の・・・」
盗まれて困るわけではない。
買いなおせばいい話だ。シャーペンも、ノートも。
体操服やリコーダーは、学校側に注文すれば買えるだろうし。
でも、どこの誰がなんのために盗んだのか知っておかないと、なんだか、気味が悪い。
・・・まるで、ストーカーされてるみたいだ。
ーーーーガっ
「!」
太佳は、後ろから、なんの予告もなしに硬い金属の棒のようなもので、頭を強く殴られた。
その刹那、太佳は意識を手放した。
「・・・・・、好きだよ・・太佳くん」
体育倉庫裏に太佳ともう一人、黒い影が現れた。
太佳は、それがだれかも知らずに、地面へと崩れ落ちた。