立ち塞がる壁
「壁だ」
「壁だね」
「What a big wall!」
「......」
海斗達の目の前には巨大な石の壁が立ち塞がっていた。何故森の中に不自然に巨大な壁があるのかは不明だ。
この2番目のステージでは、石の壁を破壊することがクリア条件となっている。
この壁はプレイヤーの間で議論を巻き起こした。実はこの壁、破壊するための条件がよく分かっていないのだ。
廃人達の討論の末に壁にはHPが設定されており、この値は12000~20000の間で変動する」という説が一番有力とみられる。
だが、あくまでこれは仮説に過ぎない。何故なら、これを証明できていないからだ。30000以上ダメージを与えたが破壊できなかったという例も報告されている。
「この壁の破壊条件に興味ない?」
それが黒猫のフェイスペイントをした女性の第一声だった。
「ああ、興味あるよ」
「私もすごく興味ある!」
「まずは、5分間、誰か2人が壁を攻撃してみて」
「じゃあ、俺がやろう」
「ミーモヤリマス」
海斗と白人系の男が手を上げた。
「じゃあ、2人にお願いする。魔法使いじゃなければ、通常攻撃で充分ダメージを与えられるわ」
「わかった。技は使わない」
「了解デース」
2人は壁の前に立った。
女性がカウントを始める。
「3、2、1、スタート!」
2人は壁に攻撃を始めた。
5分後
壁には2人が攻撃した事によってちょうど下半分に亀裂が入った。
この亀裂はプレイヤーが与えたダメージを表していると考えられている。裏を返せば、亀裂の入っていない部分は壁の残りHPを表していると言える。
この説はほぼ間違いないものと思われる。
何故なら、完全に亀裂が入っていない状態で壁を破壊できた事例が報告されていないからだ。
「2人共2秒に1回のペースで攻撃して、40前後のダメージを与えていたから、1秒あたり40のダメージを与えていた事になる。5分は300秒だから......大体12000のダメージた事になるわね」
「でも、それだと20000を超えてる。あの仮説が違うって言うのか?」
「あれは結構適当らしい。あまり信用できない。だから調べてるんじゃない」
「そうだな」
「次は私も攻撃する。私は魔法を使うからね」
少女が立ち上がった。そして壁の方へ向かった。
そして3人で攻撃を始めた。
数分後
「あ、 粉薬が無い! どうしよう」
粉薬とはMPを回復するための道具だ。
「俺の1個あげようか?」
「本当? ありがとう」
「今贈るからちょっと待って」
海斗はメニューウィンドウを操作した。
「萩原 七実さんに橙の粉薬を贈りました」
メッセージが表示された。無事に贈れたようだ。
「まだ壁は破壊できないのか」
女性はため息をついた。
「さっきより確実にダメージを与えてるのに、亀裂は全然増えてないな」
海斗は死んだ目で壁を見上げた。
「亀裂は6割強ってところか......」
(俺達は何かを間違ってる......単純にHPが設定されているだけなら、とっくに破壊できているはずだ)
「あのさ......萩原さん? 自分がどれくらいダメージを与えたかわかる?」
海斗は少女に尋ねた。
「ええっと、私が与えたダメージは......1回の攻撃で50ダメージくらいで......」
(そういえば、アルミラを使ってたよな)
「アルミラの消費MPは?」
「13だよ」
「MPの回復は何回した?」
「2回、どっちも完全にMPが無くなってから粉薬を使ったよ」
海斗は少女の最大MPを確認した。パーティーメンバーの最大HPとMPは、常に確認することができる。
「最大MPは221か......ならちょうど17回アルミラを撃てるな。2回回復したってことは......34回、いや、元々のMPもあるから51回だ。だから51×35で......2550。それが萩原さんが与えたダメージだ」
「えっ、それじゃあ私は全然役に立ってないって事?」
少女の与えたダメージは海斗と白人系の男が与えたダメージよりはるかに少なかった。
「うーん」
海斗は腕組みをしながら熟考している。
「ちょっと! 少しはフォローしてよ!」
だが、海斗には聞こえていないようだ。
「ちょっと......私、どうすればいいの?」
「まあ、いいじゃない。前のステージでは半分も敵を倒したんだから」
女性が少女を慰める。
「それにしても、こんなに可愛い娘の心の叫びが聞こえないなんて、一体彼はどんなことを考えてるのかしら?」
その時だった。
「わかった! 壁の破壊条件がわかったぞ! 」
最初の話を改稿しました。
読んでみて下さい。




