大阪の地盤について
今年東北地方であの大きな地震があってから、もう半年以上も経ちました。あの地震を受けて、地震に関する意識もより一層上がったかと思います。そんな方々が日本の地震についてもっとよく知るためのきっかけになればと思います。
では、どうぞ。
大阪は海からの高さは低く、広大で平らな地面が広がっており、都市としても発展しやすい地形になっている。では、どのようにしてこの地形ができたのか。この大阪の地盤を地形の意味、構成と特性に分けて説明していく。
まず、大阪とその付近の地形を見てみると、高い所では900m以上にもなる六甲山、標高642mの生駒山があり、普段は見えない海の底に目を向ければ、四国から200kmほど沖に急に南海トラフと呼ばれる深さ4000m級の溝がある。これらを合わせると高低差は約5000mにもなる。
なぜこのような急激な高低差があるのか。それを理解するためにはプレートテクトニクスという理論を理解する必要がある。
プレートテクトニクスとは、地球の表面で10数枚のプレートとよばれる岩盤が水平移動していると考える理論である。プレートには大陸側の大陸プレートと海洋側の海洋プレートの二種類があり、これらが水平移動しているため、海洋プレートが隣接する大陸プレートの下に沈み込む。これによって海底にできる深い溝の中でも、深さが6000m以上のものを海溝、それより浅いものをトラフと呼ぶ。トラフには異なる成因のものもあるが、ここでは省略する。日本は四枚のプレートが隣接する場所にあり、これが日本に地震が多い理由になっている。
地震には二つの種類があり、それぞれプレート境界型地震、プレート内型地震と呼ぶ。これらの地震の違いはプレートに蓄積したエネルギーが限界を迎えた時、プレートがどのようにエネルギーを発散するかである。
プレート境界型地震とは、前述したように海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込むことによって、境界で両者が歪み、跳ね戻ることによって起こる。この種類の地震は、一度に発散されるエネルギーが大きく、被害も大きい。スマトラ沖地震、東北地方太平洋沖地震等がこれに当たる。また、プレートの境界、つまり海溝の底で起こるため、大量の海水を押し上げることで津波を引き起こす。
一方、プレート内型地震は、歪んだプレートが跳ね戻ることはせずに、プレートの内部で岩盤が破壊されることによって起こる。この岩盤の破壊はひび割れという形で起こり、このひび割れが断層である。この種類の地震は、一度に発散されるエネルギーこそプレート境界型地震よりは少ないが、都市の直下で起こることもあり、度々大災害を引き起こす。兵庫県南部地震、新潟県中越地震等はこれに当たる。また、今後も活動する可能性のある断層を特に活断層と呼び、この活断層によって上下にずれ、できた山が六甲山や生駒山である。
活断層によって高い山ができ、海洋プレートが大陸プレートに沈み込むことによって海溝ができ、大阪や大阪付近のような高低差の激しい地形が形成されている。
ここで大坂の地盤の構成をニューヨークのマンハッタン島の地盤の構成と比較しながら見ていく。
大阪やマンハッタン島のように海に面する大都市は、見た目からするとほとんど変わらない。しかし、この二つの都市の地盤の構成をみると全く別のもので形成されていることが分かる。結論から言うと、硬い地盤の上に柔らかい地層があり、その上に都市が作られている大坂に対して、マンハッタン島は硬い地盤の上にそのまま都市が作られている。マンハッタン島のセントラルパークを航空写真でみると、岩盤からむき出しの岩石が確認できる。
なぜこのような違いがあるのか。それには氷河時代の地表の状態が大きく関っている。
氷河時代には氷期と間氷期があり、寒い氷期と比較的暖かい間氷期が交互に繰り返して訪れる。現在は間氷期である。氷期には広い範囲で大陸が氷に覆われ、地表に重い氷床を形成する。
ニューヨークは氷期に氷床に覆われていた地域である。この重い氷床によって、氷期には岩盤が沈むが、現在のように氷床が溶けると、少しずつもとの形に戻るように岩盤が隆起してくる。岩盤が隆起することによってより強く雨風を受け浸食されるが、周りより地形が高くなるため、上に岩盤が浸食されてできた土砂が積もることはない。土砂の堆積のメカニズムは後に説明する。こうして、マンハッタン島のような硬い岩盤が露出した地盤ができ上がる。
これに対して日本は氷期に氷床に覆われていなかった地域である。氷床の重みの影響は受けないが、海進と海退の影響を受ける。海進と海退とは、氷期と間氷期の気温差で海水が溶けたり凍ったりすることで、海面の上昇下降が起こり、それによって海岸線が陸にむかって進んだり退いたりすることである。大阪平野は海面からの高さが低いため、今よりも温暖であった縄文時代には広い範囲で海中に沈んでおり、上町台地は半島になっていた。このように大阪平野は陸地となったり海底となったりを繰り返しているため、陸地でできる陸成の地層、海底でできる海成の地層が交互に積み重なってできている。
では、このような地層はどのようにしてできるのか。
まず六甲山や生駒山を形成している岩石を見てみる。活断層によって隆起し、周りより地形が高くなったこの二つの山は岩盤が露出している。そしてこの岩盤は花崗岩という岩石で構成されている。岩石の種類には大きく分けて三つがあり、地表に出てきたマグマが急激に冷やされてできる火山岩、地中でゆっくり冷えて固まった深成岩、既存の岩石が浸食されできた土砂が積み重なり押し固められてできる堆積岩がある。花崗岩は深成岩である。
なぜ地中でできる深成岩である花崗岩が現在地表に姿を現しているかと言うと、活断層によって隆起し浸食を受けたことによって、本来上にあったはずの岩石が土砂として別のより低い場所に堆積したからである。そして、このより低い場所というのが大阪平野である。
ここで、土砂の堆積のメカニズムを説明する。浸食によってできる土砂は粒の大きさによって種類が分けられており、大きいものから礫、砂、シルト、粘土となる。これらの土砂は河川によって運搬され、堆積する。このとき、河川の流れの強さによって運搬できる土砂の種類が違うため、場所によって独特な地形を形成する。まず、山の麓にできる扇状地、蛇行した川が大雨などで取り残されてできる三日月湖、そして河口にできる三角州。河川は蛇行することで満遍なく平野に土砂を堆積させるが、蛇行した河川は水害による影響が大きい。ゆえに大阪では真っ直ぐ流れるように開発されており現在の大阪では蛇行した河川は見られない。河口に行くほど、流れは遅く弱くなり土砂の粒の大きさは小さくなる。これは生物の化石などの他に、その地層ができたとき海岸線の位置がどのあたりにあったかを調べる目安となる。また、大阪湾には海退によって過去にあった河川の跡が、現在の河口の続きに見られる。
以上のように、大阪は活断層によってできた山の間に土砂によって柔らかい地層が堆積したお椀状の形をしている。マンハッタン島のような硬い岩盤と違い、大阪の柔らかい地層は地震の時の揺れが大きい。岩盤を皿、地層を豆腐に例えて想像すれば分かりやすいだろう。皿の上に豆腐を乗せ、皿を少し弾けば、皿自体はほとんど揺れないが、豆腐は大きく長く揺れ続ける。このように大阪の地盤は地震がとても多い地域なだけでなく、地震による被害はより大きくなる構造をしている。しかし、活断層の上に建っている建造物等が大阪には意外にも多くある。
最近起きた地方太平洋沖で全国的に地震に対する対策の意識は上がってきているが、関西には他人事だと楽観視している人もいる。しかしそれは、大阪のような活断層や地震に弱い地盤の事を知らないからである。これを知っているか、そうでないかで出来る対策も変わってくるだろう。
いかがでしたでしょうか。正直これを公開するかどうか迷いました。被災者の方々にはお辛いでしょうから。
しかし、それでも地震はやってきます。そんな時知らなかったでは済まされません。この文章では触れませんでしたが、原発が建っている位置には地球科学の観点から見ると明らかにおかしいものもあります。
本当に大事なことなのでもう一度言わせていただきます。知らなかったでは済まされないのです。
この文章を読んで、自分たちが住んでいるところがどういうところなのか、もっと興味を持っていただければ幸いです。
震災で不幸にも亡くなられた方には、どうかご冥福をお祈りします。