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Do Man  作者: 山野 鹿
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第4話 招かれざる客

細胞が叫ぶ直感を信じ、厨房の奥にある非常口に向かってLEVI'Sのジーンズを翻して走った。


背後の入口には、ブラインドを下ろした"あの男"がいる。


消防法で定められた無機質なドアノブを全力で捻り、重い鉄扉を押し開けるが、自由な外気を感じるはずのその場所には、小太りで指にタトゥーの入った別の男が、壁のように立ちはだかっていた。


入口の男とは体格も服装も違う。


だが、眼球の奥にある底知れない暗闇と、生物としての温度の欠落は、まるで双子のように酷似していた。


「いらっしゃいませ、だろ? 」


男の指のタトゥーが、まるで生き物のように蠢いて見え、新宿駅の雑踏まであと数メートルの瀬下啓司の逃げ道は、招かれざる客たちの冷たい肉体によって完全に封鎖された。


追い詰められた啓司は後退りし、厨房にUターンしたが、裏口から現れた小太りの男は、焦ることなく鉄扉を閉め、焦ることなく鍵をかける。


カチャリ————

冷たい金属音。


裏口の男は重量感のあるクラークスのブーツで床を軋ませ、入口側の男は、さっきまで少女が命を繋いでいた炒飯の皿を手に取り、行儀悪く口へ運び始めた。


「チッ。どいつもこいつも」


その風貌は、「俺は法律なんて守ったことがないぞ」と全身で叫んでいるようだった。


啓司は調理台に置かれた三徳包丁を咄嗟に握りしめ、震える切先を男たちへと突き出した。


「残念ながら、金は持ってないぞ。今日、客は一人も来てないんだ。」

さっきまで少女の親をとっちめてやると息巻いていた自分はどこへ行ったのか。


本物の狂気を前にして尻込みする自分を"スーパー惨め"だと自嘲した。


その手には、およそ新宿の街には似つかわしくない、どす黒い輝きを放つ猟銃が握られており銃口が、啓司の眉間を正確に捉える。


啓司はじゃんけんで負けて手を下ろすように包丁を下げ、食事をしている男がモゴモゴ言いだす。


「この炒飯うまいな。一瞬涙が出そうになったよ」


沈黙に支配された店内で、食器同士が触れ合う硬い音が、不気味なメトロノームのように死の時間を刻む。


裏口から現れた男は、クラークスのブーツの重心をずらし、袋のネズミになった啓司を猟銃の銃口越しに凝視した。


数拍の沈黙の後、男は顎で客席側を指して誘導し、啓司は包丁を置いて静かに席へ向かった。


男が少女の残した炒飯を完食したところで、啓司は強制的に客席へと座らされ、背後では猟銃を構えた小太りの男が正確に肩甲骨のあたりを銃口で捉えられており、冷たい死の感触が伝わり、抗う術は完全に絶たれた。


「ちょうど腹を空かせていたんでな。助かったよ」

男は満足げにナプキンで口を拭う。


許可なく喋れば、その瞬間に背後から引き金が引かれるのだと思わず息を呑み、沈黙を守った。


「大前提として、金を取りに来たわけではない。"ある物"を探しているだけだ。二、三個、話を聞いたら大人しく帰るつもりだから安心しろ」

新宿区の白昼。


レストラン"マクレーン"の静寂の中で、男は落ち着いた様子で、まるでお勧めのワインを語るような調子で話を切り出した。


その普通の態度こそが、啓司には何よりも異常に感じられた。

「そうか。俺も穏便に済ませたい。」


男は、蟠りがなくなったかのように啓司に人差し指を向けていった。


「話がわかるやつでよかった!ははっ!」


男が機嫌良さそうに笑って、後ろにいる猟銃男も鼻で笑う。


向こうからすれば、今の啓司は格好の餌食でしかないのだろう。


「じゃあ一つ目だ。お前、何年ここで働いてる?」

男は、まるで近所の世間話でもするような軽さで、興味津々に身を乗り出してきた。

「約、3年になる」

「なるほど、3年か。そりゃあ立派になるよなぁ。中学も高校も3年だしな。俺とそこにいる相棒は元猟師でな、確かに一人前になるには、それくらいの年月が必要だったよ」

「元猟師」という言葉が、不純物だらけの店内に重く響く。彼らにとって、銃刀法の規制など、ただの紙切れに過ぎない。獲物を仕留めるための「3年」を積み上げたプロの眼光が、啓司の喉元を射抜いていた。

「そうか...。」

男は澱みなく自慢げに話し始めた。


「長年狩りをしていると、動物の気持ちっていうのがよーく分かるようになってくるんだ。どこに身を潜めて隠れているのか、どこを経由して逃げるのか……。そこを狙いすまして、ズドンっ!と撃ち込むのが最高なんだよ! ははっ!」

啓司の目の前で足を止め、その濁った瞳で射抜くように言った。


「それが、人間でも同じだってことに、最近気づいたんだ。そこで次の質問だ...。ここに、女のガキが来なかったか?」

啓司の脳裏に、さっきまで炒飯を頬張っていたあの少女の、血の混じった涙が蘇る。


「いや、来ていない」

啓司の声は、自分でも驚くほど乾燥していた。


「よし! 次で最後の質問だ」

男は、啓司の吐息が届くほどの距離まで顔を近づけ、低い声で言った。


「なぜ、嘘をつくんだ?」


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