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ボクとクロちゃんの時間旅行

作者: 豆月冬河
掲載日:2026/01/22

今回もギリギリ。

 ボク、ユージーン。五才(ごさい)

 アルヴァノクスっていう(くに)の、王子(おうじ)なんだ。


 アルヴァノクスって(むかし)は、アルヴァティアとノクスヴァールっていう(ふた)つの(くに)だったんだけど、(いま)(ひと)つになったんだって。ボク、おべんきょうしたから()ってるんだ。


 …でも王子(おうじ)なんて、めんどくさい。

 おべんきょうに、(けん)のおけいこ、それからまほうのれんしゅう。やることがいっぱいなんだ。

 もっとあそびたい。とうさまはちっちゃい(ころ)、コッソリお(しろ)()()してあそんでたんだって。いいなぁ。




 もうすぐおべんきょうの時間(じかん)。でもボク、もうちょっと(きゅう)けいしてたいな。

 …って、お(しろ)のろう()をおさんぽしてると、


 ((―――よぉ! また()からぬコト、(かんが)えてるな!))


 あ! クロちゃん!

 クロちゃんがボクのあたまの(うえ)に、スーッととんできた。


 クロちゃんは、ボクにだけ()えるようせいさん。

 (あお)いお洋服(ようふく)に、トンボみたいな(はね)がはえてて、()んでるときはキラキラしててキレイなの。

 ボクが()っているほうせき、クロノアルヴァに宿(やど)ったようせいなんだって。


 クロノアルヴァは、アルヴァノクスになる(まえ)(くに)、アルヴァティアの宝物(たからもの)だったんだ。

 ボク、じつはクロノアルヴァのけいしょうしゃなんだって。とうさまとかあさまにはまりょくがないのに、ボクにまりょくがあるのは、そのせいなんだって。


 …でも、けいしょうしゃってなんだろ。


 ((つまり、ずーっとオレといっしょ、ってことだぞ! よろこべ!))


 うん! よくわかんないけど、わかった!


 「―――あ! 若様(わかさま)! ようやく()つけましたぞ! ささ、おべんきょうの時間(じかん)じゃ!」


 わ! ドレイヴァン先生(せんせい)()つかっちゃった…。

 はぁい。(いま)()きまーす!


✮ ⋆ ˚ 。 ⋆ 。 ° ✩


 ((―――ユージーン、(はなし)がある))


 (ゆう)ごはんを()()わった(あと)、クロちゃんがボクのそばに()て、そう()ったよ。クロちゃんは真剣(しんけん)(かお)で、


 ((いいか? よく()け。ようやくお(まえ)とオレのシンクロ(りつ)安定(あんてい)してきた。だから『時渡(ときわた)り』をするぞ!))


 ? しんくろりつ? ときわたり? なぁに、それ? クロちゃん時々(ときどき)、よく()かんないコト()うよね。


 ((うーん、説明(せつめい)すんのめんどくさいな…。とりあえず、お(まえ)が『時渡(ときわた)り』をしないと大変(たいへん)なコトになる。…お(まえ)()えちゃうかもしれないんだ))


 え!? ぼ、ボク、()えちゃうの!?


 ((ああ。『時渡(ときわた)り』で『過去(かこ)』に(さかのぼ)って、ユージーンがちゃんと()まれてこれるように、土台(どだい)(つく)んないとな。だから、シルヴィアに「()ってきます」って()っとこうぜ!))


 え? かあさまに?


 ((フッフッフ… (じつ)はな、(むかし)のシルヴィアに()いに()くんだぜ! ちょっと(たの)しいだろ?))


 わぁ! (むかし)のかあさま! ちょっとたのしみ♪

 でも、いつ(かえ)ってこられるの?


 (((いま)から一週間(いっしゅうかん)ちょい、かなぁ。穣神(じょうしん)(つき)3日(みっか)、サルパの刻頃(こくごろ)中庭(なかにわ)()っててくれって()っとけ!))


 サルパの(こく)…、お昼前(ひるまえ)だね。うん、わかった!


 ボクはかあさまのお部屋(へや)まで()って、クロちゃんが()ったことを(つた)えたんだ。


✮ ⋆ ˚ 。 ⋆ 。 ° ✩


 「そう…、とうとうあのとき(・・・・)()くのね」


 かあさまはそう()って、ボクをギュッと()きしめてくれたよ。

 ………でも、あのとき? かあさま、どういうこと?


 「()けば()かるわ。…それから、クロノアルヴァ。そこにいるの?」


 ? クロちゃんのこと? うん! いるよ!


 「…ユージーンを、お(ねが)いね」


 ((おう! まかせとけ!))


 クロちゃんはかあさまに()かって、(むね)をドン! と(たた)いて()せたよ。でも、かあさまに()こえてないと(おも)うな。


 「ユージーン…、あの(とき)(わたし)()えば、あなたは(おどろ)くわね。…(いま)なら()かる。きっと(わたし)は、あなたを(こわ)がらせていたと(おも)うわ。でも…」


 かあさまはそう()って、もう一回(いっかい)ボクを()きしめてくれたよ。


 「…そうね。あなたが(ねむ)くなった(とき)(わたし)のそばに()()ってあげてね。…さあ、()をつけて、いってらっしゃい。とうさまには、(わたし)から()っておくわ」


 ? う、うん! じゃあ()ってくるよ!

 あ! クロちゃんの(まわ)り、すっごく(ひか)ってる!


 ((おう! それじゃ、()くぞ!))


 うん! ()ってきまーす!

 ボクとクロちゃんは、キラキラした(ひかり)(なか)()()んだんだ。


✮ ⋆ ˚ 。 ⋆ 。 ° ✩


 「―――ここ、どこ?」


 (ひかり)()けたボクとクロちゃんは、(くら)(もり)(なか)にいたよ。ちっちゃいけど、(かわ)があるね。


 …あ! (ひと)がいる! …騎士(きし)さんかな? (みず)をくんでるけど…。

 あれ? あの(ひと)…、


 「ねえ、クロちゃん。あの(ひと)魔団(まだん)隊長(たいちょう)のラザルさんじゃない?」


 ((そうだな。お(まえ)()ってるラザルより(わか)いけどな))


 ボクは、おーい! って(こえ)をかけようとしたけど、クロちゃんがあわてて()めて、ダメって()ったんだ。


 (((いま)のお(まえ)は、まだこの()にいないんだ。ないしょにしとかないと、未来(みらい)()わっちまうかも()れないだろ? かあさまのことも『シルヴィアさま』って()うんだぞ))


 ええ…、しょうがないなぁ。…うん、でも、()かった。

 ボクは()らないフリをして、ラザルさんに(こえ)をかけたよ。


 「あ! あの!」


 「…? …え!? こ、子供(こども)!?」


 ラザルさんにビックリされちゃった。とりあえず、えーと…


 「か…、…シルヴィアさまに、あわせてください!」


 「!? な、(なん)でシルヴィア(さま)のことを…。(きみ)一体何者(いったいなにもの)なんだい?」


 「………」


 どうしよう。なんて()ったらいいのかな。

 ボクとクロちゃんが(こま)ってると、


 「ラザル、どうし…、………え!? こんなところに、子供(こども)!?」


 (おんな)騎士(きし)さんがきた…、って、あれ!? 騎士(きし)団長(だんちょう)のミネオラさん!?


 ((だから過去(かこ)なんだって。まだ騎士(きし)団長(だんちょう)じゃないぞ))


 あ、そっか。

 ミネオラさんもビックリしてる。ラザルさんが事情(じじょう)説明(せつめい)してくれたよ。


 「そ、そうか…。と、とにかく、まずはドレイヴァン(さま)相談(そうだん)しよう」


 え!? ドレイヴァン先生(せんせい)もいるの!?

 ちょっとうれしくなったけど、やっぱりクロちゃんにちゅういされちゃった。


 ((まだお(まえ)先生(せんせい)じゃないからな。とりあえずユージーンは、あんまり(しゃべ)んないようにしないとな))


 うん、()かった。お(くち)チャックするね。


✮ ⋆ ˚ 。 ⋆ 。 ° ✩


 「(なん)と…。この子供(こども)()っている宝石(ほうせき)は、(まさ)に…」


 ああ、そっか。先生(せんせい)はクロノアルヴァのこと、()ってたんだね。

 先生(せんせい)が、かあさまのところに案内(あんない)してくれるって。やっと(むかし)のかあさまに()える。(たの)しみだなぁ♪


 …だけど。

 ボクはコッソリと、クロちゃんに(はな)しかけた。


 「…ねえ、なんかみんな、くたびれすぎてない?」


 どの騎士(きし)さんたちも、クタクタの、ボロボロだよ。


 ((そりゃあそうさ。(いま)ここは、戦争(せんそう)してるんだ))


 え!? せ、戦争(せんそう)!? 戦争(せんそう)って、(ひと)()んだりして、コワイことじゃないの!? ぼ、ボク、ヤダよ! コワイよ!


 ((大丈夫(だいじょうぶ)だよ。お(まえ)(たたか)(わけ)じゃねぇって。…ほら、(むかし)のシルヴィアに()えるぞ))


 う、うん…。でも…。


 「姫様(ひめさま)(すこ)しよろしいですか?」


 ひめさま、って、かあさまのことだよね。ボクはドレイヴァン先生(せんせい)のあとについて、天幕(てんまく)(なか)(はい)っていった。


 「―――!? …子供(こども)!?」


 ! か、かあさまの(こえ)だけど…、…あれが、かあさま!? …あんなにやせて、(よご)れてて…、そ、そんなぁ!


 ((…だから戦争中(せんそうちゅう)なんだってば。しょーがねーだろ))


 ううう…、ヤダよぅ。戦争反対(せんそうはんたい)

 …って、あれ? (そと)からなんか(こえ)が…。


 「………せ! (はな)せって! ちゃんと降伏(こうふく)しただろう!?」


 ! こ、この(こえ)、もしかして、…とうさま!?


 ((おい、だまってろ。…(じつ)はな、お(まえ)両親(りょうしん)、ここで(はじ)めて出会(であ)うんだ。お(まえ)(いま)『とうさま』って()んじゃうと、未来(みらい)()わっちゃうかも()れないからな))


 そ、そうなの!?

 …うーん、しょうがない。ココでもお(くち)チャック。


✮ ⋆ ˚ 。 ⋆ 。 ° ✩


 「………(ぼく)は、あの(しろ)から()げてきたんだ。(なに)しろノクスヴァールはもう…」


 とうさま、どっかから()げてきたんだって。(なん)だかあちこちケガしてるみたい。

 ボク、おとなしくお(はなし)()いてたけど、よくわかんない。どういうこと?


 ((つまりだな。(いま)(まえ)のかあさまととうさまは、敵同士(てきどうし)なんだ))


 ええっ!? な、なんで!?


 ((元々(もともと)シルヴィアはアルヴァティアの、お(まえ)のとうさまはノクスヴァールの人間(にんげん)だったんだよ。だけどルシアン…、お(まえ)のとうさまがいた(しろ)は、おかしなことになってるんだ。…とにかく、このままだとルシアンは、悪者(わるもの)にされちまうな。…よし! いいか?))


 ゴニョゴニョゴニョ。…うん、うん。


 ボクはクロちゃんに()われたとおり、とうさまのそばに()って、ほっぺたを()でてあげたの。


 「………」


 ボクのクロノアルヴァが(ひか)って、クロちゃんがとうさまのキズを、回復(かいふく)のまほうで(なお)してあげたよ。スゴイや! クロちゃん!


 ((…よし、じゃあお(まえ)、とうさまに()きついて(あま)えてやれ!))


 え? いいの? ヤッタ!

 ボクは、とうさま、大好(だいす)き! って(おも)いながら、とうさまに()きついたんだ。そしたらとうさま、「ありがとう」って()ってくれたよ! エヘヘ♪


 「…貴方(あなた)は、間者(かんじゃ)としてここに()たのではないのですね」


 あ! かあさま、(すこ)(やさ)しいお(かお)でとうさまに(はな)しかけてくれてる! よかったぁ。


 ((そうそう、とりあえず、ルシアンは悪者(わるもの)じゃないって、()かってもらわないとな))


 うん! …それにしても。


 「………は何故(なぜ)執拗(しつよう)()(くに)(たから)を………」


 「………ザフィールの身体(からだ)(すで)に……… ………主要陣(しゅようじん)(すべ)て、魔族(まぞく)と………」


 …なんか、ムズカシイお(はなし)してる。ザフィール…? …って、だれだろ?


 ((ザフィールはルシアンの(にい)さまだ。…けどな、ザフィールはもう、魔族(まぞく)(ころ)されてるんだ))


 え!? じゃ、じゃあ、戦争(せんそう)って、魔族(まぞく)相手(あいて)なの!?


 ((ああ、そうなるな。………どうやら、その魔族共(まぞくども)(ふう)()めるために、『封印(ふういん)(ほこら)』ってとこに()かうみたいだ。シルヴィアとルシアン…、あと、たぶんお(まえ)一緒(いっしょ)()くだろ))


 え、ボクもかあさまたちといっしょに()けるの?


 ((ああ。一番安全(いちばんあんぜん)なルートになるそうだからな。…でも、くれぐれも、かあさま、とうさま、って()うなよ))


 う、うん。

 ………ところで、ねえ、クロちゃん。


 ((? (なん)だ?))


 …ときわたり、もっと(まえ)()ければ、とうさまの(にい)さまや、かあさまのとうさまたちも、(たす)けられたんじゃない? 魔族(まぞく)()をつけるように、って(おし)えてあげなきゃ!


 ((うーん…、でも、そうなるとシルヴィアとルシアンは出会(であ)ってなかったかも()れないぞ。そしたらお(まえ)()まれてこれないじゃないか))


 あ! そ、そっか!

 …うーん、しょうがないかぁ…。でも、おじいさまたちにも()ってみたかったなぁ、って、ちょっとだけ(おも)ったんだ。


 …ふわぁ。なんだかねむくなってきちゃった…。


 「―――貴方(あなた)名前(なまえ)は? どこから()たの?」


 ん? かあさまの(こえ)…。ボクに()いてるの? えっと…、名前(なまえ)くらいなら()っても大丈夫(だいじょうぶ)だよね? クロちゃんを()たら、うんうん、って()ってるから、じゃあ…、


 「………ボク、ユージーン」


 「そなた、もしやクロノアルヴァの継承者(けいしょうしゃ)なのか?」


 わ! ドレイヴァン先生(せんせい)()づいてるよ!


 「! ―――ということは…、シルヴィア。この()は、未来(みらい)(きみ)()んだ、(きみ)子供(こども)…、ということか!?」


 わ! とうさまにも()づかれちゃった! そういえば、かあさまがクロノアルヴァの(つぎ)(あるじ)()む、とか(なん)とか、さっき()ってたような…。ど、どうしよう…。


 ((()わなくていいぞ。ないしょ、って()っとけ。くわしいことは()っちゃダメだ。…あと、ここに()(まえ)、シルヴィアが()ってたろ? (ねむ)くなったら(わたし)()()ってくれ、って。…お(まえ)(ねむ)ったら、きっとシルヴィアが()っこしてくれるぞ))


 …うん、わかった。かあさま…、ボク、もうねむすぎてダメだぁ…。


 「………ないしょなの。くわしいことは()っちゃダメって、クロちゃんが………」


 ………zzz。

 そこから(さき)のコトは、ボク、よくおぼえてないや。

 ()のせいかな、クロちゃんが二人(ふたり)()えたけど…。あれは…、この時代(じだい)のクロちゃん………?


✮ ⋆ ˚ 。 ⋆ 。 ° ✩


 (あさ)()きたら、カゴに()せられてた。

 …あれ? ボクを(せお)負ってる(ひと)…、騎士(きし)団長(だんちょう)副官(ふくかん)さん? …シドさんだ!


 「あら、()きたの?」


 もう一人(ひとり)(おんな)(ひと)がボクに(はな)しかけてきた。

 …あれ? この(ひと)遊撃隊(ゆうげきたい)のレムさん! ときどきボクに、(まち)流行(はや)ってるお菓子(かし)をコッソリくれるんだよね。


 ((余計(よけい)なコトは()うなよ。とりあえず、おとなしく背負(せお)われてろ。これから『封印(ふういん)(ほこら)』に()かうんだ))


 ふぅん。シドさんとレムさん…、あと、とうさまとかあさま。それとボク。みんな、フードかぶって(たび)冒険者(ぼうけんしゃ)さんみたいな格好(かっこう)してるね。


 ((だな。旅人(たびびと)変装(へんそう)してるんだ。てか、お(まえ)にとっちゃ、ホントの冒険(ぼうけん)だもんな))


 うん! ワクワクするね♪


 ((でも戦争中(せんそうちゅう)だからな。おまけに魔物(まもの)()る。()をつけろよ))


 ええっ!? そーなの!? ちょっとコワイ…。


✮ ⋆ ˚ 。 ⋆ 。 ° ✩


 「氷剣(アイスブレイド)!」


 ! か、かあさま、スゴイ! かあさま、こんなに(つよ)かったの!?




 ―――(たび)途中(とちゅう)(もり)()けようとしたら、コワイまものがいっぱい()てきた。オークもゴブリンも、えほんでしか()たことなかったのに…。


 ((この(ころ)はまだ、大地(だいち)封印(ふういん)される(まえ)だからな。お(まえ)()まれた(ころ)よりも魔物(まもの)は多いんだ))


 そーなんだ。…うう、イヤだなぁ。…あれ? とうさま? ボクのそばに、とうさまが()てくれたよ。


 「ユージーンは(ぼく)(うし)ろに(かく)れててね。…『防御壁(シールドウォール)』!」


 !? え!? と、とうさま、まほう使(つか)えるの!?


 ((この(とき)はシルヴィアもルシアンも、まだ魔力(まりょく)()ってたんだよ。ほら、()てみろ))


 …わ! かあさまの(けん)(しろ)(ひか)ってる! あれは…、


 ((氷剣(アイスブレイド)だ。シルヴィアは自分(じぶん)(けん)に、氷魔法(こおりまほう)()せて(たたか)ってたんだ))


 うわぁ…! スゴイ! かあさま、スッゴク(つよ)い!


 「…『身体強化(パワーブースト)』! 『攻撃強化(アタックブースト)』! 『俊敏強化(ラピッドブースト)』!」


 え!? え!? とうさまもスゴイ!

 シドさんとレムさんも、とうさまのまほうで、あんなに(はや)(うご)いて…!

 うわぁ! あっという()にまものをみんな、やっつけちゃった!




 「―――ふぅ、(だれ)怪我(けが)はないわね」


 「はいっ! ルシアンさんの支援魔法(しえんまほう)のお(かげ)で、いつも以上(いじょう)(うご)けましたから!」


 …す、スゴかったぁ。とうさまもかあさまも、こんなにまほう使(つか)えてたのに、(なん)でまりょく、なくなっちゃったんだろ…。


 ((それはな、(ほこら)()けば()かるさ))


 ? そうなの?


 …このときのボクは、あんなコトになるなんて、まだ()かんなかったんだ―――


✮ ⋆ ˚ 。 ⋆ 。 ° ✩


 「―――()いた。ここがそうだよ」


 『封印(ふういん)(ほこら)』に()いちゃった。


 ココに()るまで、いろんな(ひと)がしんせつに、ゴハンをくれたり、()めてくれたり、たのしかったなぁ。

 みんなボクのこと「カワイイね」って()ってくれたけど、なんとなく不安(ふあん)そうだった。やっぱり戦争中(せんそうちゅう)だからかなぁ。


 …って、あれ? とうさま…。一人(ひとり)(ほこら)()かってるよ?


 ((…さて、ユージーン。ここからがお(まえ)大仕事(おおしごと)だぞ))


 ? どういうこと? クロちゃん。


 ((いいか、よく()け。ルシアンはな、この(ほこら)自分(じぶん)魔力(まりょく)(いのち)(ささ)げることで、大地(だいち)封印(ふういん)(ほどこ)す『(かぎ)』の役割(やくわり)があるんだ。そして(いま)(まさ)にその役割(やくわり)()たそうとしている))


 え!? じゃ、じゃあ、…もしかしてとうさま、()んじゃうの!?


 ((ああ。だからお(まえ)、シルヴィアも()れて(ほこら)(はい)れ。ルシアンの(いのち)()わりに、シルヴィアの魔力(まりょく)(ささ)げるんだ。そうすりゃ封印(ふういん)()される。ここまでの(たび)で、ルシアンとシルヴィアは(こころ)(かよ)()ってるからな))


 ふぅん、そうなんだ…。…じゃない! じゃあ(いそ)がなきゃ!

 ボクはシドさんの背中(せなか)で、「お(ねが)い! ()ろして!」って(あば)れたんだ。


 「え!? おい、ユージーン…!」


 ごめんね、シドさん! せつめいしてるヒマないんだ!

 ボクは走って、かあさまの()をつかんで、とうさまの(あと)()いかけた。


 「!? ユージーン! ダメだよ、ここに(はい)ったら!」


 とうさまがそう()うけど、ボクは、


 「―――ダメ!!!」


 (ちから)いっぱい(さけ)んだら、とうさまもかあさまもおどろいてたけど、…えっと、とうさまって()っちゃ、だめだから…、


 「ルシアンさまと、シルヴィアさま! ふたりとも、ここにいないとダメなの! いっしょなの!」


 …こ、これでいいんだよね? クロちゃん!


 ((ああ、上出来(じょうでき)だ。だけど、まだだぞ。気合(きあ)()れていけよ!))


 うん!

 とうさまが「(ぼく)邪魔(じゃま)はしないと、約束(やくそく)してくれるかい?」って()ったよ。

 ボクは、うん、っておへんじしたんだ。だって、これからボクがするコトは、ジャマじゃないもんね。


✮ ⋆ ˚ 。 ⋆ 。 ° ✩


 (ほこら)(はい)って、とうさまが洞窟(どうくつ)のしるしに()をかざしたよ。…しるし、(ひか)ってるね?


 ((ああなったら、もうルシアンは(うご)けない。このまま(いのち)()きるまで、(いん)魔力(まりょく)生命力(せいめいりょく)()()られるんだ))


 え!? た、たいへん! ど、どーすればいいの!?

 …あ! かあさまが、とうさまの()に…!


 「だ…、ダメです! 貴方(あなた)(いのち)()()えになど…!」


 そ、そーだよ! ダメだよぉ! クロちゃん! どーすればいいの!?


 ((そのまま、お(まえ)()二人(ふたり)()(かさ)ねろ! シルヴィアに、「かあさまの魔力(まりょく)全部(ぜんぶ)あげれば、魔力(まりょく)()くなるけどルシアンは()なない」って(おし)えてやれ!))


 ! う、うん! わかった!




 ガシッ!




 ボクは、とうさまとかあさまの()(うえ)に、ボクの()をのっけたんだ。


 「!? ユージーン! (なに)を…」


 「………まりょく! かあさまのまりょくも、ぜーんぶ、あげちゃうの! まほう、きえちゃうけど…、しななくなるんだよ!」


 クロちゃんに()われたとおり、(おし)えてあげたよ。これでもう、だいじょうぶだよね?


 ((バッチリだ! ほら、シルヴィアが自分(じぶん)魔力(まりょく)(おく)ってる。()かるだろ?))


 …うん。とうさまとかあさまにまりょくがないのは、このせいだったんだね。


 まほうを使(つか)ってるときのかあさまたち、すっごくカッコよかったけど…、でも、とうさまとかあさま、わらってる。

 まほうが使(つか)えなくたって、ボクのとうさまとかあさまは、サイコーにカッコイイや!


 ((ああ、ユージーンの()うとおりだ…、………!? (わり)ぃ、オレ、ちょっとヤボ(よう)出来(でき)た。すぐ(もど)るから、おとなしくしてろよ!))


 え!? く、クロちゃん!?

 …えええ、どーしちゃったんだろ………、って、え!? あ、あれ、(なに)!? か、かいじゅうだぁ!


 「キャアッ!」


 わわ! レムさん、ふっ()ばされちゃった! シドさんも…! うわーん! コワイよぉ! …!? え!? か、かあさま!? かあさまが、(けん)をかまえて…、とうさまが(さけ)んで…、


 「シルヴィア!」


 「…大丈夫(だいじょうぶ)!」




 ザシュッ!




 す…、スゴイ! かいじゅうが、まっぷたつだ! まほうがなくなっても、ボクのかあさま、メチャクチャ(つよ)い!


 …ん? クロちゃん…、かいじゅうと(なに)か、おはなししてる? …あ! もどってきた!


 ((ハハッ! オレが()るまでもなかったな! やっぱシルヴィア、スゴイや! …さあ、(もと)世界(せかい)(かえ)るぞ!))


 え? (かえ)るの? そっか…、もう用事(ようじ)()んだんだね。(むかし)のかあさまたちのスゴイところも()れたし、(いま)のかあさまたちも、きっとまっててくれてるだろうし…。

 うん、(かえ)ろう! …わわ! ボクのからだ、()()がったよ!


 「ユージーン!」


 あ、かあさま! とうさまも…。

 ごめんね、ボク、もう(もと)世界(せかい)(かえ)るんだ。このキラキラした(ひかり)(なか)(はい)ったら、時間旅行(クロちゃんとのたび)はおしまいなんだよ。

 タイヘンだったけど、ボク、たのしかった!


 ((そうだな。…ああ、そうだ。もう『とうさま』って()んで大丈夫(だいじょうぶ)だぞ。お(まえ)()まれる未来(みらい)は、これで確定(かくてい)だ))


 ! そうなんだ! ヤッタァ! それじゃあ、


 「エヘヘ、じゃあまたね! かあさま! …とうさま!」


 ボクはかあさまたちに手をふって、(ひかり)(なか)()()んだんだ―――


✮ ⋆ ˚ 。 ⋆ 。 ° ✩


 「ただいま! かあさま!」


 「おかえりなさい、(わたし)天使(てんし)…」


 シルヴィアの(うで)(なか)()()むユージーンを()ながら、クロちゃん…、クロノアルヴァは、


 (天使(てんし)、ねぇ…。(じつ)はアイツ、本当(ほんとう)天使(てんし)()まれ()わりなんだよね)


 そう(おも)いながら、昔々(むかしむかし)のことを(おも)()します。


 クロノアルヴァを(つく)ったのは、アルヴァノクスより(まえ)(くに)、アルヴァティア(こく)創造(そうぞう)した、天使(てんし)・アルヴァティアなんです。

 アルヴァティアは、クロノアルヴァがさみしくならないように、時々(ときどき)()まれ()わることを約束(やくそく)したのでした。




 ―――今回(こんかい)(ひさ)しぶりに、ユージーンとして()まれ()わったアルヴァティア。


 これは、クロノアルヴァだけが()っている、ないしょのお(はなし)




 ☆ おしまい ☆

あらすじにも書いたとおり、こちらは戦記として書いた『白刃の王女と、戦場に舞い降りた天使』の、ユージーン視点のお話です。


シルヴィア視点のお話はコチラ↓

https://ncode.syosetu.com/n2533lq/


大人達の事情が書かれております。未読でしたら、お時間&ご興味あれば(^^)

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― 新着の感想 ―
冬の童話祭から参りました。 昔のお父さんとお母さんに会うって、子供にとってはわくわくすることでしょうね。 けれど、まだ生まれていない子だからこそ、いろんな制約がありますね。大人も今とは違う立場だったり…
お口チャックなユージーン。とってもかわいい!! 一生懸命だけど時々浮かれてしまう感じが本当に微笑ましかったです。 クロちゃん、上手くコントロールしてましたね(笑)。 シルヴィア視点ではわからない、ユー…
ユージーンがすごく可愛かったです。 クロちゃんがユージーンを助けるふり?をして、なんとなーく自分の思い通りにしているような(笑) 過去の過去の内緒話も面白かったです。 読ませていただきありがとうござい…
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