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ダンジョンの壁に転生した件 〜嫌がらせしてたら国家運営に使われるようになりました〜  作者: 空城ライド


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第九話 殴られなくなる

 最初に異変に気づいたのは、俺だった。


 ……殴られない。


 正確には、確認されない。


 あの三人組が通路を通るたび、

 これまでは必ず一度は――


 ・剣でコン

 ・手でペタ

 ・魔力でピリ


 何かしらされていた。


 それが。


 今日は――


 足音だけ。


 「……え?」


 触れられない。


 世界が、ぼんやりとしたまま通り過ぎていく。


 ちょっと待って。

 今のはさすがに、スルーされすぎじゃないか?


 「……完全に無視?」


 レオンたちは、俺の前で止まりもしない。

 剣も振らない。

 手も伸ばさない。


 普通に、歩いていく。


 ――無。


 世界が、すぐに消えた。


 「……」


 静寂。


 いや、静寂はいつも通りだ。

 でも、感覚が違う。


 これは、嫌な静けさだ。


 「……慣れた、ってことか?」


 冒険者にとって、俺はもう

「安全な壁」

「問題ない通路」

として処理されたらしい。


 ミリスの警戒も、

 レオンの違和感も、

 ガルドの愚痴も――


 全部、過去形。


 それ自体は、悪いことじゃない。


 目立たない。

 壊されない。

 危険視されない。


 生存戦略としては、理想的だ。


 ……理想的、なんだが。


 「殴られないと、強くなれないんだよな……」


 そこだ。


 俺の成長条件。


 ・攻撃される

 ・干渉される

 ・環境変化を受ける


 つまり――


 雑に扱われないと、成長しない。


 なんだこの仕様。


 優しくされると弱体化する壁って、

 どんな生態だよ。


 「……これはマズい」


 焦りが、じわじわと広がる。


 このままいけば、俺は――


 ・能力が伸びない

 ・新しい干渉も試せない

 ・いざという時、対応できない


 そして何より。


 「油断したまま、強い奴が来る」


 それが一番怖い。


 今日来ているのは、

 経験者パーティ。


 対処も判断も慎重だ。


 だが。


 このダンジョンに来るのは、

 彼らだけじゃない。


 初心者。

 無謀な探索者。

 あるいは――


 火力で押し切る連中。


 そのとき、俺が“今のまま”だったら?


 「……詰むな」


 冗談抜きで。


 俺は、何かしなきゃいけない。


 でも、目立ちすぎると疑われる。

 やりすぎると対処される。


 つまり――


 ちょうどいい嫌さを、

 維持し続ける必要がある。


 「壁のくせに、バランス調整ゲーかよ」


 思わず愚痴が出る。


 だが、答えは一つしかない。


 「……殴られたい」


 いや、語弊があるな。


 正確には。


 「確認される壁であり続けたい」


 雑には扱われない。

 でも、危険でもない。

 ただ、気になる。


 「……嫌な壁、でいい」


 最悪、

 「一応叩いとくか」

 と言われる壁。


 それが、今の俺の理想だ。


 そのためには――。


 「少しだけ、やるか」


 俺は、意識を表面に寄せる。


 冷やさない。

 滑らせない。


 ただ――


 “触ると、微妙に落ち着かない感じ”。


 石の感触を、ほんの少しだけ変える。

 均一じゃない。

 でも、危険でもない。


 言葉にするなら――

 「手触りが悪い」。


 来い。


 誰でもいい。


 次に来るやつが、

 無意識にでもいいから、

 俺を“確認”してくれればいい。


 世界は、再び無に沈む。


 だが今の俺は、ただ待っているわけじゃない。


 次に殴られる未来を、

 必死でデザインしている。


 ……本当に、何やってんだろうな。


 でも。


 生き残るためなら、

 壁だろうが、嫌われ役だろうが――


 やるしかない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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