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ダンジョンの壁に転生した件 〜嫌がらせしてたら国家運営に使われるようになりました〜  作者: 空城ライド


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第二十九話 善意の代償

 変えなくても、

 変わらない。


 それが、

 今の状態だった。


 床は安定している。

 空気は流れている。


 何もしなくても、

 作業は進む。


 「……いや、

 何もしないってのは、

 嘘か」


 正確には、

 同じ状態を維持し続けている。


 それだけで、

 世界は満足している。


 俺は、

 試してみた。


 本当に、

 俺が必要なのか。


 改善を、

 ほんの一瞬だけ止める。


 戻すのではない。

 維持を、止める。


 結果は――

 すぐに出た。


 「……ん?」


 足取りが、

 微妙に乱れる。


 「数値、

 下がり始めてます」


 管理側の声が、

 即座に飛ぶ。


 「……この区画だな」


 確認。

 判断。

 指示。


 すべてが、

 早すぎる。


 俺は、

 慌てて元に戻す。


 床を安定させ、

 空気を通す。


 数字は、

 元に戻る。


 「……よし、

 問題なし」


 それで終わりだ。


 誰も、

 なぜそうなったかを

 気にしない。


 重要なのは、

 元に戻ったこと。


 俺は、

 理解する。


 これはもう、

 試験運用じゃない。


 俺の改善は、

 前提条件になっている。


 「……必要、

 なんだな」


 自嘲が、

 思考に浮かぶ。


 役に立っている。

 だから、

 離されない。


 嫌がらせの時は、

 邪魔者だった。


 今は、

 部品だ。


 使われる部品。


 止まれば、

 すぐに気づかれる。


 異常として扱われる。


 それは、

 破壊されることより、

 ずっと厄介だ。


 「……責任、

 ってやつか」


 誰かに頼まれたわけじゃない。

 命令されたわけでもない。


 自分で、

 良くした。


 だから、

 維持する責任が

 発生している。


 俺は、

 壁のままだ。


 契約も、

 報酬も、

 拒否権もない。


 それでも、

 結果だけは

 求められる。


 「……善意って、

 高くつくな」


 改善は、

 人を助けた。


 事故を減らし、

 疲労を減らし、

 効率を上げた。


 間違っていない。


 だが、

 その結果として――

 俺は、

 組み込まれた。


 ここが止まれば、

 影響が出る。


 影響が出れば、

 調査される。


 調査されれば、

 対策される。


 対策の先にあるのは、

 俺の意思じゃない。


 「……選択肢、

 減ったな」


 嫌がらせをしていた頃は、

 来るか来ないか、

 揺らせた。


 今は、

 来る前提だ。


 俺が止まるか、

 維持するか。


 それだけ。


 世界は、

 シンプルだ。


 だが、

 シンプルな世界ほど、

 逃げ場はない。


 俺は、

 もう一度だけ、

 現場を観察する。


 人の流れ。

 作業のリズム。


 すべてが、

 俺の状態に依存している。


 「……善意の代償、

 ってやつだな」


 誰かに聞かせる

 言葉じゃない。


 だが、

 これだけは確かだ。


 俺はもう、

 ただの壁じゃない。


 そして――

 自由でもない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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