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ダンジョンの壁に転生した件 〜嫌がらせしてたら国家運営に使われるようになりました〜  作者: 空城ライド


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第十六話 準備

 次に誰かが来るまで、

 どれくらい時間が経ったのかはわからない。


 だが、以前のように

 「何も起きない時間」ではなかった。


 俺は、ずっと考えていた。


 どうすればいいか。

 どこまでやるべきか。

 そして――

 どこから先は、やってはいけないのか。


 答えは、出ない。


 代わりに、

 一つだけ、はっきりしたことがある。


 「……このままじゃ、いずれ来る」


 より強い冒険者が。

 より雑で、

 より火力のある連中が。


 慎重じゃない。

 対話もしない。

 ただ――壊す。


 そういう相手が来た時、

 今の俺では、足りない。


 滑らせるだけじゃ、止まらない。

 冷やすだけじゃ、意味がない。

 誘導だけじゃ、間に合わない。


 「……危険度を、上げるしかない」


 嫌な結論だ。


 それはつまり――

 怪我をする前提で、動くということ。


 俺は、罠を見る。


 落とし穴。

 壁槍。

 天井の落石。


 どれも、今までは

 「当たれば危ない」程度に

 調整されていた。


 事故扱いできるライン。

 言い訳が効くライン。


 だが――。


 「それを、越える」


 越えたら、

 もう戻れない。


 俺は、少しずつ

 “環境”を組み替える。


 罠そのものは、触らない。

 位置も、構造も変えない。


 ただ。


 ・逃げ場になる通路を、嫌にする

 ・立ち止まりやすい場所を、限定する

 ・視線が集まる方向を、ずらす


 回避できたはずの未来を、削る。


 それだけだ。


 それだけなのに、

 結果は、まるで違う。


 「……これ、やりすぎじゃないか?」


 一瞬、そう思う。


 だが、

 やりすぎかどうかを決めるのは、

 俺じゃない。


 踏み込んだ人間だ。


 俺は、選択肢を並べるだけ。


 選ぶのは、向こう。


 ――足音。


 来た。


 今度は、少人数だ。


 足取りが軽い。

 警戒はしているが、

 過信もある。


 嫌な組み合わせだ。


 「……この階層、噂ほどじゃないな」


 誰かが言う。


 噂。


 胸――いや、

 思考が、きしむ。


 俺は、動かない。


 まだだ。


 今日は、

 結果を出す日じゃない。


 今日は――

 確かめる日だ。


 どこまでやれば、

 人は戻れなくなるのか。


 どこまで削れば、

 選択肢は“罠”になるのか。


 俺は、

 ぎりぎりを測る。


 落ちない。

 でも、近い。


 怪我はしない。

 でも、冷や汗は出る。


 冒険者たちの足取りが、

 少しずつ硬くなる。


 声が減る。

 相談が増える。


 「……嫌な通路だな」


 誰かが言う。


 その言葉を聞いて、

 俺は理解する。


 ここまでは、戻れる。


 だが、

 この一歩先は――

 戻れない。


 「……次は」


 思考の中で、

 静かに言葉を置く。


 次は、

 “確認”じゃない。


 “実行”だ。


 誰かが、

 怪我をする。


 下手をすれば、

 死ぬ。


 その未来を、

 俺は理解している。


 それでも。


 「……準備は、できた」


 言い訳は、もう通用しない。


 事故でも、

 偶然でも、

 環境のせいでもない。


 俺が、

 そうなるように

 世界を並べる。


 世界は、無に沈む。


 だがその無は、

 張り詰めている。


 次に起きることは、

 きっと――

 取り返しがつかない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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