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2:他人格との接触

 次に僕が目覚めた時には体中に包帯が巻かれていた。

「これは・・・いったい?」

《大丈夫かい?楓雅。》

「君は……?」

《内側に話しかけるように。イメージしてみてくれ。》

≪こうかな。≫

《オーケー。通じているよ。》

≪それで君たちはいったい誰なの?≫

《たち・・・か。お主。儂らに気づいておったか。》

《すごいですねぇ。》

《いつから気付いていた?》

≪勘だよ。なんとなく10人近く居る気がしたんだ。≫

《10人だと?儂を含めてお主以外は4人しかいないはずだ。》

≪けど10人以上居ると思うんだけど。≫

《確かにここには僕を除いて20人いる。》

《リーダー!?お主、知っていおったのか!》

《うん。僕が他の人格たちも創ったからね。彼らも一部がそろそろ起きるはずだ。》

《ふわぁ・・・。あ。初めまして〜!ニコの名前は……まだないよ!》

≪名前が無いの?≫

《うん。みんな名前はないよ。》

≪じゃあ僕が名付けてあげる。≫

《いいのかい?》

≪うん。困るでしょ?まず、君!≫

《僕?》

《君は僕に似てるから楓吾(ふうご)!》

《良かったな。リーダー。》

≪次は君だよ!≫

《俺か?別に俺はいい。リーダーだけで。》

≪駄目だよ。君の名前はレン。いいね?≫

《・・・ありがとうな。》

《私にもつけてくれるんですかぁ?》

≪もちろん。君の名前は莉奈(りな)!≫

《ありがとう。困ったことがあったらいつでも莉奈お姉さんに聞くのよぉ。》

 そののんびりとしたお姉さんはやさしく僕に言った。

 それに僕は温かい心に触れた気がした。

≪うん。ありがとう。≫

《となると次は儂か。》

≪うん。そうだよ。おじいさんの名前は鎌三(けんぞう)じいちゃん!≫

《鎌三……か。良い名だ。感謝する。》

 その声は心なしか先ほどの不愛想な物じゃなくて、武士が心から感謝するような心強さがあった。

≪君はニコでいいかい?≫

《うん!ニコがいい!ニコ、(すみれ)よんでくる!》

≪すみれ?≫

《どうしたの?ニコ。》

《あるじが私たちに気づいたの!》

《おや。そのようですね。》

≪君は?≫

《私は菫。はじめましてですね。》

≪はじめまして!≫

《楓雅。親は?》

 楓吾がふと思い出したように楓雅に聞いた。

≪もう仕事。僕も朝ごはん食べて学校にいかなくちゃ。≫

《朝飯だと?リーダー。これは……》

《ああ。可能性としてはあるな。レン。》

《どういうことー?ニコにも教えて!》

《そうですね。つまり、あの母親は少しかもしれませんが息子にわざわざ朝食を作っているかもしれないということですね。》

《いい人?》

《いい人ではありませんが……。》

「いただきます。」

 机の上にはベーコンエッグとブロッコリーが添えられていた。

《結構あるんですねぇ。》

《流石に儂らもこれは想定外だ。》

《Haben sie nicht ihr eigentliches Ziel vergessen?》

《Du hattest doch früher gesagt, dass du herausfinden willst, warum Mutter den Verstand verloren hat.》

《………ドイツ語……か。》

 小さく呟かれたその言葉に小さくレンは反応したのだった。


 僕は家を飛び出し、学校へ走っていった。

「遅刻しちゃうかなぁ……?」

 みんなとの話が楽しくて仕方なくてすっかり時間が遅れちゃった。

 けど、僕には味方がいるって分かって嬉しいな。


「今日も怪我して。大丈夫?」

 同級生が僕の心配をしていた。皆心配していた。

 もちろんみんな虐待を受けているということは知っていた。

「大丈夫だよ。ほら。ぼく元気でしょ?」

 何度かジャンプして元気を装う。

 その裏で体には激痛が走っていた。

 あれ・・・意識が・・・

《僕が出た方がいいね。》

「・・・。みんな。話がある。」

「どうしたの?」

「僕は楓吾。楓雅の増えた人格の一人。僕は、家庭裁判をしようと思ってる。」

「かてーさいばん?」

 周りに集まっている同年代の少年少女たちはいかにもちんぷんかんぷんだった。

 けど、彼を守るためにはこれが最善なはずだ。

 僕は、これ以上彼に傷ついてほしくはない。

「本当にいいんだね?」

 先生が僕の目の前に歩み寄ってくる。

「これが最も彼の為になる。僕はそう思ってる。」

「そうか。それじゃあ手続きをする。少し待っていてくれ。」

「ありがとうございます。」


 裁判までのカウントダウンは、今。始まる。

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