第一話「紀元前一万年〜」
実際には、存在すらしていなかった関東地方の南に位置する小笠原の文明、あり得ないことかも知れませんが、完結するまで読んでください。
今から七万年前、日本列島とユーラシア大陸は陸続きであった。そして、ユーラシア大陸から日本人の祖先が日本列島へやってきた。その多くがクロマニョン人であったが、関東地方に住んでいた人類は、七万年前とは思えない高度な文明を作り上げた。その人類を人々は、こうよんだ。
『小笠原人』と。
紀元前三万年前、小笠原人は関東地方に住んでいた人類と共に、数多くの船で関東地方の南に位置する小笠原諸島へと渡って行ったとされている。そして、約二万年の間、お互いに助け合い生きていった。
しかし、今から約一万年前、三宅島にある三原山が噴火した。そして大規模な食糧難に陥った。三宅島では、互いの食糧を狙いはじめ、戦いが始まろうとしていた。
そんなとき、大島から大量の食糧が運ばれてきた。三宅島の人々は戦わずに済んだのである。これを気に、小笠原各諸島ですべての島をまとめるために、大島のある部族が、小笠原帝国の前身である小笠原国の建国を宣言した。その部族の名は、「太閤族」と呼ばれた。
大島 太閤族宮殿
「太閤様。」
「ん?何かあったのですか?」
「太閤殿下、下の者に対しては敬語はお止めくださいと言っているでしょう!」
「しかし、このしゃべり方に慣れてて、急に変えろといわれても、無理ですよ。」
「また、そんな事を言っているから皇太子様から呆れられているのですよ!」
「まだ十歳なのに、しっかりしていることは、いい事でしょう?将来が楽しみですよ。」
「はぁ・・・、まあ生まれつきそう言うしゃべり方で育てられたのですから、仕方ありませんね。」
「すみません。」 「そんな事より、太閤殿下、いい知らせがございます。」
「いい知らせ?それは、何ですか?」
「父島と母島の部族が国家形成に協力してくれるそうです。」
「本当ですか!それは、素晴らしい事です。これでこの国の未来は明るいぞ!」
「太閤殿下。」
「今度は何ですか?」
「そ、その、皇太子様が殿下に会いたいと・・・。」
「息子が、ですか・・・。分かりました、通してください。」
「かしこまりました。」
太閤宮殿の中にある、太閤宮殿の部屋の扉が、勢い良く開け放たれた。
「父上!」
「おお、わが息子シトウ、今日は一体なんの用で・・・。」
「父上、また下の者に敬語を使ったそうですね!」
「おや、もう聞いたのかい、お前の情報網にはいつも感心させられるよ。」
「僕の前だけ使わなくてもダメだよ!父上は太閤なんだから、もう少しちゃんとしてほしいよ。」
「父さんも頑張るよ。さあ、もう夜も遅い。早く寝る支度をしなさい。」
「はい、おやすみなさい、父上。」
「おやすみなさい。」
太閤は、息子が扉を閉めていくまで、見守っていた。
「・・・本当、出来のいい息子ですよ、シトウは。わたしなんかよりずっと太閤の資格があります。」
「子どもは、親の背中を見て育つ、と言いますから、皇太子様も太閤様を目標に頑張って来たんだと思いますよ。」
「息子に恥じない立派な父親になるために、これからも頑張っていこうと思います。」
「頑張ってください。」
「ありがとう。」
こうして、一万三千年に及ぶ小笠原帝国の歴史が始まったのであった。
登場人物紹介
太閤(初代太閤:ケストリア)・・・小笠原国のすべてを仕切る王のような存在。しかし、小笠原国ではそれぞれの部族から1人、代表者を出して大島にある、太閤宮殿で話し合い決まったことを実行するので、権力はあまりない。
皇太子(第二代太閤:シトウ)・・・第一代太閤ケストリアの息子、下の者にも敬語を使う父を時々注意している。父であるケストリアのことを尊敬しており、大人になったら父上のような人間になりたいと思っている。