トワールもうすぐ3歳は、めんどう事を保護者に丸投げした。
「すご…… い」
突然の緑竜の登場に言葉を無くしたら、回りの怒号や騒音も消えて鎮まった様だ。
『絆児よ…… これは何事か?』
「えっ…… わたちにも、よくわかりゃないです……」
「緑竜様!!」
緑竜様の問いにどう答えたら良いのか? 戸惑っていると…… 剣を持った男性が現れて、緑竜様の前に片膝を付いて頭を下げた。
「とうさま!」
「な? と、トワールなのか!?」
所々に付いた汚れから、戦闘に参加していた事が確認できる。
「とうさま! にいさまは? いたいとこない?」
「私とハルトは無事だが…… トワール、お前とナオミは無事なのか? それに…… その姿とその侍女は? 連れに侍女はナオミだけだったが?」
「マスターのお父様ですね。私は「カナタ!」マスター?」
「ぎんがのかなたから、わたちをたすけてくれたから…… なまえがないのなら、あなたはカナタ」
「はい、今日この時から私はカナタです。マスターのお父様、私はマスターのトワール様に召喚された…… 精霊の様な者だと思い下さい」
「せ、肉体を持つ精霊だと!? トワールには高位精霊を喚ぶほどの召喚師の才能が?」
『驚く事は無い』
「りょ、緑竜様?」
『そなたの娘…… 絆児は高位種族になったのだ』
「こうい…… しゅぞく?」
『うむ、エルフ族などではハイエルフなど言うが…… 絆児の場合、高位の混血種族だから…… ハイハーフとも言うべきか?』
どうなんだろう…… ハイクォーターとかも違う感じだし…… 高位混血種族だから…… ハイカオス族って感じかな?
「高位種族…… しかし、高位種族になるには長き時や修練が必要不可欠なはず…… トワールは、私の娘は、まだ数えて3年しか生きて居りませんが?」
『その者の影響であろう…… 召喚されし者よ』
「はい、マスターが私を呼び出した時…… 生命活動維持が危機的な状態でした。ですので、私の機能でマスターの身体を最適な状態まで再生回復しました」
「最適な?」
『生命の最適…… 即ち進化で高位種族化の事だったのであろうな…… して、何故に争っているのだ?』
「はっ、それが…… 私達は襲撃された身でして……」
「東の聖なる緑竜様とお見掛けします!」
『うむ? 御主は何者か?』
緑竜様と父様が話していると…… 一人の男性が近付いて頭を下げた。
「我は、この地より西の草原に住む獣人のハイエナのバルラガ…… この地に捕らわれし獣人族の解放に来た者! サイハ男爵よ。東の大森林を我等に明け渡し、その罪に首を差し出せ!」
「「はあ!?」」
この男性は何を言っているの?
『この地に捕らわれし獣人族の解放とな? どう言う訳か話せ』
「はっ、緑竜様…… このサイハ男爵は、幼き獣人の娘を拐い奴隷しているのです。その証拠は…… その幼き獣人の娘達です!! 怖かったであろう? すぐに我等獣人の集落に連れて行くからな?」
「とうさま……」
「ああ、おのれ…… 賊めが…… 私の娘達が狙いか!!」
「娘? 何を戯けた事を…… 貴様と貴様の嫁は獣人では無かろうが!!」
「知らんのか? 私の母は山猫の獣人族だ。私は父方の血が濃く出て、エルフ族と人族の顔立ちなのだよ」
「な!? ふざけた事を…… 緑竜様の前で罪を逃れる気か!!」
あれ? 何で…… この人…… ナオミの事を知ってるの?
「りょくりゅうさま、このひとのはなち…… へんです」
『変とは?』
「ナオミがうちにきて5か…… うちからにしのそうげんまで…… 5かじゃあいけないとおもうの」
うちの男爵領は、東の辺境の最果ての開拓地……
兄様は貴族学院に入学しているから、話で地理の事を聞いたけど…… この男爵領地から東の辺境伯の領都まで、馬車で3日以上かかる。
さらにそこから西にあるの王都まで、普通に馬車では10日…… 急ぎでも7日以上かかるはずだ。
この男性の言う王都と王都周辺の中央貴族領の手前、東の辺境伯領の西にある他貴族領の草原でも……
ナオミを知ってから行動するには、かなりギリギリな上にこの人数の武装集団の移動……
「あなた、だれにいわれてきたの?」
「何を?」
「きょかがないしゅぞくのしゅうだんいどう…… せんそうこういだとおもわれるよ」
「な……」
父様と兄様が話していたんだけど…… 東の辺境伯領と中央貴族領の堺の領地が揉めているらしい。
原因は…… 東の辺境伯領の西領地を治める子爵の領地で、賊が頻発に出たらしい。
その族の大半が…… 獣人種族で、かなりの被害が出ていると話していたんだけど……
『その方…… 血の臭いが濃いな…… しかも、幼き者達の臭いがする…… 貴様…… 無垢なる者達を殺したなぁ!!!』
「ヒイィィィ!!?」
緑竜様の突然の咆哮に…… 獣人達が泡吹いて倒れ出した。
「くちゃい……」
しかも、全員…… 大小漏らして……
「りょ、領主様!? 緑竜様…… ですか?」
『うむ、気にするな』
「は、はい! 領主様、ご無事で?」
「私達は無事だ。そなた達とハルトラインは無事か?」
「はい、負傷した者も居りますが命に別状は無く。ハルトライン様は負傷していません」
「うむ…… 動ける者は賊を捕らえよ。それと早馬を町に走らせ応援を呼べ」
「はっ! 緑竜様、領主様、お嬢…… 様…… し、失礼します!!」
あれ? あの騎士さん…… 私を見てから一瞬だけど…… 変だった様な?
「トワール…… とりあえず、このマントを羽織りなさい」
『ハァ~ハッハッハッ! ゆかいゆかい。どうじゃあ、絆児よ…… 王位を求めないか?』
「そうゆうの…… めんどうくちゃい…… とうさまとにいさまがやって」
「と、トワール!?」
前世から責任者には、絶対に向いてないので……
保護者に丸投げした。