覚醒したのは…… 確率操作?
「いやぁぁぁぁぁ!?」
わたちは【トワール】。
今日は、開拓地の進展を見に馬車で遠出していたのですが……
「トワールさま!」
馬車の外がうるさくなって、おとうさまとおにいさまが出た後に馬車が走り出した。
わたちと【ナオミ】は、激しく揺れる馬車の中で何かにしがみつこうとしたのですが……
わたちは、激しい揺れに傾き開いた馬車の扉から投げ出された。
あ…… 死んだ……
振り落とされて地面に叩き付けられた後……
自分に倒れてきた馬車を見ながら、数えて3年にも満たない人生が駆けていく……
ああ…… 葛餅が食いたかったな……
黒蜜ときな粉が…… たっぷりとかかるプルプルの……
うん? 葛餅って何?
ふいに知らないはずの食べ物、その姿形と味を思い出した……
ああ…… 二度目の人生は短かったな……
幼女の〝わたち〟の中で、前世の〝おっさん〟だった自分が思う……
前世の自分も、年末年始の喧騒の中……
なけなしの金で葛餅を買いに入ったコンビニで…… 強盗に刺殺された。
運の無い人生だった……
どうやら、転生しても運の無さは変わらなかった様だ。
そう思った瞬間、頭に〝即死確率100%〟と出た。
そんなの見たら分かるんだよ!
「どうにかちて!!!」
八つ当たりで叫んだら、目の前に迫った馬車が…… ブレた。
「ぎゃあ!?」
下半身に激痛を感じ、失いそうな意識の中で即死確率を確認すると……〝死亡確率100%〟に変わった。
即死確率では無いけど、死亡確率100%…… このままだと確実に死ぬ!!!
「だ…… だれか…… た、たすけて……」
薄れていく意識を必死に保ちながら、死亡確率が下がる様に足掻くと……
死亡確率の横に〝召喚魔法発動…… 成功確率0%〟と出た。
「ふ…… ふざけりゅなぁ!!!」
生死の境中に発動した召喚魔法が失敗確実って、運が無さすぎるだろうが!?と前世よりになった意識が叫んだ。
〝召喚魔法発動…… 成功確率100%〟
『マスター登録を確認…… マスターの異常を感知…… 時間ときを停止します……』
自分の身体が浮いた感覚を感じた。
・
・
・
ここは…… 何処?
無数の光が飛び交う中で、幼いわたちとオッサンの俺の意識が起きる。
『マスター、お目覚めですか?』
誰?
『マスターに召喚されました。万能型自立宇宙航行戦艦のメインシステムです』
はい? 宇宙…… 戦艦のメインシステム…… えっ!?
『召喚時にマスターのボディに欠損を感知しました』
ボディに…… 欠損?
『マスターの下半身は、転倒した物質により切断…… 損傷が激しく、切断した下半身を破棄しました』
下半身を破棄…… わたち…… 死ぬの?
『いいえ、私の艦内の治療施設のシステムで再生治療が可能です』
じゃあ…… わたちは、助かるの?
『はい、超空間航行システムにより停止した時の中で…… マスターのデータの中から、最も〝最適なボディ〟に再生させますので、ご安心を』
そう…… なんだろう…… すごい…… 眠い……
『再生治療を開始…… 再生治療が完了後には眠りから覚めるので、安心してお眠り下さい』
その時の私は、死を退けた安堵で油断していた……
宇宙船を製作した種族に付いて、ちゃんと確認していれば……
まさか〝両性〟になるとは、治療の中で微睡む……
この時の私は知ら無い。