2022年1月4日放送 フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日 八巻和行の七転び八巻 妄想【愛の劇場】#17 書き初め
サクソフォン奏者八巻和行さんのラジオ番組
こうのすFM フラワーラジオ
フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日(午後4時~午後6時)
八巻和行の七転び八巻
というラジオ番組の投稿コーナー
妄想【愛の劇場】
毎週パーソナリティ八巻さんから出題される【作品のテーマ】を小説風に書いた作品を投稿するコーナー。
小説の書き方を知らないシロウトが投稿コーナーに参加。
そのコーナーに投稿した作品をこちらに投稿しています。
妄想【愛の劇場】のコーナーで、絶賛!妄想仲間を募集中!!
こんな感じで大丈夫なので、コーナー投稿に興味がある人がいてくれると嬉しいです!
《番組への参加方法》
①フラワーラジオが聴けるように、ListenRadioのアプリをダウンロード
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②パーソナリティ八巻さんのX(旧Twitter)をフォロー
③毎週日曜日の夜に、八巻さんのX(旧Twitter)から【作品のテーマ】が発表
④八巻さんのX(旧Twitter)のダイレクトメールから投稿
※番組放送当日の火曜日午後6時頃までに投稿できれば、コーナーの時間に間に合います。
※何故か八巻さんが初見で読むルールのようなので、漢字には「ふりがな」をふって下さい。
小説の書き方を意識しながら文字おこしをしています。
文章はできるだけ、投稿当時のままにしています。
言葉が二重になるのが気になるところは、手直しをしています。
サイト投稿回数 第17回目の今回は………
2022年1月4日放送。
妄想【愛の劇場】#17 書き初め
毎年、新年を迎える日は青空が広がっている印象がある。
今年も初日の出を拝む事なく、一年が明けた。
「正月って言っても、いつもの通り1日が始まっただけだろ?」
「八巻くんのそういうところ、つまらない。新しい年になったんだよ。気持ちが良い感じがしない?」
以前交際していた奏という女性に、そう叱られた事がある。
両親も歳の離れた妹たちも、正月の空気にワクワクしていたようだが、八巻にはその気持ちが分からなかった。
一人暮しをしてからは、特に分からない。
テレビを点けると、お正月特番がやっている。
テレビの中ではタレント達が普段は着ないであろう着物で着飾っていた。
画面が切り替わると、とある高校の書道部が画面狭しと六畳くらいある大きな半紙に豪快な文字を書いている。
彼らの筆パフォーマンスを彩るのは、ラテン系バンド『ラ・バンバ』の生演奏。
演奏されているのは、お正月といえばこの曲と言っても過言ではない「春」。
筆とパーカッションのリズムが不思議なこの組み合わせに興味を惹かれながら、書道部のパフォーマンスに目を奪われていた。
高校時代、八巻は書道部の女子生徒に恋をしていた。
墨田という、同じクラスの女子生徒だった。
墨田は、鈴の音の様な可愛らしい声で喋る女子生徒だった。
しかし、墨田はその声が好きではないと言う。
彼女は、自分の声にコンプレックスを感じていた。
八巻は墨田の声が好きだったが、恥ずかしくて墨田にはそんな事が言えなかった。
八巻は墨田をいつも遠くから見ていた。
墨田は女子同士でも、喋るより聞き手に回る事が多かった。
当時いくつかある選択授業の中で、八巻は書道を選択授業に選んでいた。
八巻は書道が苦手だったが、墨田と過ごせる時間でもあるので授業の時間自体は嫌いではない。
ある日、八巻は墨田の声が聞きたくて思い切って声をかける事にした。
「書き初めの課題。墨田は何を書くか決めたか?」
八巻の問いに墨田は首をふるだけで、声を発して答える事はなかった。
声が聞けず少しがっかりした。しかし、なんとかして声を引き出せないだろうか。
自分の席に戻った八巻は墨田をこっそりと観察しながらそんな事を考えていた。
ふと、八巻は墨田が一人の男子生徒を見つめている事に気が付いた。
草田という筆文字のとてもキレイな書道部の男子生徒だった。
八巻はなんとなく、墨田が好きなのは草田なのではないかと察した。
八巻が墨田を見つめる様に、墨田が草田を見つめている。
草田は集中して半紙に筆を踊らせる。
「俺と墨田と草田で三角関係か……」
八巻は口元を歪ませて苦笑いした。
正月が明けた新学期の一番最初の書道の授業で、課題を提出した。
八巻は課題で何を書くか散々考えた結果「希望の光」という文字を書いた。
後日、空き教室を利用した作品展示会の会場に課題の作品が展示された。
そこにある草田の作品は思った以上に達筆で、八巻には何と書いてあるか分からなかった。
八巻はふと、墨田の様子を伺った。
草田の作品を見ながら、頬を紅く染めている墨田が目に留まった。
八巻は草田の姿を探したが見当たらなかった。
まさか、草田の達筆過ぎるこの作品は、草田から墨田へのラブレターなのか?
鈍い八巻にもなんとなくそれが分かった。
何が三角関係なのか。元から自分は入っていなかったじゃないか。
二人の世界が書道の世界の中で、しっかりとつくられていたのだ。
墨田は八巻にとっての希望の光ではなかったのだ。
テレビの中の現役高校生の書道作品が力強く、そして華々しく出来上がる。
彼らの作品を彩るラ・バンバの演奏とのコラボレーションも素晴らしかった。
八巻はテレビの中のキラキラした青春を謳歌する高校生に、心を奪われてた。
自分が恋する人は、常に輝いていた。
自分が恋する人には、常に好きな人がいた。
好きな人がいるから輝いて見えるのか。
だから、惹かれてしまうのか。
しかし、自分のために輝いていた希望の光を、八巻は自身の手で手放したのだ。
まだ、忘れる事のできない奏という希望の光を。
いつか自分のためだけに輝いてくれる希望の光に、もう一度出会う事ができるのだろうか。
テレビの中の青春に輝く高校生を観ながら、八巻はそう思っていた。
ありがとうございました。
次回もラジオ番組の投稿コーナー
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妄想【愛の劇場】#18「切手」