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シリウスをさがして…  作者: もちっぱち


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第55話


ーーー




裏路地のホテルから1人で出て、歩道を歩く。まだ光のページェントは光っていた。まばらに人が行き交っていた。



 雪は数センチ足元に積もっていた。


おもむろにバックからスマホを取り出し、ある人に電話をかけた。




無視されてもいい。




冷たい態度をとられてもいい。




今はあの人の声が聞きたかった。





3コールして出ないと思ったら、スマホ画面に時間が表示される。





 通話が開始されていた。





 声が出なかった。




『もしもし?』



『お疲れ様~。んじゃな、陸斗ー。』


 



 電話の向こうで康範の声がする。ちょうどバイトが終わったようだった。


 


 バイト先のコンビニの屋根のある場所で電話に出ていた。



 雪が降っている。



『おう。んじゃな、お疲れ~。……もしもし?あれ、繋がってないのかな。』



 陸斗は電波の調子が悪いのかとスマホの画面を見たが、通話中になっていた。



「あ…。」



『あ、声してる。紬?』


 いつもの陸斗の声で心から安心した。 


 

 あの別れようと言われた時の声じゃない。


 優しい声で応えてくれたことに涙した。



「陸斗…。」



手を胸に当てた。病気じゃない。

すごく苦しい。



陸斗の電話から鼻をすする音が聞こえた。



歩道で話してたため、車の走る音が聞こえる。




『紬、今どこいるの?外?俺、今バイト先のコンビニいたけど…。』




 街中に向かう歩道を自転車を押しながら話す。




 辺りを見渡した。




 感極まってその場にうずくまった。



 立っているのができなかった。



 心配してくれる声が嬉しくて発せない。





 陸斗は少し離れた商店街通りに入る手前の歩道でスマホを持ちながら、うずくまる女性を見た。






急いで、小走りに陸斗は近づいた。





スマホをバックにしまう。




「紬、風邪、ひくよ?」


  



 バイト先のコンビニは定禅寺通りに近いところにあった。




 紬のいる場所は、商店街に,入る手前の歩道にいた。



肩に手をそっと差し伸べる。





「陸斗…。」





 声をかけられて、顔を見上げる。

 自転車を押しながら、こちらを見ていた。


 眉毛をハの字にしている。




 どうしてこんなところにいるんだろうと不思議に思いながら、体を起こすのを手伝ってあげた。



「ほら、雪降ってるし、風邪ひいちゃうから。家に帰らないと…。」




自転車のスタンドを下げて止め、両肩を,しっかりと支えて立たせた。





 紬はガシッと陸斗の体を抱きしめて離さなかった。夜とはいえ,周りにはチラホラ通行人がいる。




 恥ずかしすぎた。




「つ、紬? どーしたの? 体、痛いんだけど。」




「…私、やっぱり陸斗じゃなきゃヤダ。陸斗以外の人,考えられない!しっかり見てなくてごめんなさい。」





 泣きながら言う紬。やっと、言えたと,安堵すると。





「今頃言うの?そんなのズルすぎるよ。俺は別れるって言ったよね?!」



 言ってることと行動がともわない。



 紬を抱きしめながら話してる。

 イライラが止まらない。




 人目を憚らず。想いがあふれてくる。

 陸斗のスイッチが入った。



 意味がわからなく、頭に疑問符を浮かべる。




「…おかえり。」



 冷静になり、額に口づけた。



 やっぱり陸斗の腕の中は安心できた。


 

 紬のホームポジションはここなんだと感じた。



「ただいま。」




 お互いに見つめ合っていたら、急に恥ずかしくなった。



「どっか行く?」





「あっちに行こう!」






「う、うん。」






既に時間は22時。





 さっきまで光っていたページェントはすっかり消えていた。




「あ、ページェント。もう終わっちゃったね。」



 陸斗は後ろを向いて指を差す。



「うん。別に見なくても私は平気だよ。陸斗に会えたことの方がページェントより嬉しいから。」





 陸斗はキュンとして、紬の手を握った。




「そっか。なら、良いんだけど。ごめん、自転車、バイト先に置いてきていい?2人乗りできないし。帰りはタクシーにしようかなと思って。」



「うん。一緒に行く。」



バックを背負い直して言う。


紬はそばに駆け寄る。



「夜遅いし、危ないからもちろん一緒だよ。」



 握っていた手がキツくなる。



 話す言葉がいつも通りの陸斗で安心する。



 自転車をバイト先のコンビニ駐車場に置き、鍵をかけた。


 両手が開いて、尚更、密着度が増した。



「行ったことないんだけど、あっちの方、行ってみていい?」



陸斗は、頬を赤くして、ネオンが光る建物を紬がさっき行ってきた裏路地を指を差す。



恥ずかしいそうに何度も頷いた。




アパートの一室のような、玄関のドアを開けて、さっき行った部屋とは違う建物を選んだ。


 和風の部屋だった。



クリスマスイブの夜が深まったため、開いてるところが少なかった。



「何か、旅館みたいなところだね。」



「お風呂は温泉になってるみたい。部屋はシンプルだけど、温泉良いね。」



「一緒入る?」



「う、うん。ちょっと水分補給していいかな?」


バックに入ってたミネラルウォーターを飲んだ。湯あたりしては大変だと慌てた。



「あ、紬、遼平さんに連絡した?」



「え?? 電話してない。」



「俺のスマホに鬼電来てるけど。着歴が半端ない。どうする?」



「俺のうちに来てることにする?」




「あ、私のにも着信入ってた。お父さんのラインも既読スルーしてた。めっちゃ心配してる。陸斗とお父さん、連絡先知ってたの?!」


 

「うん。そうだよ。ほら、返事しといたらいいよ。」



「うん。電話するね。」




 紬は父の遼平の着歴からタップした。

 一瞬で電話に出た。




『紬?! 今どこにいたの?』



「お父さん、大丈夫!今、陸斗のお家にお邪魔させてもらってた。」



「そうなの?洸くんに、連絡したら既読スルーだし、着信にも出ないから。さっき陸斗くんにも電話したけど、返事なかったから事件にでも巻き込まれたんじゃないかと思って、心配してたよ。無事なら良かった。陸斗くんのお家なんだね。ご迷惑ならないようにね。今日、家には帰ってくるの?」



「あ…何だか、妹さんがパジャマ貸してくれるって言うから泊まろうかなと思ってて…。」



「妹さんいるの? そうなんだ。なら、安心だね。んじゃ、安心,安心。おやすみ。」



電話が繋がらないことに不安になった遼平は居場所がわかって安堵した。


本当は違うけども、親を安心させることも子どもとしてのつとめだと思った。



「陸斗、電話の会話聞いてたよね?そう言うわけなんだけど、良いかな?お泊まり…。」



「よく平気で嘘つけるね…。紬ってそんな性格だったっけ?」



「そう言うこと言うなら…帰ろうかな。」



バックを持ち上げた。




紬の肩をおさえる。



「嘘,嘘。今の無し。ごめん、ごめん。嘘ついてくれてありがとう。念のため,疑われると大変だから、口裏合わせておくわ。」


「え?」


「もしもし、悠灯?もし父さんが俺のこと言ってたらーー」


陸斗は万が一のことを考えて、悠灯には本当のことを伝えておこうと電話しておいた。


 どこにいついるかはさておき、誰と一緒かは言っておかないと父のさとしに紬の父の遼平から電話が行った時困るだろうと思っていた。





『ふーん、そう言うことね。分かった。自分で言えばいいのに…。まぁ、今日父さん飲み会だって言ってたから大丈夫だと思うよー。ごゆっくり~。良いねぇラブラブで。それじゃぁ、おやすみなさーい。』



理解のある妹で良かった。むしろさとしが飲み会で良かった。




「これで大丈夫!」



「何か、悪いことしてるみたい。」



「えー、悪いことなんてしてないじゃん。一緒にいたくているんでしょ?」



 スマホを触りながら言う。そのままテーブルの上に置いた。紬は持っていたバックを部屋の端に置いた。



「温泉!入ろ!」



 急にテンション高めになった陸斗は、仕事で疲れた体をさっぱりさせたくて、服を脱ぎ始めた。下着だけ残した。



 紬は両手で目を塞いだ。



「…今更だよね。」



「そうだけど。」



 陸斗は紬を横に抱っこして連れて行く。


 軽く小さな声で悲鳴をあげた。



 服を脱いで、お風呂の洗い場で一緒に体を洗いあった。



 前はあんなに目の前で服を脱ぐことを恥ずかしがっていたのに、今は全然平気だった。



 お互いにホクロの位置を確認した。



 陸斗は左目尻の近くと頬、背中の後ろの方、紬は、あごの下と、右脇腹の方。



 明るいところで見るのは初めてだったかもしれない。



 温泉が入った湯船の中に抱っこされるような姿勢で一緒に入った。



 肩から腕でぎゅっと掴んで、抱きしめた。



 紬の右肩側から見つめ合う。



 すべすべの美肌効果があるお湯につかってそっと肩を撫でた。




 顎をくいっとあげて、キスをした。


 


 全身に鳥肌がたちのぼる。



 一気に熱があがり、のぼせそうになった。



 タオルで体を隠してザバーっとお湯の中から脱出した。



「のぼせちゃうからあがっていい?」



「うん。あがろう!俺も熱くなってきた。」



「待って!先にあがるから着替えてから呼ぶから。」



「だから、今更でしょう。」



「お願い!」



 着替えているところを見られたくない紬はお風呂場のドアを閉めた。


レベルアップしたかにおもわれたが着替える姿は見せたくないようだ。


 

脱衣所にあったバスタオルで体を拭くと、下着と浴衣を慌てて羽織る。ひもを急いで結んだ。



「今、着替えたからいいよ。あっちで飲み物飲んでるね!」



「分かった。」



 ザバーっと水音を立てて、お風呂から上がった。



 同じように体を拭いて、浴衣を羽織った。素早くひもを結ぶ。




紬は、ベッドの上でぬいぐるみのクマのように座りながら、ペットボトルの水を飲んでいた。



 

 少しのぼせて顔が赤くなっていた。




 旅館風の部屋でもベッドが置かれている。布団は和柄の花模様だった。




 陸斗も隣に座って、同じようにペットボトルのお茶の飲み物で水分補給した。




「…今日、洸と会ってたんだよね。さっき電話で聞こえた。」




「えっ…。うん。クリスマスメニューでお店忙しかったから、ホールの仕事一緒にしてたよ。」



「ううん。その後も…一緒だったんでしょう。俺、知ってるよ。俺が、洸に頼んでたから。」



「…え?」



 目を丸くして驚いた。



「洸、言ってなかった? 受験勉強しなきゃいけなくて出かけられないから紬誘って出かけてくれって…。森本さんと付き合っているのも知ってたけど、どうせバイトも同じ時間だしって思ってさ。」



「…陸斗が言ってたの?」



「いや、全部じゃないけど、何してたかなんて知らないよ。俺に電話来ると思ってないから。別れようって言ったのは俺だし。もう、忘れて本気で勉強しようと思っていたけど、さすがにクリスマスは悔しいからバイトで時間を潰そうと思ったの。そしたら、紬から電話あったから……。」





「洸に嫌なことでもされたの?」




「ううん。私が悪いの。優柔不断で決めかねるというか…。洸さんのこと、好きだと思ったら本当は好きじゃなかった。自分がわからなくなってたみたいで、不意に洸さんが陸斗に見えてきて、思い出してたら、電話してた。おかしいよね。何か、変な考えしてたみたい。洸さんに悪いことしちゃったかな。」




「いいよいいよ。あいつ、すぐ新しい女の人作れるから、気にしないで。俺は、本当に紬が洸のこと好きになったのかなと思ってたから、身を引いてたんだよ。離れてみて、本当に洸がいいならそれでいいし、やっぱりって思ったら良いなって心のどこかで思ってた。傷つけたかもしれないけど、別れようって本気で言ってない。ある意味フラグかな。ごめん。輝久の時よりも手強い相手だと思ってたからさ。」



「え!? それって私試されたってこと?」





「言い方変えたらそうなるかなぁ。でも、良いじゃん。結果オーライで元通りになったわけだし、冬休みになってますます受験に焦りを見せてはいるけどね。ほら、髪乾かすからこっち来て!」




陸斗はドライヤーをコンセントに差して待ち構えた。


じりじりとそばによって、乾かしてもらった。



 シャンプーの香りが漂った。さらりとサラサラと髪を撫でられた。



顔に髪を近づけた。




「いい匂いだね。」




「シトラスミントだって書いてたよ。」



 乾かし終えて、額と額をくっつけた。



 紬の手をつかみ、自分の胸に当てさせた。




「ほら、凄いドキドキしてる。」



「本当だ。そしたら私と同じだ。」




 紬は陸斗の手をつかみ胸の谷間の心臓部分に当てさせた。




「同じくらいドキドキしてる。」



 目を見つめ合い、首元を愛撫する。




「また、紬が離れると思って、不安で仕方なかった。毎晩枕を涙で濡らしてたよ。別れるって自分から言ったのに俺って馬鹿だな…。」




 後頭部の下に手を回して、ギューと抱きしめた。



「一回離れないと分からないことってあるから、私はこの時間は大事だったよ。こうやって戻ってこれたから。先に気持ちが離れたのは私の方だから、ごめんなさい。」



 陸斗は首を横に振った。





「紬…大好きだよ。」




 お互いにぎゅっと抱きしめた。



 1分1秒を噛み締めて、一緒にいる時間を大事した。



離れていた時間を補うように指先1つ1つに集中して、手を重ね合わせた。



電気が走るように触るたびに心臓が激しく動く。




 肌と肌の触れ合って、愛を確かめ合うと、体の全てを陸斗に委ねた。




 このまま時が止まってしまればいいのにと幾度となく、願った。




磁石のようにN極とS極が重なり合った感覚だった。ぴったりとくっついて離れない。




陸斗の隣で夜は明けた。


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