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シリウスをさがして…  作者: もちっぱち
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第48話

輝久に気持ちが惹かれそうになったためのお詫びの印でお出かけすることになった紬。



今日は2人デートではなくて、洸と美嘉も一緒に参加するダブルデートになった。




紬にとっては、生まれて初めてのデートとしての遊園地。





 昔から両親の仕事上、日曜日や祝日はお店が忙しいこともあって、家族で遊園地に行くことはなかった。




 遊園地が近くにあっても行けないこともあるようだ。




 そんな中、本当は洸もバイトに行くはずだったが、無理をお願いしてお休みさせてもらった。



 日曜日はカフェにお客さんがたくさん来る稼ぎ時だった。



 紬も,本来ならば手伝うはずだったが、父に交渉して、デートなら仕方ないと承諾してくれた。




 地元のそれなりにアトラクションが多い遊園地に行こうと言うことになった。




 移動手段はバスで乗ればすぐに行けたが、待ち合わせ場所に集合してから一緒に行こうと言うことになり、一度仙台駅の中のステンドグラスまで行くことになった。



美香の住んでいる場所が南側のため、ずっと一人移動は,嫌だと言う要望だった。



 バスの定期券を,持参していたため、紬にとっては苦でない。


 陸斗は自転車移動で駅に行ける距離に住んでいる。


 そして、洸はバイクでの移動のため、融通は効いた。



 最初に待ち合わせに着いたのは陸斗だった。


 待ち合わせとなると、いつも通りイベントのお店を物色していたため、定位置にはいなかった。



今回は韓国の食べ物フェアをやっていて、キムチや変わったスイーツなど売っていた。



 次に着いたのは紬だった。


 

律儀にステンドグラスの前で待っていた。


 そこから陸斗を探すことに夢中になった。


 子供の頃に読んだ絵本にあったシマシマ柄の主人公を探すような気分で楽しかった。


 その陸斗の行動に慣れている紬は姿を見つけるとサッサと近寄っていく。



「何かいいの見つけた?」



「うわ!? なんだ、紬も、もう来てたの?待ち合わせ時間早くない?」




「そっちこそ。あ、これ美味しそう。」



「韓国発祥のスイーツだって。クロッフルらしいよ。クロワッサン生地をワッフルの形にしたお菓子だね。買っちゃう?」



 待ち合わせ時間の20分前には着いていた。


 美嘉は電車の都合上、ギリギリになるというラインをもらった。



 洸は新幹線改札近くにある喫茶店に30分前から到着してコーヒーを飲んでいたと連絡があった。



「は、早すぎだね。まー、遅刻するよりは良いか。」



陸斗はスマホを見て確認する。


 いつの間にか、手にはクロッフルが入った袋があった。


 4人分を購入していた。





「それ、いつ食べるの?」




「地下鉄待つときとか良いんじゃない?」




「そっか。」




「美味しそうだったから、どうしても食べたくて…。」




「別にいいんだけど…。」



 しばし沈黙が続く。陸斗の横にジッと立つ。


 空気を読んだ陸斗は左手を出して、紬の右手を掴んだ。




「もしかして、こういうこと?」



 手を繋ぎたかったのを素直に言えなかった。  

 

 

 紬は少し頬を赤らめて嬉しそうに小さく頷いた。



「そういうのは口に出しなよ。エスパー陸斗は読めますけどね…。というか、テレパシー?第6感が働くってことかな。」




「……。」




 ジャケットのポケットに手を入れて少し離れたところから2人をじーと見つめた。


(だから嫌なんだよ。3人のこの空間。目の前でイチャつくなよ。上から見てて良かったわ。)


 洸は、30分も前に来て喫茶店で時間を潰してた理由は、3人になることを避けたかったからだ。


 美嘉がいないとこの間に入るのは苦痛で仕方ない。


 紬と2人なら平気で,陸斗との2人でいるのも平気だが、交際している2人の間を割って入るほど落ちぶれてはいない。


 後ろを振り向くとぼんやりと立っている洸を見つけた。


「洸、遅いよ。うさぎかよ!?」



「は?意味わかんねぇし。うさぎは足早いだろうよ。」



「だから、うさぎとかめの話で、うさぎは足早いからってゴールが遅かっただろ?早く来たなら、ここにいればいいだろう?」


「あー…そういうことね。」



 改札口から手を振ってこちらに向かってくる美嘉が来た。


 ミニスカートでワッフルニットのモコモコの服を着ていた。


 いつもの制服姿からは想像できない。


 女子である紬から見てもとても可愛い格好だった。



「ごめんなさい。お待たせしましたー。」


「全然、待ってないよ。ほら、買い物し

てたし。」



 袋に入っているクロッフルを見せた。



「あ、それ、美味しいですよね。私、昨日食べましたよ。」




「美嘉ちゃん、その服可愛いね。」



「あ、ありがとう。結構、着て行く服悩んだんだよね。あ……。」




 腕を組んで立っていた洸が3人のそばに近づく。



「会うのは2回目だよね。改めて、宮島洸です。よろしく。」



お辞儀を軽くした。



「あ、はい。森本美嘉です。ラインのお返事ありがとうございます。今日は、よろしくお願いします。」



「んじゃ、行きますか。まずは、地下鉄ね、地下通路行くよー。」



 陸斗が先陣きって、進む。

 もちろん、横には紬が、

 美嘉の隣は洸が並んで進む。



「紬は地下鉄って乗ったことあるの?」

 


「うーん、覚えてない。乗ったことあると思うけど小さいときかな。久しぶりかかもしれない。いつも使うのはバスだから。」



「そっか。俺もあまり乗る機会ないかな。車とか自転車、新幹線、電車とかだから。バイクの方が便利だしね。でも、何か、学校の遠足みたいだよな。バナナはおやつに入りますかって…。」



「そんなの今時言わねえよ。昭和かよ。…聞いてなかったけど、美嘉ちゃんってどの辺に住んでるの?」



「長町です。東北本線でいつも仙台に来てて…地下鉄は、しょっちゅう使いますね。勾当台公園に行くときはよく使ってます。」



「え、そしたら、今日も地下鉄で待ち合わせの方が良かった?」



「あ…。JRの定期券は持ち歩いているんですけど、地下鉄は、いつも誰かが切符買ってくれるので、買い方わからないから、一緒に行かないと……。あと乗り方と行き方がわからない…。いつも行くんですが…。」



「あー…。そういうのうとい感じね。」



 洸は、美嘉が方向音痴で機械も苦手だということが理解できた。



「すいません…。1人で歩くのって滅多にないから。学校の通学路とか大丈夫なんですが、他は誰がかいないとだめで。」




(いつも美嘉ちゃんの周りに人が集まるのはそういう理由があったのか…。)



 美嘉は、ただ人気者ってわけではないことがわかった。



 地図が読めないから、教えてくれる人

がいないとダメで、やり方がわからないから教えてくれる人がいないとダメだということだ。




「良かったじゃん。洸は地図読めるし、いろんなところ知ってるもんな。教えてあげなよ。」



「まぁな。教えるのには慣れてるよ。任せな。」



「ありがとうございます。」



「なぁ、俺のバナナの話はどうなった?」



「そんなのどうでもいいでしょう。てか、その袋の入ってるのどうすんの?食べ物持ち込み不可でしょう、遊園地。」




「え、地下鉄のベンチで食べようと思って…。てか、食べよう?ね?クロッフル。みんなの分あるから。」



「半ば強制かよ。食べるけど…。ったく、陸斗は昔からお菓子に目がないから、食べたくなったらすぐ買うし。本当、変わらないな。」



「美味しければいいじゃんよ。甘いのを食べさせてきたのは、誰よ?」



「……俺です。」



「洸さんが陸斗先輩に餌付けしたんですか?」



「一緒にお店の手伝いをしてた時に、自分で作ったスイーツ試作品を食べさせすぎた。それが、原因だった。思い出した。俺だった…。」


 過去を遡って思い出す。

 

 洸が、小学生の頃、さとしが働くカフェでお手伝いするのが好きで、それと同時にスイーツ作りにもハマっていて、近くにいた4歳下の従弟でもある陸斗に味見させていた。


 洸の両親が出張でいなかったため、よくおじとおばであるさとしと紗栄が甥っ子の洸のお世話をしていた。


 甘いお菓子好きになったのは、それが原因だった。



「え、洸さん。今でもカフェで働いてますよね。昔からなんですね。将来はパティシエですか?」



「うーん、どちらかといえば、今は経済学を学んでいるから、カフェの経営とかかな。もちろん、いずれ資格もとるけどね。スイーツより食事作るの方が好きかな。大学卒業したら、調理師免許取ろうかなと…。」


「へぇー、そうなんですか。夢があって良いですね。」


「陸斗、洸さんと昔から仲良かったんだね。」



「どこが仲良く見える?犬猿の仲よ。いつも喧嘩してるから。永遠のライバルだね。」


 ポスターが並ぶ地下通路を後ろ振り向きながら、進む。


 地下鉄まで、先はまだ長かった。



「喧嘩するほど仲がいいっていうでしょう。」



「そうだといいんだけどね。」



「美嘉ちゃんは、きょうだいいないの?」



「3歳下の妹がいます。お互い関心は無いので,喧嘩さえもないというか。そういう関係もありますよ。昔はよく喧嘩したらしいですが、今はめっきりないです。」



「俺には、高校1年の妹いるけど、喧嘩はいつもしてるよ。何かにつけて生意気になってきてね。あ、2人と同い年だけど、見た目とか幼いから困ってて、2人みたいに大人っぽいならいいんだけどな。」



 洸は2人をみまわしていう。



「俺にも妹いるよ。まだ中学生だけど、これがまた、ませててね。これはこれで大変よ。俺の話めっちゃ聞きたがるから…。話してる内容がレベル高くてついていけないのよ。どこで覚えてくるんだか…。あ、漫画とかアニメって言ってたかな。」



「え?レベル高い?何の話ですか~。」



ニヤニヤしながら、美嘉は聞く。

はぐらかすように口笛を吹く。

あまり話したくないようだ。



「あ、ほら、切符買わないと。美嘉ちゃん、洸に教えてもらいな。」


「あ、はーい。」


 一気に切り替える美嘉。


 紬は買い慣れているせいか、1人で黙々と自動券売機にお金を入れていく。



「ちょっと、ちょっと。俺を差し置いて、何をしてるのよ。奢らせなさい!」


 取り消しボタンを何度もおしまくる陸斗。

 紬はせっかく入れたのを残念がる。



「こういうのは、まとめて切符買うの。ほら、このボタンだよ。大人2枚ってあるっしょ。わかった?」


ある程度は自分でできる紬は何となくご不満。自分でやりたかったようだ。



「ありがとう。」



 心にもないありがとうを言った。



「良い?美嘉ちゃん、まず、ここにお金を入れるでしょう。そして、金額のボタン、枚数とかはここを押す。ほら、切符出てきたよ。」



「なんと、まあ。便利ですね。意外と簡単。」


「いや、絶対買い方、知ってるでしょう。」


「えー知らなかったですよー。全部人任せだったから。教えていただきありがとうございます。」


「分かればよろしい。んじゃ、次乗り方ね。」


 先に通る前に、美嘉はささっと改札を通り抜ける。



「いや、わかってるじゃん。」



「これくらいは知ってますよ!!」



「美嘉ちゃん、わざと知らないふりは良くないよ? 俺は、そういうの嫌だなぁ。」


 そう言いながら、改札を抜ける。


 紬たちも続けて通り抜ける。



「それじゃぁ、次どこ行くか知ってる?」



「えっと…。東西線の終点駅だから、こっちですよね。」



「うん。合ってる。やっぱり、知らないふりしたでしょう。」



「そんなことないです!!地図は読めません。それは断言します。」



そう言いながら、指差した方向と違う方へ行こうとする。



「いやいや、こっちだから。もう、はちゃめちゃだね、君は。」



 洸はため息をつきつつ,美嘉の手を握って指差す方へ連れて行く。


後ろからその様子を見ていた紬と陸斗は微笑ましかった。



「あの2人、案外良さそうだね。」



「ああ。ただ、洸なぁ。あれ、苦手なんだよなぁ…。大丈夫かな。」



「?」


  

頭に疑問符を浮かべた紬。


 そのまま、洸たちが進む方へついていく。


 階段を降りて、ホームについた。


 ちょうどベンチには誰も座っていなかった。



「ほら、空いているから。ここで食べよう。クロッフル。」


 陸斗がベンチに誘導するが、洸と美嘉は立ったまま、陸斗からクロッフルを受け取った。



「いただきます。」


 揃ってパクッと口に頬張った。


「うまっ。」


「美味しい。」


「なにこれ、おいしすぎる。」


「へぇーこれいいね。」


 陸斗は食べてすぐ満足した。美嘉は昨日食べていたため、安心のおいしさを感じ、紬は食べたことない味で喜んだ。



 洸は、お店側視線で評価するように食べた。真似をして店に出したいくらいだった。



「甘いの食べると良いよな。」


「うん。」


 そうこうしているうちに列車が到着した。ドアが開くサイレンが鳴る。



「来たね。乗ろうか。」


 洸が声をかける。陸斗がみんなのゴミを回収して、ゴミ箱に捨てに行った。

 ちょっと小走りで、列車のドア出入り口付近で立つ。



 縦に伸びる手すりにそれぞれ女子がつかみ、両端に2人ずつ並んだ。


 サイレンが鳴り、発車する。


「地下鉄って地下だからだけど、窓はずっと真っ暗だよね。」


「そりゃあね。」



「電車よりスピード早く感じる。」



「確かに…。」



陸斗と紬は何気ない会話をしていた。

次々と各駅にとまると、お客さんの出たり入ったりで徐々に混み合ってきて、洸と美嘉たちの会話は聞こえなくなってきた。



「美嘉ちゃん、ほら、こっち来て。」


 近くにサラリーマンの人がいたためか、そばに寄らないように洸の内側に寄せた。


 セクハラ対策かと思われた。


「あ、ありがとう。」


 かなりのミニスカートであることは確かだった。



 目のやり場には困っていたが、リスクは未然に防がないとという洸の配慮だった。


 

 日曜日ということもあり、乗車率は高かった。


  どんどん狭くなる。



 壁ドンしたいわけじゃないのに自然な流れで壁ドンになってきた。



「ごめん。狭くて…近いよね。」



「…大丈夫です。逆にすいません。」


 洸と美嘉は出口ギリギリのところにいた。


 陸斗と紬も同じ感じだったが、いくぶん、こちらは余裕スペースがあった。

 

 お互いに手を繋いでいたこともあり、近づいても平気だということもあった。



「もうすぐ着くから。」



「うん。」



 呼吸を我慢してたかのように4人はどうにか、列車から脱出できた。



もちろん、終点ということもあり、乗客は全員降りていく。



混み合うエスカレーターに乗り、それぞれにのぼっていく。


 混んでいたこともあり、4人はバラバラになってしまった。



 陸斗たちが先に改札口に着いた。



いつの間にか、自然の流れで洸と美嘉も手を繋いで歩いていた。



「悪い、待たせた。結構エスカレーターのぼるとき混んでて…。」



「……。」



 紬と陸斗はじーと2人を見る。



「え、何かついてる?」


「何もないよ。」


「大丈夫、大丈夫。ほら、行くよ。チケット買わないと。」



 あまりにも自然に手を繋いでいるなぁと陸斗は見ていた。



 外に出るエスカレーターに向かう。

途中にあったエレベーターには動物の絵が描かれていた。時計台にはライオンのイラストがある。



「可愛いね。ライオン描いてる。」


「そうだね。私、この駅初めて来たかも。」


「私も。」


女子たちは動物のイラストに盛り上がっていた。


 後ろの方で、保護者目線で男子2人は見ている。



「子どもみたいだな。」


「可愛いの好きなのは悪くない。」




誰かが交際する際にダブルデートはあまりおすすめしないとかいう人がいたが、この4人はどうなるのか。



 紬たちは、この時は、まだ、何も知る由もなかった。


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